種苗法改定、日本政府は農家の自家増殖一律禁止はグローバルスタンダードだと言いたいようだが、それは事実と異なる。
確かに植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)では育成者権のある登録品種を農家は自家増殖することができないとされている。しかし、15条で例外が規定されており、締約国は合理的に育成者の権利を侵害しない範囲において農家の自家増殖認める品種を定めることができる。そして各国、それぞれその国で重要な作物の例外を定めている(表参照)。
米国でも小麦などは自家採種をするのが基本となっていると聞く。遺伝子組み換え種子や遺伝組み換えでなくとも特許を取られた植物の場合は自家採種は禁止対象となるが、品種保護法では自家採種は禁止されていない。
南米アルゼンチンでは遺伝子組み換え種子の自家採種も禁止されていない(インドについては今、事実確認中)。そもそもUPOV条約は74カ国と地域機関によって批准されているが、全世界の合意事項ともなっていない。
だから、もし、日本が登録品種の自家増殖を今回の種苗法改正で一律禁止してしまうとしたら、これは世界でも例のない突出になってしまう。それは決してグローバルなスタンダードなんかではない。
今回の種苗法改正はあまりにおかしいので廃案を求めたいが、反対が強まれば修正案を提案してくる可能性もありうる。その場合、今回の審議で例外の設定を農水省が出してくる可能性があるかもしれない。
省令で例外を設定するという修正を出してくるかもしれない。でもそうなると、法を変えてから、後で省令だけで自家増殖できなくなる。国会での審議が不要なので、簡単に変えられてしまう。
あまりに影響が出てしまうことが懸念されるサトウキビ、イモ類、イチゴなどの場合は、最初は例外としておくことで安心させ、改正案を通してしまうかもしれない。改正法にしっかりと例外が明記される修正であれば、それを変えるためにはまた国会審議となるのでまだいいのだが、省令で指定するというのは認めるべきではないと思う。もっとも修正など一切せずに採決というのが一番ありうるシナリオだろう。
もちろん、ここだけ修正すれば他はいいという話にはならないので、廃案、少なくとも継続審議で、たった数時間の審議で採決ということがないことを求めたい。そうさせるためには与党含めて、この法案がいかに常軌を逸しているかを知らせる必要がある。