日本だけ「ゲノム編集」生物の基準が甘い?

 なぜ、「ゲノム編集」で日本は突出したのか? 技術が高いから? いや、単に政府の基準が甘いだけなのでは?
 
 EUから2020年に離脱してバイオテクノロジー推進に舵を切った英国は5年も経っても、最初の「ゲノム編集」作物を出せていない。その理由は「ゲノム編集」時に挿入した外来生物由来の遺伝子の除去が困難であるため、開発が座礁状態。
 米国でも「ゲノム編集」牛を市場に出す寸前にFDAが全ゲノム解析を行ったところ、開発企業は完全に除去できていると主張していた抗生物質耐性遺伝子が発見され、その牛の市場化は断念された。抗生物質耐性遺伝子は遺伝子操作が成功しているかどうかの判定のために遺伝子操作の際に挿入される。
 「ゲノム編集」するために、バクテリア由来のRNAや抗生物質耐性遺伝子などが挿入されるが、その後、戻し交配などによって、それらは取り除くことで、外来の遺伝子が入っていない状態を作り、外来の遺伝子が入っていないから遺伝子組み換えではないとして規制を免れることが、日本や米国などでは許される。
 しかし、挿入された遺伝子はそう簡単に消えないと科学者は言う。特にキーとなる機能を持つ遺伝子をターゲットにした場合、除去することは特に難しい¹。だから全ゲノム解析を行えば、消えているはずと思っていた遺伝子が発見される可能性がある。ゲノムとはとても複雑なので、完全な解析は難しく、さまざまな解析方法が考案されている。簡易な方法では検出されなくても、より精密な方法を使えば検出される可能性がある。
 
 日本のリージョナルフィッシュ社は挿入したRNAは消えるから、問題ないと言う。
 しかし、たとえば、DNAから作られるmRNAは一時的なもので、すぐに消えるものだと信じられてきた。確かにmRNAは脆く、すぐに分解されるが、その断片が残り、その断片が実は遺伝子発現の上で大きな作用を果たす可能性も指摘されている²。
 とすると、リージョナルフィッシュ社が魚に挿入したRNAも、その断片が残っている可能性は否定できないのではないか? 精密な全ゲノム解析、オミックス解析などを行えば、その断片が検出される可能性はありうるだろう。遺伝子の発現を左右しかねない断片が検出されるのであれば、それは従来の遺伝子組み換え生物として規制すべきだ。だが、日本では開示される情報はわずかで、解析情報も示されない。
 
 他国がいくらやってもなかなか成功せず、日本だけ、すでに何品種・何系統もできて市場流通してしまっているというのは、使われている技術が海外発の技術であることを考えれば、日本だけ群を抜いて技術が優れているからとは考えにくく、単に日本の規制が甘すぎるからではないか、と疑問を持たざるをえない。
 
 ちなみに、英国で暗礁に乗り上げているのはアクリルアミドを低くするように「ゲノム編集」した小麦。アスパラギンは高温にすると発がん性があるとされるアクリルアミドを生成する。そのアスパラギンを抑制するように「ゲノム編集」したもの。でもアスパラギンは大事なアミノ酸。小麦が発芽する時にも必要で、これを押さえてしまうことで、小麦の発芽率が落ちてしまう。
 
 また、最近の小麦はアスパラギン含有量が高くなっているが、その原因は土壌の中に硫黄が欠乏していることが原因。なぜ、硫黄分が低くなるかというと、化学肥料に依存した収奪型農業のやり過ぎがその大きな原因で土壌の状態が悪化しているから。問題の根本を正さずに、生まれた問題を解決すると称して、また新たな問題が作られる。そして、それに多くの税金がつぎ込まれる。
 
(1) Gene-edited low acrylamide wheat hits roadblock
https://gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20543

(2) 使い終わったmRNAは消えて終わりじゃない!:mRNAのその後を追跡

脳の信号で腸内細菌叢がわずか2時間で劇的に変化していたと判明

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