ファクトリー・ファーミング(工場型畜産、超過密飼育)が危険なウイルスや病原菌の温床となるだけでなく、気候変動や人びとへのさまざまな慢性疾患の原因ともなることについて書いた。しかし、畜産自体を非難するとしたら大きな間違いとなるだろう。
アラン・セイボリーは地球の砂漠化を防ぐ唯一の方法は畜産の活用であると説く。現在、大地の3分の2で砂漠化が進行している。気候変動の最悪の事象の1つ。なぜ、畜産の活用が唯一の砂漠化の防止策となるのか?
生態系の危機と食・種子を守ること
新型コロナウイルスは食のシステムを変えるきっかけになるという話が海外からボンボンと飛び込んでくる。
農場で働く移民労働者が国境を越せずにスーパーに生鮮食料品が不足、家庭菜園をやってみようという市民が急増。でも、タネがない。英国では需要は600%増えたものもあるという(1)。タネもよその国の農場でまとめて作って輸入するのではこんな時は止まってしまう危険がある。野菜の種子を9割海外に依存する日本は脆弱すぎるほどだが危機感のほどはどうだろう?
結局、グローバルな食のシステムが止まったら何が起きるか、世界の多くの人たちが知ったということだ。タネからローカルに育て、そのタネを共有することがわたしたちの生存に欠かせない。 “生態系の危機と食・種子を守ること” の続きを読む
Kiss the Ground: 気候変動を止めるRegenerative Agriculture
気候変動を激化させ、世界の土壌をあとわずか60年で崩壊させかねない状況に追い込んでいるのは戦争技術が作り出した工業型農業システム。
しかし、生態系のシステム、特に土壌微生物の動きに学び、その力を生かす農業に転換すると、現在の危機的状況は劇的に変えることができる。気候変動を抑制するどころか、かつてそうあった安定した状況にまで危険な技術を1つも使わずに取り戻すことができる。そんなことは夢のように思われるかもしれないが、科学者たちもその力に太鼓判を押す。
生気を失い砂漠化した工業的農業システムの畑に、豊穣な生態系の力を引き出す農園が広がる。そして、前者の農場で働くものは国からの補助金がなければ赤字経営になってしまいかねないのに対して、後者の生態系を生かした農園は大きな富をもたらす(米国の平均の1エーカーあたりの利益は3ドル以下、それに対してRegenerative Agricultureを実践する農家の農園は100ドル以上をもたらす)。だからこうした農業の進展が止まらない。年々強まる気候変動の猛威を前に希望を失っていると、なんという夢物語だと思うかもしれない。でもこれは夢ではなく、実際に動いている、十分達成可能なもの。
その姿を描いたドキュメンタリー映画 “Kiss the Ground”。Vimeoで120円で視聴できる(ただし、Vimeoは英語。字幕なし1時間25分)。Netflixでは日本語字幕もあるとのこと。ぜひ、多くの人に見てもらいたい。
気候危機に対して食を変えろ! グラスゴー宣言賛同都市に!
気候危機を変えられるのは実は食。食のあり方を変えることで気候緊急事態に対処しようと、世界の市民、自治体関係者が集まり、画期的なグラスゴー宣言を14日に出した。 “気候危機に対して食を変えろ! グラスゴー宣言賛同都市に!” の続きを読む
ウイルス蔓延への処方箋とは?
新型コロナウイルスによる社会への影響、日本では冬に向け、今後さらに厳しい状況が来ることが危惧される。新型コロナウイルスだけでなく、他の人に感染しうる危険なウイルスの蔓延も今後ありうる。絶望的? いや、そうではない。ウイルス感染の真の原因を取り除くことで経済的に崩壊することなく、最悪のパンデミックを防止することは可能。しかも、その対策は多くが同時に気候変動防止にもつながるだけでなく、数多くの雇用も生み出す。 “ウイルス蔓延への処方箋とは?” の続きを読む
畜産のあり方を考える
土壌微生物と植物の共生関係は興味が尽きない(1)のだけど、これだけ見ていると近視眼的になってしまう。この世の中には動物もいる。当然、人間もいる。
動物の出現はこの土壌微生物と植物の共生関係をさらに拡大している。雨の少ない地域、特に寒冷な地域ではこの動物の存在が重要になる。なぜなら、そうした環境では土壌微生物は繁殖していくことが困難であるからだ。微生物たちは動物の腸にそうした環境でも繁殖していくことができる場所を見つける。あらゆる生命が必要とする窒素は微生物が空中から取り入れ、植物を通じて、動物にも供給される。そして炭素は植物の光合成によって微生物や動物に与えられる。
わずかな草を草食動物が食べ、その動物のお腹の中で微生物が繁殖し、糞となって排出されることで、土の中に炭素が蓄えられる。また草食動物が草を食べるたびに土の中の根は土に還るスピードが加速し、土が増えていく。肉食動物の存在が草食動物の増えすぎをコントロールし、過度に草が食べられないように維持される。土の中には水分や炭素や窒素が蓄えられ、気候変動も抑えられる。
この動物相を失うと、草、土壌微生物、土の循環が維持できなくなり、砂漠化してしまう地域がある。砂漠化すれば土は失われ、植物も、土壌微生物も激減する。その結果はさらなる気候変動が加速されることになる。 “畜産のあり方を考える” の続きを読む
気候変動の1つの現れとしての新型コロナウイルスとその解決策
新型コロナウイルスの被害が世界で止まらない。特にブラジルでの感染拡大が急速に拡がっており、米国を上回り、現在世界でもっとも急速に拡大を続けている。
新型コロナウイルスだけでなく、その他のウイルス、あるいは耐性菌(ウイルスではなく、バクテリア、病原菌)による感染症もここ近年急増している。さらに気候変動の激化はそれに拍車をかけるだろう。
これまで気候変動の問題を話していても、どこかみな危機感がなかった。でもこのウイルスも気候変動がもたらす問題の1つと受け取れば、気候変動がもたらす被害が少しリアルに感じられるのではないか? これは命に直結する問題なのだから。気候変動によって感染症の危険は増すのだから。 “気候変動の1つの現れとしての新型コロナウイルスとその解決策” の続きを読む
Wake-Up Callとしての新型コロナウイルス
世界が新型コロナウイルスを緊急の「Wake-up Call」だと呼んでいる。目を覚まして、われわれのあり方そのものを変えなければ大変なことになると言っているのだ。ただ単にこのウイルスだけの問題ではない。われわれの社会のあり方全体に関わりあることである。 “Wake-Up Callとしての新型コロナウイルス” の続きを読む