消費者庁消費者基本計画に関するパブリックコメントにコメントを!

 日本の政治の劣化を象徴するのが消費者庁かもしれない。「消費者」という名前を打った官庁なのに、消費者の利益や権利は無視して、企業のための政治を推し進める、いやそれどころか、消費者庁の中に企業の人たちがそのまま入ってきていることもわかっている。企業の、企業による、企業のための行政官庁に堕したのが消費者庁であって、もう名前を変えてほしい、としかいいようがない。
 実例をあげてみよう。日本では「遺伝子組み換えでない」という表現が2023年4月以降、国産限定の商品以外ほとんどできなくなってしまった。これは世界の動きに逆行する。写真で掲げたのはブラジルでの遺伝子組み換え表示。遺伝子組み換え原料を使っている製品には誰でもわかるように遺伝子組み換えをポルトガル語で書くときの頭文字Tのマークをつけることが義務化されている。でも、日本では遺伝子組み換え原料使っているお菓子やペットフード、それに食用油やお酢でも表示はされない。表示義務が甘いからだ。だからこそ使っていないことのアピールが重要なのだけど、それもほとんどできなくしてしまった。あくまで企業の利益になるように制度を変えているのが消費者庁。

写真は筆者が昨年、ブラジルのスーパーで撮ってきた写真(ブラジリアのスーパー)Tの字が入った目立つ△印が遺伝子組み換え使っていることを示すマーク。

 さらに、「ゲノム編集」食品も表示しなくていい、「あきたこまちR」など重イオンビーム放射線育種米は従来の品種の名前でごまかして売っていい、消費者が選ぶ権利を奪うことに消費者庁は邁進しているとしかいいようがない。
 
 その消費者庁が昨日から第5期消費者基本計画に関するパブリックコメントを始めた。曰く、「食品表示制度の適切な運用を図るため、消費者・事業者向けの普及啓発を積極的に継続していく」。なんという上から目線。啓発したいのは権利を奪っている消費者庁の方であって、その消費者庁に啓発などされたくない、と言いたくなるが、それはぐっと呑み込んで、このパブリックコメントの以下の文言に注目したい。
 
 「ゲノム編集技術応用食品等については、流通実態や諸外国の表示制度を注視しつつ、新たな知見等が得られた場合には、必要に応じて表示の取扱いの見直しを検討する。」
 
 実際にEUは今年2月に「ゲノム編集」食品に表示を義務付ける議決をしており、それと同時に「ゲノム編集」食品であるかどうかを判定できるように2つの研究所に資金を投じており、その2研究所とも、検出可能という報告を出している。まだその結果報告は確定的なものでないにせよ、これまでの日本政府の「『ゲノム編集』生物は検出が不可能だから表示はできない」という見解は維持できない。だからこそ、消費者庁は「ゲノム編集」食品を表示義務化すべきなのだ。これは実行してもらわなければならない、もっとも検討を実行するのではなく、見直しをするということだ。
 
 「ゲノム編集」食品だけに限らない。重イオンビーム放射線育種品種も遺伝子の二重鎖を破壊する点、「ゲノム編集」と同様の問題を含んでいる。これを表示しないで販売していい、というのもおかしい。そして、すでにこちらは重イオンビーム放射線育種品種かどうか判定方法まで確立しているのだから、表示できない理由も存在しない。
 
 この基本計画ではエシカル消費に言及しながら、そのエシカル(倫理的)という意味を消費者庁をどうやら理解していない。消費者がエシカル消費を主体的に推し進めることが重要だ、と上から目線で書くに留まり、アニマルウェルフェアについては言及がない。海外ではアニマルウェルフェアに考慮した製品かどうか、表示も始まっているのに、日本ではアニマルウェルフェアは消費者基本計画では無視するのか? アニマルウェルフェアも配慮されない家畜から作られる食品を食べて、果たしてエシカルでありうるか?

 この点でも、まず啓発されるべきは消費者庁であって、市民ではない。まず現在の消費者庁を組み直して、本来の消費者基本法に基づき、消費者の権利を守る行政を再構築する他ないではないか。拷問養殖と海外から批判される「ゲノム編集」魚を作るリージョナルフィッシュ社を政府をあげて支援して、それが止められない消費者庁に市民を啓発すると言える権限があるだろうか?
 
 消費者の権利を奪うだけでなく、本当の意味のエシカルな商品を作る生産者、食品加工会社、流通会社の事業をも消費者庁は損なっている。EUでは食品流通会社が「ゲノム編集」無表示流通に強い反対の意志をEU当局に突き付けている。
 
 いずれにしても、問題だらけの消費者庁、他にも多数論点がありうると思う。多くの人がそれぞれの観点からパブリックコメントを送ることを期待したい。複数送ることも匿名で送ることも可能なので、問題だと思う件を1つ1つ送るのも手だろう。
(もっともコメントを書くときはこの僕の投稿のようにけんか腰ではなくて、法律に基づき、あるべき政策を淡々と書く方が相手も真面目に読まざるを得なくなり、効果的だと言われるので、その点はご留意ください)。

パブリックコメント
第5期消費者基本計画(素案)に関する意見募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=235020028

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