日本政府の種苗法改正になぜアジアから抗議の声?

 種苗法改正について連続して書いていますが、今回の法改正で出てくるのが「戦略的海外ライセンス」というもの。他の国では禁止だけど、特定の国・地域には日本からの輸出時期には市場に出荷しない、日本には出荷しないという条件を元に栽培を許可するというものです。南半球ならば日本と季節が逆なので、日本で収穫できない時に収穫されるので、競合せず、スーパーの棚が年中確保できて、日本産の農産物の輸出が拡大できるという発想です。山梨県知事と小泉前農相との間でシャインマスカットのニュージーランドへのライセンスで騒動になりましたが、あれはこの戦略的海外ライセンスに向けた動きの一つだったと言えるでしょう。
 どうやって外国でライセンスを守らない生産者を規制するか、日本の法律は海外まで通用しませんので、外国は外国で規制する仕組みが必要になります。そこで出てくるのが育成者権管理機関を日本に作り、そこを通じて海外に生産者団体(マスターライセンシー)を作って、そこを通じて監視していくという仕組みです(添付図参照)。
育成者権管理機関のイメージ
 しかし、海外での規制が有効になるためには、海外でも日本と同じ種苗法にしていかないとできないことになります。そこで日本政府は海外諸国での種苗法改正も同時に求めているのです。日本政府は東アジア植物品種保護フォーラムを東南アジア、韓国、中国含めて作り、種子メジャー企業が作った種苗の知財権(育成者権)を農民のタネの権利に優越させるUPOV1991条約の批准と各国での種苗法改正の圧力を2007年以来かけてきました。
 アジア地域では今でも多くの農家が自分たちのタネを元に農業を営んでいます。それが企業のタネを買わないと農業できなくなるように変えられてしまう可能性が高まっており、今、アジア地域で、この日本政府の圧力に抗議の声が上がっています。
 日本の種苗法改正は国内だけの問題ではないのです。日本国内でも急速に消えつつある地域のタネを守ることは今後の激変する環境を生きぬく中で最重要のことになるでしょう。育成者権と輸出だけに執着する現在の日本政府の姿勢はやはり偏っており、同時に農家のタネの権利と地域でのタネの生産を守る施策がなければ説得力もありません。
 今回、国会に出されようとしている種苗法改正法案にはこれ以外にも数多くの問題が存在しています。ろくな審議もなく成立させていいものではありません。ぜひ、その行方にご注目ください。
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【参考】
添付した図は農⽔省輸出・国際局知的財産課「令和 5 年度予算概算決定資料」から抜粋しました。
 種苗毎に一種の「クラブ」を作って、そこが海外での生産を監視していくという構想です。つまりタネの知財権=育成者権だけでなく、生産にも介入して商標権を通じて規制する体制にするということになり、種苗法はタネを管理する法律を超えて、生産・流通にも関わる法律に変わろうとしていることになります。でもそんなクラブをすべての種苗でできるはずもありません。その恩恵は一部の輸出種苗業者に限られるでしょう。
 農水省は海外への農産物輸出に多大なエネルギーを投じているのですが、そのエネルギーをもっと国内の食料自給率の向上に振り向けるべきだと考えるのは私だけでしょうか?

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