失敗が宿命付けられたCRISPR−CAS9による「ゲノム編集」生物

 新しい技術は必ず世界をいい方向に変えるという考えを科学技術信仰と呼ぶとすると、いつの間にか、無意識のうちに自分も含めた多くの人間がそれに染まっているのかもしれない。遺伝子組み換え作物栽培が急速に広まったことはその傾向を補強しているだろう。でも実際には遺伝子組み換え作物は災難と呼ぶより他ない品種しか作れなかった。「ゲノム編集」もそれに輪をかけたものになる可能性が高い。そして細胞培養肉も。
 この技術はちょうど10年前に論文が発表された。「正確に狙った遺伝子だけを破壊できる」技術だと宣伝されて、特許を巡って巨大なお金が飛び交うホットな技術となった。そして2020年にはノーベル化学賞まで受賞した。
 
 しかし、その大騒ぎに反して、根本的な欠陥が指摘され、CRISPR-Cas9を使った「ゲノム編集」食品の流通が行われているのは日本のわずかな3品種だけだ(流通といっても一般のスーパーなどでの流通ではなく、オンライン販売やふるさと納税の返礼品などに限られる)。
 
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「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました

 明日8月9日締め切りの「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント、何も書かないのは不本意なので、書いてみました。殴り書き状態で、全然模範的なコメントからはほど遠いのですが、あえてさらします。 “「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました” の続きを読む

みどりの食料システム戦略に関するパブリックコメント

「みどりの食料システム戦略」に関するパブコメが相次いで出ている。1つは締め切りが8月9日。
環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)についての意見・情報の募集について
 
 さらに8月25日が締め切りのパブコメも。
環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律第39条第4項の規定に基づく基盤確立事業実施計画の認定に係る審査基準及び標準処理期間案についての意見・情報の募集について “みどりの食料システム戦略に関するパブリックコメント” の続きを読む

「ゲノム編集」無規制の世界化が目指すゴールとは?

 「ゲノム編集」食品を無規制に流通させていい、という方針は米国が作り出し、日本が追従したものだが、肝心の米国がずっこけてしまったので、日本の突出振りが目立つ結果となってしまっていたが、ここに来て、世界で急に「ゲノム編集」食品の規制突破の動きが本格化している。安全性が確かめられたからとかではなく、突出している国の好きにさせてはならないとばかりに遅れちゃまずい、という馬鹿な競争がその原因だ。 “「ゲノム編集」無規制の世界化が目指すゴールとは?” の続きを読む

キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)

 キーストーンという言葉がある。文脈によって印象が変わってしまうけど、ここでは生態系を支える要石という意味で考えてほしい。たとえばよく知られるのは海におけるサンゴ。サンゴは海洋生物の4分の1を直接支え、間接的に支えるものを入れれば4割を支えるという。そのサンゴは海の中の0.1%にしか存在しない。サンゴが失われれば多くの海の生物が死滅する。サンゴは海の生物を支えるキーストーンだ。
 遺伝子の中でもキーストーンと呼ぶべきものがあることが研究によって判明した(1)。その遺伝子がなくなると、周辺の生物の絶滅という事態を生んでしまうというのだ。つまり、その遺伝子は周辺の生態にとってキーストーンになっていることになる。 “キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)” の続きを読む

英国政府が「ゲノム編集」生物緩和法案提出も市場は冷ややか

 英国政府が5月25日に「ゲノム編集」生物を規制せずに流通可能とする法案を出し、来年以降、英国のスーパーマーケットで変色しないマッシュルームやビタミンDを強化したトマトなどの「ゲノム編集」食品が売られるようになると一斉にマスコミが報道しだしている(1)。しかし、この決定が英国市民の圧倒的多数の声を無視して出されていること、そして、何より英国のスーパーがまったく積極的でないことはしっかりと見ておくべきだろう。結局、これでは「ゲノム編集」産業は簡単には進まないことが明らかだ。 “英国政府が「ゲノム編集」生物緩和法案提出も市場は冷ややか” の続きを読む

世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策

 憂慮すべき動きが連続する。EUが来年に向けて「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認める方向に動き出したが、カナダ政府は先週、米国同様、2ヶ月のパブリックコメントの後に、多くの市民の反対を無視して「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認めた(1)。そして、EUから離脱した英国は新法案で「ゲノム編集」などのバイオテクノロジー技術の推進を定めようとしている(2)。
 
 なぜ憂慮すべきことかというと、この動きがまったく科学的な精密さを欠いているからだ。遺伝の機構はようやく解明の端緒についたばかりのところであり、人類は遺伝子の機能も十分にはつかめていない。その段階で遺伝子破壊を進めてしまえばどんな影響が生態系に現れるのか、まったく不明の状況にある。研究者も警鐘を鳴らしている(3)。 “世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策” の続きを読む