新型コロナウイルスによる社会への影響、日本では冬に向け、今後さらに厳しい状況が来ることが危惧される。新型コロナウイルスだけでなく、他の人に感染しうる危険なウイルスの蔓延も今後ありうる。絶望的? いや、そうではない。ウイルス感染の真の原因を取り除くことで経済的に崩壊することなく、最悪のパンデミックを防止することは可能。しかも、その対策は多くが同時に気候変動防止にもつながるだけでなく、数多くの雇用も生み出す。
問題はその対策をいくつかの政府はやろうとしない。対策をしない国がある以上、そこが抜け穴となってしまって世界の対策が効果を失う可能性もある。残念ながら今の日本政府はもっとも最悪の部類になる。
研究者たちは、今後のパンデミックの直接的な原因となる危険なウイルスの拡散を防ぐために必要な費用を見積もったが、それは新型コロナウイルスで被る被害総額のわずか2%で実現可能であるとしている(1)。
パンデミックを作り出す大きな背景は今の工業的な農業が作り出していることは多くの科学者たちがすでに指摘している。国連環境計画は工業的農業がもたらす10の問題をまとめているが、まさに今、新型コロナウイルスで命を落とす原因を作り出しているものが工業的農業にあることが、これを読めばはっきりするだろう(2)。
工業的農業の最悪の例がアフリカへの「緑の革命」の押しつけに見ることができる。ビル・ゲイツやロックフェラー財団の提案で“アフリカにおける「緑の革命」への同盟”が作られ、アフリカの人びとの税金を含む巨額のお金が注ぎ込まれたにも関わらず、悲惨な結果しかもたらさなかった(3)。
この工業的農業の変革は急務であるが、代替案はすでに存在しており、それは大きく育ちつつある。単位面積あたりで採れる栄養価は工業的農業よりも高く、より多くの人口を養うことが可能となる。また、土壌を守り、自然な循環を回復させることで、気候変動を食い止め、生物多様性の減少も止めることができる(4)。
人類の最大の危機となりつつある感染症の蔓延、生物多様性の激減(生物の大量絶滅)、気候変動の激化、こうした状況をもたらしているのは特に第2次世界大戦以降に世界に広がった工業型農業であり、わずか100年でここまで人類を危機に追い込んできている。そうした危機感のもと、化学物質に依存する工業型農業に対する代替案は世界が注目し、その実践はますます広がりつつある。
特にこのプロセスはこの20年間に世界で進んだ。20年前の世界と今の世界ではもうまったく別物になっている。この100年間に広がったやり方はもう今後、通用しなくなったことが明らかになった。大きな変革の時が来ている。
すでに舵を切り始めた政府も世界には存在している。米国ですら舵を切るまでには至っていないにも関わらず、さまざまなレベルで取り入れられつつある。
残念なことに、近年の日本はこうした新しい動きにはまったく目もくれずに、また広がりつつある危険に対して対処療法すら満足にしようとせず、古い頭のまま既成路線をさらに進める政策ばかり。政府が変わろうとしないなら、これは市民がやるしかない。そして、それはさまざまな方法で可能である。やがて政府も政策を変えるしかなくなるだろう。被害を少しでも減らすためにそれは一刻も早く実現しなければならない。
(1) Ecology and economics for pandemic prevention
https://science.sciencemag.org/content/369/6502/379
ビル・ゲイツが進めたアフリカでの「緑の革命」が失敗であったことを検証する詳細なレポートが作成されている。
“False Promises”
https://www.rosalux.de/fileadmin/rls_uploads/pdfs/Studien/False_Promises_AGRA_en.pdf