ジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆などへの私のコメント

農水省によるジカンバ耐性など遺伝子組み換えの飼料の安全性に関するパブリックコメントの締め切りが4月2日に迫った。モンサント社によるジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆、モンサント社による除草剤グリホサート耐性セイヨウナタネ、シンジェンタ社による害虫抵抗性トウモロコシの3つをまとめてコメントを求めるものである。

ここではジカンバ耐性大豆の問題に焦点を当てて私のコメントを書いてみた。なお、このページ上にある遺伝子組み換えの危険を指摘する資料ページへのリンクは送付するコメントには字数制限のため、別送している。

パブリックコメントの趣旨や投稿先のリンクはこのページの末尾にまとめた(こちらは終了済み)。

2013年6月21日追記:さらに新たにジカンバ耐性大豆のパブリックコメントが始まった。こちらの期限は7月20日。こちらの詳細は農水省プレスリリースへ。この記事の対象の大豆との違いはこの記事の大豆がジカンバ耐性だけなのに対して、さらにグリフォサート(モンサントの農薬ラウンドアップの主成分)耐性も兼ね備えているということであり、下記の記事の内容は有効であると考える。

背景事情などは別記事にまとめたのでご参照いただければ幸い

ジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆について

 ジカンバはベトナム戦争の枯れ葉剤作戦でも2,4,5-Tや2,4-Dなどとともに使われていました。英国のNGO、ISISによると、ジカンバはDNAを損傷し、突然変異のテストにおいても遺伝毒性があり、2,4-Dとも似た構造を持ち、土壌に留まらず地下水を汚染することで広範囲に影響を与える危険があると指摘されています。

 現在はジカンバをまけばその撒いた場所のすべての植物を枯らせてしまうため、農薬としての使用は限定的にしかできませんが、このジカンバ耐性大豆が生まれてしまえば事態は一変します。広大な地域にジカンバが大量に撒かれることになるでしょう。すでに危険性を指摘されているジカンバの大量散布をもたらすジカンバ耐性大豆の承認はそれゆえ許されるべきではありません。

 米国でもその危険性ゆえ、大きな反対運動が生まれており、ジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆はまだ承認に至っていないと聞きます。実際に耕作の可能性の高い米国で広がる懸念を払拭するに足る検討が日本でされたでしょうか? 日本の承認は米国で反対する農民を説得できる内容を持っているでしょうか? 資料を見る限り、そうした検討が行われてはいないと判断せざるを得ません。

遺伝子組み換え技術そのものを見直す時

 このジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆が必要とされてくる背景にはこれまで作られたモンサントの農薬ラウンドアップが効かなくなっているという背景があります。ラウンドアップに耐性を付けたスーパー雑草が米国の農場の半分を制覇しているという報告があります。しかし、これは予想されていたことです。遺伝子組み換え作物に組み込まれたラウンドアップ耐性の遺伝子情報が雑草に取りこまれてしまえば、この遺伝子組み換えそのものが無意味になる。農薬を減らすと約束して登場したラウンドアップ耐性遺伝子組み換えがそれを裏切り、農薬使用の増加をもたらしています。

 今回のジカンバ耐性遺伝子組み換えではこのラウンドアップ耐性大豆の愚を繰り返さない保障はあるでしょうか? 雑草はすぐにジカンバ耐性を獲得していくでしょう。しかし、この農薬使用により、ジカンバ耐性を獲得したごく一部の雑草を除けば、生物多様性は死滅していきます。これが生態系に致命的な悪影響を与えることにつながります。
 
 さらに最近、遺伝子組み換え作物の危険を警告する研究が相次いで発表されています。
 Gene VIとよばれるウイルス性の病原菌がすでに承認された多くの遺伝子組み換え作物に含まれており、その安全性が根本的に疑われています(EFSA: Hidden Viral Gene VI Discovered in GM Crops)。

 また、遺伝子組み換えされた二重鎖RNAは調理や消化でも解体されず、体内に取りこんでしまい、人間の遺伝子の特定の機能を「スイッチオフ」してしまう危険があるが、現在の規制ではその危険が無視されているという研究がオーストラリア、ニュージーランド、ブラジルの国際研究チームによって発表されています(A comparative evaluation of the regulation of GM crops or products containing dsRNA and suggested improvements to risk assessments)。

 先日、世界を驚かせた中国で病死した豚が川に大量に捨てられた件、その病死の原因は遺伝子組み換え飼料にあるという疑いも浮上しています(Pig deaths, human reproductive problems, and suspected GMOs)。

 このように遺伝子組み換え作物の安全性に疑いが出ている中、それを払拭するに足る検証はされたでしょうか? 残念ながらその検証がされ、安心できるに足る情報は提供されていません。

 ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えの効力が切れることが確認できた今、そして、次から次へと遺伝子組み換え作物の危険を指摘する研究が発表されてきている今、すべきことはこうした遺伝子組み換え技術そのものの見直しであり、次から次へと新しいより危険な農薬を持ち出す悪循環を進めることではないはずです。

「除草剤ジカンバ耐性ダイズMON87708系統」について述べてきましたが、同様の懸念を「コウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシEvent5307系統」、「除草剤グリホサート耐性セイヨウナタネMON88302系統」にも感じます。ナタネについてはすでに日本に遺伝子組み換えナタネが自生し、同じアブラナ科のブロッコリーにも転移しているという深刻な報告があるにも関わらず、なぜその対策もなく、新たな遺伝子組み換えナタネが承認されるのか、理解に苦しみます。

これらの遺伝子組み換えの飼料への使用承認に反対します。

パブリックコメント送信先

農林水産省パブリックコメント
組換えDNA技術応用飼料の安全性確認申請案件についての意見・情報の募集について 2013年4月2日まで 送信フォームはリンク先ページ末尾に

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