3月16日に締め切りとなる遺伝子組み換えの承認に関するパブリックコメントがある。デュポン、ダウ・ケミカル、モンサント、サントリーホールディングスの申請によるものだ。締め切り期日が迫ってきたので、今回の承認で特に問題と思われることに焦点を絞ってコメントを書いてみた。
パブリックコメントの字数制限が2000文字ということもあり、論点は絞らざるをえなかった(しかし、トウモロコシとカーネーション、大豆という関連のない8品種が一度にされているコメントなので、この8種類それぞれ2000文字と考えて書くという手もある)。カーネーションなどについては言及できていないが、問題がないと考えているわけではない。
これ以上の農薬汚染、遺伝子資源の汚染を防ぐためにも、多くの人がそれぞれの意見を農水省や環境省に送られることを切に願う。
パブリックコメントの趣旨や投稿先はこのページの末尾にまとめた。
背景事情などは別記事にまとめたのでご参照いただければ幸い→遺伝子組み換え作物の相次ぐパブリックコメントに対して。
遺伝子組換えトウモロコシ、カーネーション及びダイズの第一種使用等に関する承認に先立ってのパブリックコメント
遺伝子組み換え承認プロセスについて
現在の遺伝子組み換えの安全性承認プロセスに大きな矛盾があります。安全性は第三者機関がテストした結果に基づき判断すべきですが、現在は承認を求める企業自身がテストしています。不都合なデータは初めから排除された状態で公正な判断ができるとは考えられません。
そのテストする期間も短すぎます。健康に障害が出るには時間がかかります。しかしわずか90日間のテストのみのデータで問題が出なければOKとするのでは実際の安全性はわかりません。第三者機関による長期テストがされない限り、安全とはいえないと考えるべきです。
アレルギーや慢性疾患の割合が最近急増しています。それには遺伝子組み換え食品の摂取の可能性が十分あります。現に遺伝子組み換え食品を摂取していた子どもの食事から遺伝子組み換えを排除しただけで症状が劇的に軽減されたケースも報告されており(注1)、遺伝子組み換え食品による健康被害については大規模な調査が至急に必要とされています。
フランスのカーン大学をはじめとして、遺伝子組み換え食品の有毒性を指摘する研究は数多くあります(注2)。安全性が確保されていないとして予防原則に基づき、世界各地で遺伝子組み換えの耕作を禁止する動きが生まれており、EUでは遺伝子組み換え作物の承認が凍結されています(注3)。日本でも安全性が確認されるまで遺伝子組み換えの新たな承認を中止し、これまで承認された遺伝子組み換えの承認を撤回し、今一度検証すべきです。
チョウ目害虫抵抗性並びに除草剤アリルオキシアルカノエート系、グルホシネート及びグリホサート耐性トウモロコシについて
除草剤アリルオキシアルカノエート系はベトナム戦争で使われた2,4-Dを使った除草剤で、ガン、精子の減少、肝臓病、糖尿病、パーキンソン病、内分泌障害、妊娠障害、神経毒性、免疫抑止などの危険性が指摘される農薬で、米国では枯れ葉剤遺伝子組み換えとして大きな反対運動が起きています(注4)。
この遺伝子組み換えトウモロコシが出てくる背景にはモンサントの除草剤ラウンドアップに耐性を持つ雑草が広範に見られるようになっている現実があります。農薬使用は遺伝子組み換えの登場以降、年々増加し、それでも枯らすことのできない雑草が出現しています。しかし、モンサントは遺伝子組み換え技術が農薬の減少をもたらすと約束しました。現在の事態はその技術の正当性を否定するものです。
この事態に対して、農薬耐性遺伝子組み換え技術の全面的な見直しが必要です。それをせず、今回の申請を承認することは、この技術の欠陥を糊塗するだけであり、現状をさらに危険な事態に陥れるものです。ラウンドアップで失敗したことを今度はアリルオキシアルカノエート系の除草剤で行っても、ラウンドアップと同じ問題が繰り返されるでしょう。
米国ではこの枯れ葉剤耐性とジカンバ耐性が承認されてしまうと70%の農薬増加がもたらされるとして反発が強く、承認が大幅に遅れ、今年の収穫用にはされませんでした(注5)。米国で懸念されている事態に対して、日本ではどのような検討がされたのか、パブリックコメントの資料からはまったく伺うことができません。
チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グリホサート耐性ダイズについて
ラウンドアップ耐性大豆は米国の他、南米にも大量に植えられました。昨年12月、アルゼンチンではこの遺伝子組み換え大豆によって多大な健康被害、環境被害が生み出されたとして集団訴訟が起こされています(注6)。今回パブリックコメントの対象となっている大豆はこのラウンドアップ耐性大豆を元に、害虫抵抗性を掛け合わせただけのものです。
害虫抵抗性についていえば、大きな問題が指摘されています。1つはその有害性であり、もう1つは技術の有効性への疑問です。ブラジルのバイア州では害虫抵抗性トウモロコシが益虫を滅ぼしてしまい、その益虫を天敵としていた害虫が大量発生。その害虫が遺伝子組み換え木綿に約985億円相当の多大な被害を与えているといいます(注7)。
このラウンドアップ・レディー2大豆は中国で安全性に疑いがあるため承認されていないと聞きます。日本の委員会は安全であるとしたということは日本の基準は中国よりも緩いということでしょうか?
ラウンドアップ耐性大豆(RR1)はすでに特許が切れています。この特許はEUでもブラジルでも無効と判断されています(注8)。このRR2にはなんら新しいところがなく、既存の技術を掛け合わせただけです。すでに特許が切れているものを掛け合わせることで、特許切れに対する対策にしたものなのではないでしょうか? むしろこれは特許ロンダリング大豆というべきでしょう。
現在の遺伝子組み換え技術への世界的な懐疑が広がる中で、その懐疑に応えることなく、中国やEUでも承認の進まない遺伝子組み換えを日本が拙速に承認しなければいけない理由は存在しません。承認しないことを求めます。
- Doctors and farmers find that eliminating GMOs prevents disease
- GMO MYTHS AND TRUTHS 37ページ〜69ページ参照
GMO Seralini…カーン大学で初めて行われた遺伝子組み換え飼料の長期(2年間)のテストの結果 - AFP: EUがGM作物の承認を凍結、2014年末まで
- 米国農務省(USDA)は昨年にこの枯れ葉剤耐性トウモロコシを承認しようとしていたが、昨年4月に行われたパブリックコメントには36万5000を超す反対意見が寄せられ、154の農民、漁民、医療関係者、消費者、環境保護の団体連名による要請書も出され、結局、未だに承認されていない。
- Stop Monsanto’s Dicamba Tolerant Soybeans!
- Presentaron una demanda colectiva por el uso de transgénicos アルゼンチンでの遺伝子組み換え使用に対する集団訴訟(スペイン語)
- Lagarta devora lavouras e provoca prejuízos de R$ 2 bilhões na Bahia…ブラジルにおける害虫抵抗性遺伝子組み換えによる被害
- Brazil Supreme Court denies Monsanto extension on GM soy patent
パブリックコメント:趣旨や提出先
農林水産省消費・安全局農産安全管理課…送信フォームはこのリンク先ページ末尾の意見提出フォームのボタンをクリック
環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室…送信フォームはこのリンク先ページ末尾の意見提出フォームのボタンをクリック