カナダでモンサント(バイエル)に集団訴訟

 世界でモンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分名グリホサート)に対する動きはまったく止まるところがない。米国に続いてカナダでもラウンドアップに対する集団訴訟が始まる。ケベック州を除くカナダ全土で、ラウンドアップに曝されて非ホジキンリンパ腫になった人はこの集団訴訟に参加できる。
 カナダでモンサント(バイエル)に対する訴訟は2019年12月に開始されたけれども、12月11日、オンタリオ州上級司法裁判所がバイエルに対する集団訴訟を認定した(1)。なぜ集団訴訟かというと個々の裁判では追い切れないほどの被害者が出ているということだ。
 
 非ホジキンリンパ腫は血液のがん。現在、ラウンドアップ裁判で問われているのはこのケースだけになっているが、ラウンドアップの関与が考えられる疾患は非ホジキンリンパ腫に限らない。
 たとえば、米国国立衛生研究所はグリホサートを散布した男性のDNA損傷に関する論文を掲載している。Y染色体モザイク喪失が引き起こされ、それはリンパ腫の他、骨髄腫や白血病などの血液のがんやアルツハイマー病を引き起こす可能性がある(2)。
 また近年、小麦に対するアレルギー、セリアック病が増加しており、小麦に含まれるグルテンが問題だと騒がれていたが、実は小麦に噴霧されたグリホサートがその原因となっている可能性が強く示唆されている(3)。
 
 ラウンドアップ(グリホサート)による健康被害はあまりに広範だが、中でももっとも警戒すべきなのが世代を超えたエピジェネティックな影響や遺伝子のダメージだろう。つまり、現在症状がでていなくても、子や孫に症状が出る可能性があるということなのだ。本人には自覚症状がない。でも、ラウンドアップにまったく触れていない子や孫にその症状が出てしまうというのだから恐ろしい。この論文もまた、米国政府機関の国立衛生研究所のサイトに掲載されている(4)。
 そればかりか、ラウンドアップは男性や女性の生殖能力に大きく影響を与えることも複数の研究が指摘している。そもそも子や孫に症状が現れるという前に、生まれなくなってしまう可能性が高まるのだ。
 だからこそ、ラウンドアップ(グリホサート)は禁止されなければならない。
 
 海外では裁判も広がり、ラウンドアップ(グリホサート)の有害性についての情報も止まることなく流れているが、残念ながら日本では現在、メディアは一切、報道しなくなってしまった。ラウンドアップ裁判は3回連続でモンサント(バイエル)側が敗訴した後、バイエルが巻き返して、9回連続バイエル側が勝訴した。日本の報道はここで終わっている。だから農薬村やその周辺は裁判で勝ち続けていると言っているが、実際にはその後5回連続でバイエルは敗訴し続けている。カナダやオーストラリアでも集団訴訟が始まり、バイエルの株価は急落(5)。それにも関わらず、ラウンドアップ・バイエルは勝ち続けていると言うのなら、かつて日本が戦争に負けたのに、「日本は勝っている」と言い続けた「勝ち組」とどこが違うのか。
 
 このままでは日本だけ子どもが生まれにくくなる事態になりかねない。米国でもオーストラリアでも多くの自治体がその使用を禁止している。にも関わらず、日本では報道すらせず、その使用は増えるばかり。
 
 マスメディアが世界のラウンドアップ裁判のことを報じるように強く望ますにはいられない。日本にも関連する話であり、裁判という事実を報道することはメディアの義務だと思う。そして、ラウンドアップの安全性が確認されていると公言している人は、その発言が将来の日本列島に生きる人たちにどんな被害を及ぼすことになるのか、その責任を考えるべきだろう。

(1) Ontario Superior Court of Justice Certifies Class Action Against Monsanto and Bayer Regarding Roundup Products
https://finance.yahoo.com/news/ontario-superior-court-justice-certifies-012500764.html

(2) Marker of DNA damage seen in men applying Roundup and other glyphosate-based herbicides
https://gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20350-marker-of-dna-damage-seen-in-men-applying-roundup-and-other-glyphosate-based-herbicides/

(3) Wheat intolerance might be due to glyphosate
https://gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20349

この他にもグリホサートの曝露がたとえ低い値でも長く継続することで、非アルコール性脂肪肝疾患を増加させるという指摘も。
Low-Dose Chronic Glyphosate Exposure Increases Diet-Induced Non-Alcoholic Fatty Liver Disease

Low-Dose Chronic Glyphosate Exposure Increases Diet-Induced Non-Alcoholic Fatty Liver Disease

(4) Epigenome-wide association study for glyphosate induced transgenerational sperm DNA methylation and histone retention epigenetic biomarkers for disease
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33296237/

(5) Bayer just in the red – HSBC sees further share price risks
https://www.marketscreener.com/quote/stock/BAYER-AG-436063/news/Bayer-just-in-the-red-HSBC-sees-further-share-price-risks-45588306/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA