根本的な政策整備が不可欠(種子法・種苗法)

 どうにも現実の表面的な動きにとらわれてもっと大きな波に呑まれてしまうことが多い。僕が主なフィールドとしてきたのは日本の国外の動き。2010年頃から世界で「モンサント法案」と言われる動きがラテンアメリカ、アフリカ、アジアなど世界各地で本格化していて、その動向を追っていたのだけど、2017年日本でも種子法廃止が閣議決定されてしまった。国内の動きは誰かがやってくれるだろうと思っていたけど、結局、追わざるをえなくなった。しかし、問題を詰めていくと、この動きをつかむためには1990年代あたりからの動きを見ないとその本質が見えないことがわかってきた。
各国新品種届け出推移
 2001年の統計では日本の新品種出願数は世界第2位。ところがそれは年々落ちていき、2009年には中国に、2015年には韓国に抜かれている。中国は別格としても他国は毎年、新品種開発する数は順調に増えているのに、日本だけ逆に急速に落ちている。この20年間で半分くらいに落ちてしまった。 “根本的な政策整備が不可欠(種子法・種苗法)” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」パブコメ締切迫る

 「みどりの食料システム戦略」を進めるために今国会で成立した「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」に関わる施行令、つまり、法律を受けて、農水省がこの政策を実施する省令に関するパブコメの締め切りが迫ってきた(5月31日)(1)。 “「みどりの食料システム戦略」パブコメ締切迫る” の続きを読む

ローカルフード法・条例に向けた動き、5月9日開始!

 この間、世界で大きな食や農のあり方に変化が生まれてきていることをみてきました。戦後、世界に拡大した化学肥料や農薬と種子の3点セットを大きな企業が独占する工業型農業が大きな問題を引き起こし、土壌を破壊し、気候変動を引き起こし、生物多様性や人びとの健康も破壊してきたことに人びとが気がつき始めたことが大きいと思います。そして、生態系を守る農業、有機農業・アグロエコロジーに転換させることで、これらの危機から回復が可能になりますが、めざましい違いが感じられることが、その転換の拡大の後押しとなっています。世界各地から希望に満ちた動きが広がっています。
 
 問題は連鎖します。化学肥料を使うことで土壌の中の微生物との共生がダメージを受け、農薬が不可欠になります。そうした中で作られた種子はやはり化学肥料や農薬の使用なしにはなかなかうまく育ちません。この連鎖を断ち切るために世界が求めだしたのが何かというと、そうしたものを可能な限り、使わずに作られた地域に合った多様なタネです。
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農薬規制の抜け穴:種子コーティング

 農薬使用は米国でも規制される流れになっているが、まったく規制されていない抜け穴がある。それがタネへの農薬コーティング。米国で生産されるトウモロコシのほとんど、大豆の大部分の種子がネオニコチノイド系農薬などの農薬でコーティングされている。タネにコーティングされたネオニコチノイド系農薬は作物が生長するにつれて植物の細胞に埋め込まれる。それを食べた虫は死ぬ。その毒性は出荷される農作物でも維持され、健康にも影響を与えることが懸念される。
 虫だけではない。コーティングされた物質の大部分は土壌に溶け出し、土壌微生物や鳥などの野生動物にも影響を与えていることが知られるようになってきている。ネオニコチノイド系農薬の規制は強まる傾向だが、この種子コーティングは現在、米国では環境保護局(EPA)では把握すらしておらず、規制法も存在していない。
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みどりの食料システム戦略成立:議論は尽くせたか?

 「みどりの食料システム戦略」を支える「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案」、21日に参議院農水委員会で可決、そして22日本会議で可決。附帯決議も含めてすべて全会一致。有機農業推進が政策となったことは重要だが、果たして実効ある政策となっているか、それに向けた審議はされたかというと大いに疑問を呈さざるをえない。  “みどりの食料システム戦略成立:議論は尽くせたか?” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」の根本問題:タネと有機認証

 2050年までに有機農業を現在の50倍にする目標を立てた「みどりの食料システム戦略」。有機農業の拡大自身は必要な方向であることは間違いないのだけど、肝心の政策が伴っていない。
 なぜ、今、世界で20年間に有機農家の数が15倍以上に拡大しているのか? それを支えた政策は何か、なぜ、日本は有機農業のパイオニアの国の一つだったのに、今は100位前後に沈んだのか、何が問題なのか、それをどう変えるか、それが問われると思うのだけど、その分析がゼロ。 “「みどりの食料システム戦略」の根本問題:タネと有機認証” の続きを読む