日本の農薬村はモンサント(現バイエル)の農薬、ラウンドアップ(主成分グリホサート)の安全性は確認された、などと滅茶苦茶な情報を流しまくっているが、こんな状況は特殊日本的。海外ではその危険を伝える最新研究のニュースは続々と止まらないし、海外のホームセンターではラウンドアップは姿を消していたり、訴訟が山のように延々と続いている。
今回の話はヨーロッパの話。EUはグリホサートの使用を2023年に10年認めてしまったが、その承認が違法であるとして、ヨーロッパの市民団体が訴訟に持ち込んだのだ。歴史的な裁判になると期待が高まっている¹。
米国での裁判はすべて非ホジキンリンパ腫などのがんに関するもののみ。でもグリホサートの与える影響はがんに限られない。遺伝子の発現を損ない、世代を超えて影響を与える可能性も指摘されている。つまり親には健康影響が出なくても、子や孫にその影響が出る可能性がある。子や孫は一切、グリホサートに触れていなくてもだ。また生殖機能にも影響を与えている可能性があり、生殖能力の減少にもグリホサートは関わっている可能性がすでに指摘されている。われわれだけでなく、未来の世代も危うくなる。
最近の研究では、グリホサートが脳の炎症を作り出し、アルツハイマー病や認知機能の低下に関わっていることが指摘されている。しかも、グリホサートへの曝露が一時的であっても、その代謝物は脳に蓄積してしまい、わずかな曝露であったとしても炎症を作り出してしまう可能性があるという²。
腸内環境が遺伝子組み換え食品の摂取によって悪化したことによって、リーキーガット状態になり、血液に入ってはならない物質が入り込むことで、血液脳関門が壊されることが指摘されている。だから血液脳関門が弱い子どもや高齢者の脳神経に問題が生まれやすくなることが指摘されてきた。でも、グリホサートは血液脳関門をくぐり抜けてしまう。だから血液脳関門が健全であってもグリホサートが脳・神経組織に炎症を生んでしまう。
米国の裁判ではバイエルが発がん性について強硬な主張を繰り返し、バイエル側が勝訴するケースも出ている(敗訴もあり一進一退状況)。でも、勝訴があったからと言って、ラウンドアップ(グリホサート)の安全性を示すものには決してなりえない。発がん性を否定するバイエルの論拠も怪しい上に、発がんはグリホサートがもたらす一症状、まさに氷山の一角に過ぎないからだ。しかし現在、米国の裁判で扱えるのががんに限られている。それだけでも米国で15万件以上の訴訟が起こされている³。グリホサートが作り出しているさまざまな疾患を考えれば、訴訟は本来桁外れのものに膨らむはずだろう。もはや、グリホサートは即、禁止しなければならないものであることが明らかだ。
欧州裁判所では、米国での裁判以上にグリホサートの危険をもっと包括的に検討されることになることが期待できる。それだけに欧州司法裁判所での裁判に注目したい。
(1) Next step: glyphosate approval is brought to the European Court of Justice
https://www.pan-europe.info/press-releases/2024/12/next-step-glyphosate-approval-brought-european-court-justice
(2) Herbicide Exposure Linked to Long-Term Brain Inflammation, Alzheimer’s
Herbicide Exposure Linked to Long-Term Brain Inflammation, Alzheimer’s
この研究は米国の国立老化研究所、国立衛生研究所の国立癌研究所とアリゾナ州立大学の研究所が資金を出している。米国政府や地方自治体系のお金でグリホサートの危険性がはっきり明らかにされている。
今の日本でこのような研究ができる大学はあるだろうか? 米国よりも日本の大学は企業のための研究しかできなくなっているのではないかと思える。日本の大学・研究のあり方が懸念される。
(3) California Roundup Lawsuit
https://www.wisnerbaum.com/toxic-tort-law/monsanto-roundup-lawsuit/
上記のページによるとラウンドアップ裁判の訴訟数は16万5000。