12月5日、厚労省や農水省はリージョナルフィッシュ株式会社が開発した2系統のゲノム編集マダイと1系統のゲノム編集トラフグの届け出の受理を発表した。これは昨年すでに届け出が受理されたものといっしょに届け出されていたものの、全ゲノム配列解析の追加資料の提供が求められていた。今年の4月にその情報が提供され、その届け出が5日に受理された。
遺伝子組み換え作物の場合は、申請が必要で、その申請を元に審査が行われ、省庁事務局が審査を行い、その結果をもとに検討委員会が開かれ、外部の学者などから意見が出され、そこで合意が得られると、その後、承認に向けたパブリックコメントが行われ、その後、最終的に大臣の決裁で承認が決まる。申請・承認は栽培実験と流通の2段階になるので、開発から承認までに少なくとも数年かかった。
でも、ゲノム編集生物の場合はこのプロセスは省かれる。もっとも、それが遺伝子組み換え生物にあたらないのか、検討が必要なので、やはりまったくプロセスがなくなるということではない。
遺伝子組み換え生物の場合は申請と審査にあたるものが任意の事前相談だけになる。そして事前相談で問題なしということになると、検討会で意見が求められ、異義がでなければ届け出受理となる。名前が違うだけで似たプロセスはあるといえばあると言えるが、まったく非公開で行われ、情報もほとんど開示されない。そして、パブリックコメントも行われない。だから市民の目からはまったく見えないところで決められ、突然、その存在が表に出てくる。表に出てくるといっても、省庁のページでひっそり公開するだけなので、ほとんどの人はその存在すらわからない。
今回の届け出受理によって、日本では「ゲノム編集」マダイが3系統、「ゲノム編集」トラフグが2系統、受理して流通可能になった(新たな系統の販売は来月1月から)。
今回届け出が受理された系統3系統のうち2系統は「ゲノム編集」されていないものと交配したもの。つまり、その遺伝子は「ゲノム編集」されたものと、されていないものとの両方から遺伝子を受け継いだヘテロ種(ハイブリッド種)。
リージョナルフィッシュ社は成魚まで魚を作るのではなく、稚魚を世界に売るビジネスモデルを想定している。だからハイブリッド種とすることで、売った先の養殖業者が勝手に繁殖しずらくしたいのではないか、と勘ぐりたくなる。
リージョナルフィッシュ社は稚魚と養殖プラントを世界に売るビジネスモデルを打ち出し、スマート養殖プラントを作るIT企業などから20.9億の投資を受けている。この養殖プラントが地域の環境にどんなインパクトを与えるのか、そのビジネスモデルをしっかり検証する必用があると思う。
農水省:ゲノム編集技術の利用により得られた生物の情報提供の手続
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/nbt_tetuzuki.html
厚労省:ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領に基づき届出された食品及び添加物一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18826.html
11月30日に行われた調査会の報告
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001019353.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001019354.pdf