再び種苗法改正へ(2026年通常国会)

 今、日本は農民消滅、農村消滅の危機にある。でも政府はまったくそれでも問題ないと思っているように思えてならない。政府は1998年から農民からタネの権利を少しずつ奪ってきた。そして2020年、種苗法改正で、登録品種の自家採種を原則禁止にした。でも、そこで止まらないようだ。種苗法の再改正法案を来年の通常国会に上げるという記事を読売新聞が報道した¹。農産物輸出戦略を改訂し、その柱として種苗法改正が位置づけられている。政府のサイトでは確認できないが、読売のスクープだろうか(30日の関係閣僚会議でこの方針が決定したことを日本農業新聞が今日付の記事で報道している)。
 読売新聞の記事の要点は何かというと、育成者権(種苗開発者が種苗を独占できる権利)の期間を現在の25年から倍の50年にする。そして、大規模輸出のための日本の農産物サプライチェーンを作るというものだ。 “再び種苗法改正へ(2026年通常国会)” の続きを読む

米騒動とバイオテクノロジー

 危機とはおそろしい。人びとの思考能力を奪い、平常時ではありえないことが堂々と、あからさまに実行されてしまうから。
 米騒動を機に、お米とは縁もなかった巨大企業がお米を握ろうとしている。そして地域のお米屋さんは排除。急激な米価高騰で「巨大企業に任せた方が安く、誰もが買えるからいいんじゃないか」と警戒感が薄れてしまう。でも、小さな流通業が廃れて、大企業しか扱えなくなり、競合他社がなくなれば、もはや決定権は巨大企業が握る。私たちの食の決定権は名ばかりとなって、価格や何を売るか、決めるのは巨大企業の手に握られる。
 
 流通と同時に生産の現場はさらに危うい。実はモンサントは「とねのめぐみ」という品種をもって、日本の稲に参入を試みたことがある。「とねのめぐみ」は遺伝子組み換え品種ではない。「コシヒカリ」と「どんとこい」を交配させ、従来の品種改良で育成した品種。でも、彼らは日本の稲から撤退した。彼らを撤退させたのは水田だった。 “米騒動とバイオテクノロジー” の続きを読む

ラウンドアップ・グリホサートとバイエルの行方

モンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分グリホサート)を抱えるバイエルはまさに断末魔の様相を示している。でも、日本では真逆、ラウンドアップ安定の大セール中(ニッポンすごい?!)。
 ラウンドアップに対する訴訟は増え続け、米国では訴訟件数は17万を越している。そのうち10万件超は和解に至っているが、その和解金は約110億ドル(約1.6兆円)に達しており、まだ和解していない訴訟も6万7000件、残っており、まだ増えつつある¹。
 米国内だけではない。カナダでも集団訴訟が進みつつある²。またEUでは、対象はグリホサートの再承認を認めた欧州委員会を市民団体が欧州裁判所に訴えた³。 “ラウンドアップ・グリホサートとバイエルの行方” の続きを読む

自然を遺伝子操作? 環境保護を口実としたバイオテクノロジー推進

 生態系の危機の進行が加速している。100万種を超える生物が絶滅に向かっているとも指摘され、すでに50年間に73%の野生生物は減少している。この危機を遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーで解決できると言う科学者がいたら、どう思うだろうか? 特に焦点となっている技術は合成生物学と遺伝子ドライブだ。遺伝子ドライブは有性生殖の仕組みを乗っ取って、特定の種を絶滅させることができる技術。Mad Scienceという称号がもっとも似つかわしいと思う。人間の知り得る遺伝のメカニズムは今なお限られており、未熟な技術で自然を操作すれば、収拾不能になるのは目に見えている。でも、この技術を国連が採用して自然保護と称して自然の遺伝子操作を始めたらどうだろう?
 
 実はそのプロセスは進みつつある。というのも自然保護の領域で大きな力を持つ団体、国際自然保護連合(IUCN)の中にバイオテクノロジー推進者が入り込んで、10年以上前から、合成生物学や遺伝子ドライブの技術を自然保護の領域で使うという方針を確立しようとしていることがわかっているのだ。 “自然を遺伝子操作? 環境保護を口実としたバイオテクノロジー推進” の続きを読む

米騒動からモンサント型農業に日本は移行するのか?

 今、本当に食・農業が根本から変えられてしまう可能性がある。だから議論が必要。どんな食・農業・社会を望むのか、社会のあらゆるところから声を出していかないと、気が付いた時はもう変える余地がなくなってしまうかもしれないから。
 結論を先に言っておくと、巨大企業にさらにコントロールされた社会なのか、それとも市民が決定権をなお保持できる社会なのか、私たちはその分岐点にいると思う。
 とても対象的な2つのテレビ番組があった。一つはNHK EテレのETV特集「田んぼ x 未来 あきらめないコメ農家たち」と、もう一つはTBSの報道1930「生産は足りているのか コメ価格下がらない本当の理由は」。 “米騒動からモンサント型農業に日本は移行するのか?” の続きを読む