フードテック推進ビジョンを批判する:「ゲノム編集」・細胞培養食に未来はない

 完全に見逃していた。「ゲノム編集」や細胞培養肉などのフードテックを推進する政策に関するパブリックコメント。締切がなんと1月9日(今度の月曜日)。一言で冗談じゃない、という内容なのだけど、期間の限られた時間の中でなんとか一人でも多くの人がコメントを寄せていただきたい。問題点について書き出すと切りが無いのだが、まずは基本的な考え方についてまとめてみたい。
 
 「フードテック」とはとても曖昧な表現だが、このビジョンでは
1. 植物由来の代替タンパク
2. 昆虫食・昆虫飼料
3. 「ゲノム編集」の適用
4. 細胞性食品(細胞培養肉など)
5. 食品産業の自動化・省力化
6. 情報技術の活用
に分類されている。
 
 根本的な認識において大きな問題がある。世界の食料需給が2050年には2010年の1.7倍になるとして、タンパク資源の需要の増大に対応する必要があるというが、実際には世界には人口増大に十分な農業生産力がある。問題なのはそれが適性に分配されていないこと、そして膨大にロスが生じていることであり、その大きな理由は地域の食の循環を壊してしまったグローバルな食のシステムにある。これを直さない限り、生産を増やすことはさらなる環境負荷を上げ、また現在の問題すら解消することはおぼつかない。むしろ矛盾は拡大していくだろう
 
 また、現在、工業型農業によって、地球の限界を超えてしまい、気候危機、生物絶滅危機、健康危機などという多重危機の同時進行を招いている。生態系を壊す産業モデルのエンジンをふかせば、この危機はいっそう深刻になる。このビジョンでもプラネタリー・バウンダリーに言及しつつ、持続可能な食料生産への移行の必要を説く。しかし、この「フードテック」なるものはこの生態系の維持、修復に資する生産技術なのか、現在の破壊的な工業型農業・食のモデルとどう異なるのか、十分な検証もされていない。
 
 たとえば「ゲノム編集」は既存の生命の遺伝子を破壊する技術だ。特定の遺伝子を破壊することで遺伝子相互が有機的に持っているバランスを壊し、生命間のバランスも壊す危険性が指摘されている。そもそも壊れた生態系を修復したり、守ることを目的にする技術ではなく、逆にそれをさらに危険に曝す技術と言わざるを得ない。
 
 また細胞培養による細胞性食品は生態系の生命間の相互作用を打ち切り、特定の動物の細胞の培養に特化する生産に他ならず、そもそも生態系を無視した食の生産方法と言わざるを得ない。細胞培養を行うバイオリアクターだけに焦点を絞らせることで、その背後にある生態系への破壊的なインパクトを隠して、気候危機対策になる、などと強弁しているが、すべてのプロセス全体で比較しなければ本当の気候へのインパクトもより少ないとは言い切れない。自然を生かした畜産と比較すればこの培養肉の生態系に与える負荷はずっと大きく、その生産が拡大すれば危機はさらに深まるばかりだろう。
 果たして農水省の言う「みどりの食料システム戦略」とはこんなものの推進であったのだろうか?
 
 そもそも現状認識を前提にして、それを解決するための施策とは、相互に整合性のあるものでなければならないのにそれが見当たらない。そしてこのフードテックを推進するのかというと、外国も動いているからそのバスに遅れるな、という焦りだけでしかない。しかしそのバスはどこに向かっているのか? 日本の食の未来はこれではどうなるか?
 
 すでに遺伝子組み換え農業で犯してしまった過ちからもこのビジョンに勝算がないのは明らかだろう。遺伝子組み換え技術は農薬を減らして、雑草や害虫による被害を減らし、生産性を上げると約束したが、実際に生まれたのはスーパー雑草やスーパー害虫で、農薬は一向に減らず、逆に激増し、さらに生産性も停滞した。実現したのは遺伝子組み換え企業による独占と種子価格の高騰であった。莫大な富が遺伝子組み換え企業の元に吸収された。
 これまで遺伝子操作によっていかなる人類に役立つ品種が生まれたと言えるのか、問い返せば、遺伝子操作技術が企業のためにはなっても人びとの食に役立つものを開発できる技術ではないことはわかるだろう。
 遺伝子組み換えの新バージョンである「ゲノム編集」でも同様の結論にならざるをえない。残念ながら日本政府はすでにそれに巨額の予算を投入してしまっている。
 
 今、日本の食料生産は危機を迎えている。このような危機に、さらにごくわずかなバイオテクノロジー企業などのフードテック企業を儲けさせるために私たちの食に投ずべき予算を政府は予算を投入してしまうということは許されることではない。すでに日本やアジアには有効な有機農業技術が開発されている。これらは実証もされているし、即戦力である。こうした確実な技術に投資をすることでこそ、現在の食の危機、そして未来にわたる食の危機は避けることができる。

 人びとの中で高まる気候危機やアニマルウェルフェア、ビーガン食などへの関心を巧妙に企業が儲ける食のシステムの導入に活用しようというのがこのフードテック推進ビジョンといわざるをえない。
 
 国会でもまともな論戦も検証も行わないのに、なぜこのようなフードテック推進に舵を切れるのか、まったく民主牛議の根本を無視した動きと言わざるを得ない。

 一人でも多くの方がこの「フードテック推進ビジョン」に意見を出してほしい。一言でもいいと思う。

パブリックコメント
「フードテック推進ビジョン(案)」及び「ロードマップ(案)」についての意見・情報の募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003602&Mode=0

細胞培養肉の問題については天笠啓祐さんを講師に迎えたOKシードプロジェクトの学習会「細胞農業ってなに?―その実態と問題点を考える」報告をご参照ください。
https://okseed.jp/news/entry-155.html

“フードテック推進ビジョンを批判する:「ゲノム編集」・細胞培養食に未来はない” への30件の返信

  1. まずは開発という名の自然破壊をやめ、新規就農者の支援などが先。

    食べられればなんでもいいわけでは無い。頭で考えた安全ではなく、自然な物を食べたい。

    無意味なフードテック推進に反対します。

  2. フードテックを推進する政策に
    「反対」します

  3. 昆虫食も ゲノム編集食も 遺伝子組み換え食品も 食べません。古来から在る安全な食品しか食べません。これからも、これまでも!特に子どもたちには 安心安全な食品を お腹いっぱい食べさせたい。そう考えていかなければならないと それが今私達が 一番に考える課題かと思います。

  4. フードテック推進政策、反対いたします。

  5. 職業訓練でドイツは有機農業に力を入れている、と聞きました。日本でも一部で試みられていますが、有機農業の方向にも力を入れて行くべきと
    思います。

  6. 中学生がコオロギの粉をまぶしたコロッケを食べて、「おいしい」と言うニュースを流している裏で、牛乳が余って酪農家が飼育している牛を、5万の補助金出すからサッ処分しろと言う政府
    米自給率ゼロを目指す政府
    1000円でも売れない子牛、なぜ政府は日本の食糧を守らない!

  7. 研究した人たちはそれを食べたいと思うのでしょうか?
    家族や大切な人に食べさせたいと思いますか?
    私は嫌です。
    反対です。

  8. ゲノム編集絶対的いりません。そこではなく、有機野菜を使っている農家さんや、そのノウハウを伝えることなどにお金を使って欲しいです。
    誰もが安心安全に食べられるものを増やして、自給率をあげていくべきです。
    オーガニックがあたりまえになりますように。

  9. フードテック推進政策に反対します。

  10. フードテック推進政策、反対いたします。

  11. 絶対許せません!反対します!
    安全性のわからないものは要りません

  12. 全く望みません。
    昆虫食も ゲノム編集食も 
    遺伝子組み換え食品も
    食べたくはありません。反対です!
    古来から在る日本人にあった
    安全な食品しか食べたくはないです。

    子どもたちにはオーガニックの給食化や
    家庭でも 安心安全な食品を。
    そのためには、大人も食品や添加物についてもっと踏み込んだ知識や情報を。
    隠された社会ではなく、
    開けた社会、テレビや公の場でのセミナーなど、情報開示が望ましい。

  13. フードテック推進ビジョンに反対します。

  14. フードテック推進ビジョンに断固反対です。
    どうか国の宝でもある子供達に食の安全を。
    これ以上苦しむ人が少なくなるように正しい情報が届くようにしていただきたいですし、ゲノム編集作物を栽培するにあたり自然環境を、微生物や動物など生態系をこれ以上壊し悪化しないようにしていただきたいです。

  15. フードテック推進政策、反対です。
    身体への悪影響が懸念される為、世界では中止になったものを日本でだけ推進するのは実験のためですか?
    日本を含む日本以外の国の一部の利権者の為の政策はこれ以上やめてください。

  16. 細胞培養食、コオロギなど反対です。
    日本の自給率を上げる活動をしてください。
    コオロギは雑食で寄生虫がいると言われてます。
    イナゴとは違う。ゲノム編集も同じ、安全性不明のものを推進しないでください。

  17. フードテック推進ビジョンに反対します!!
    未来あるこども達にどうか安全な食品を。
    こども達に少しでもリスクがあるものは、推進しないでください。

  18. 不自然な事に力を入れる前に日本の農家を守って欲しい
    フードテック推進政策に反対します

  19. フードテックビジョン推進に反対します。
    自然豊かな日本で食料が不足するなんて国の政策がおかしいせいです。安い資材や食材を輸入し、大量の食品ロスを出す悪循環を断ち切ってほしい。世界の貧困のためにも。フードテックはバイオテクノロジー企業のバックアップにしかならない。その予算(税金)を日本の有機農業に使ってほしい。このままいけば人間もバイオテクノロジーで生産することになるだろう。虚しい。

  20. 大反対。きちんと農業を推進すれば、ゲノムも昆虫食も必要ない。私達は普通の米や野菜を食べたいんだ。

  21. ゲノム編集や、培養食物と言った安全ではない食べ物を未来ある子ども達に食べさせたくないです。
    農家を継ぐことを日本の若者が躊躇しない、国からの支援を望みます。

  22. ゲノム編集された食べ物
    培養肉
    昆虫食
    すべて必要無し
    自然を破壊し
    人間を破壊する
    食の暴走は許せない

  23. フードテックのすべてに猛烈に反対!
    自然を壊して人間の身体も壊す考え方
    ゲノム編集された食べ物など
    まったく要らない!
    自然を生かした食と生命の循環が成されなければ 日本の農業、畜産、水産が壊滅する
    安心安全なお米、野菜、肉、魚で無ければ‼️

  24. フードテック推進ビジョンに反対します。
    ただでさえ不自然なものを食し病気やアレルギーが増えてるこの国で不自然なものをもっと増やして食べることはこの国を滅ぼすことになると思います。
    子供たちの将来を考えるなら自然なものをもっと食べられるようにするためにどうするか考えるべきでは?この国の未来のためのお金の使い方間違えないでください。

  25. フードテック推進ビジョンに反対します。
    日本には自然の恵みがたくさんあるはず、不自然な食品は不要です。おかしな開発をするよりも、今ある問題点を解決できるよう目を向けていただけませんか?大量生産する前にフードロスを減らすべきだし、頑張っている農家さんを支援する仕組みが必要です。

  26. 大学生という若者の立場から、自然の摂理に反するフードテック推進ビジョンに反対します。

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