米国では枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えの再調査

たびたび書いてきたが、日本政府が米国政府よりも早く遺伝子組み換えを承認する、という動きが生まれている。開発した米国企業の本国でその危険性ゆえに国中の論議となり承認がされていない枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えが日本ではその使用(栽培・食用・飼料用)が認められているのだ。

米系多国籍企業ダウ・ケミカルによって開発された枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシが、もし承認され、栽培が大規模に行われれてしまえば、農薬使用を大量に増やし、健康や環境に大きな影響を与えてしまうことが懸念されている。

枯れ葉剤は米国がベトナム戦争で使いて、先天性欠損症をはじめ、多くの健康被害、環境被害をもたらしている。枯れ葉剤の主成分のうち2,4,5-Tは禁止されたが、もう1つの主成分2,4-Dにも多くの懸念が持たれているにも関わらず、その後、2,4-Dは農薬として復活して、現在でも簡単に購入が可能である。もっとも2,4-Dはすべてを枯らしてしまうため、その使う局面は限られている。耕作前に雑草に覆われた畑を整地するなどでは使えても、耕作以降は使えない。せっかく植えたものも枯らせてしまうからだ。しかし、耐性のある遺伝子組み換え作物が出てくれば話しは別である。

なぜ枯れ葉剤遺伝子組み換えが登場するのか。モンサントの開発した農薬ラウンドアップがもう効かないスーパー雑草が米国の多くの農場で出現しており、もはやラウンドアップの使用量を増やしても対抗できなくなってきている。このグラフ(外部サイト)を見れば、ラウンドアップの使用量の激増と共にラウンドアップが効かない雑草のケースが増加していることがわかる。

しかし、枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えを導入しても、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えと同じ道を辿らないと期待することは難しい。ラウンドアップ耐性遺伝子組み換えの場合と同様に今度は枯れ葉剤耐性雑草が生み出されるまでにそれほど時間はかからないと見る批判は多い。枯れ葉剤が大量に撒かれてしまう事態になればその環境に与える影響は多大なものがあり、米国で大きな反対運動が起きる理由は容易に理解できる。

2012年4月に行われた米国のパブリックコメントには36万5000を超す反対意見が寄せられ、154の農民、漁民、医療関係者、消費者、環境保護の団体連名による要請書も出された。さらには承認に反対する署名は40万を超し、未だに承認に至っていない(資料1)。

日本での承認に先立つパブリックコメントで、米国での反対運動や枯れ葉剤の危険については多くの人が触れているはずであるにも関わらず、農水省はそのコメントをいっさい無視し、すでに4品目の枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシが栽培、食用、飼料用としてその使用を認めてしまっており、食品としても20品目の枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシがすでに「安全」として承認されている(栽培関連の承認は農水省 資料2。食品としての安全は厚労省 資料3)。

今年になって、米国農務省動植物検疫局はこのダウ・ケミカルの枯れ葉剤遺伝子組み換えとモンサントの開発したジカンバ耐性遺伝子組み換えに対して環境影響評価報告書(Environmental Impact Statements, EIS)に取り組むと発表した。動植物検疫局は米国の市民団体、Center for Food Safety (CFS)により2007年、2009年に遺伝子組み換えアルファルファや遺伝子組み換え砂糖大根(甜菜)の環境影響評価報告書を作成しなかったとして国家環境政策法(NEPA)に違反したとして訴えられている(資料4)。

昨年の承認プロセスは今回のこの評価報告書なしで行われていた不十分なものということになる。開発した米国企業の本国でも再評価がこれから行われるという事態であるにも関わらず、日本では昨年末以来、次々に安全宣言してしまっていると事実は日本での遺伝子組み換え承認プロセスがいかに内実がない異常なものかを示している。

この問題はぜひ国会で追及していただきたい。



資料1 枯れ葉剤遺伝子組み換えに対する米国の反応


資料2 第1種使用許可されたダウ・ケミカルの枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えのリスト(ただし2013年5月12日現在)。いずれも栽培、食用、飼料用として承認()内は承認日 出典(農水省)PDF

  1. アリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ(2012-12-05)
  2. チョウ目害虫抵抗性並びに除草剤アリルオキシアルカノエート系、グルホシネート及びグリホサート耐性トウモロコシ(2013-03-27)
  3. チョウ目及びコウチュウ目害虫抵抗性並びに除草剤アリルオキシアルカノエート系、グルホシネート及びグリホサート耐性トウモロコシ(2013-03-27)
  4. 除草剤アリルオキシアルカノエート系及びグリホサート耐性トウモロコシ(2013-04-24)


資料3 「安全性審査」の手続を経た旨の公表がなされたダウ・ケミカルの枯れ葉剤耐性トウモロコシ(ただし2013年5月12日現在)出典(厚労省)PDF

  1. アリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統(2012-05-30)
  2. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統、コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  3. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  4. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  5. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統、コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  6. チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統、コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  7. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  8. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  9. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  10. チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた(2013-01-31)
  11. チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  12. 除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統、コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  13. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統及びアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  14. チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  15. 除草剤グリホサート耐性及びコウチュウ目害虫抵抗性トウモロコシMON88017系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  16. コウチュウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシB.t.Cry34/35Ab1 Event DAS-59122-7系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-01-31)
  17. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、除草剤グリホサート耐性トウモロコシNK603系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-02-26)
  18. チョウ目害虫抵抗性トウモロコシMON89034系統、除草剤グリホサート耐性トウモロコシNK603系統及びアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-02-26)
  19. チョウ目害虫抵抗性及び除草剤グルホシネート耐性トウモロコシ1507系統、除草剤グリホサート耐性トウモロコシNK603系統並びにアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-02-26)
  20. 除草剤グリホサート耐性トウモロコシNK603系統及びアリルオキシアルカノエート系除草剤耐性トウモロコシ40278系統を掛け合わせた品種(2013-02-26)


資料4

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