日本政府は米国に先んじて枯れ葉剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシ(ダウ・ケミカル)を昨年承認し、さらに今、これまた米国がまだ承認していないジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆(モンサント)を承認しようとしている(現在パブリックコメント募集中2013年3月6日まで。除草剤ジカンバ耐性ダイズMON87708 系統に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての御意見・情報の募集について)。
まずこれらが出てくる背景はいうまでもなく、モンサントの開発した除草剤ラウンドアップに対して耐性を持つスーパー雑草がすでに米国の農園の半分にまで広がっているという事実(Glyphosate Resistant Weeds – Intensifying)。
ラウンドアップをいくらかけても雑草が枯れなくなっている。そこで枯れ葉剤とラウンドアップを混ぜて、スーパー雑草を退治しようということだが、枯れ葉剤耐性のスーパー雑草も出てきているということで果てしない自然に対する軍拡競争、悪循環でしかなく、農地は大変な汚染にさらされることになるだろう(汚染だけでなく、土壌の有機物の破壊などの被害も大きくなる)。
こうした中で、農薬使用の増加、土壌の悪化などで生産性が落ち、米国内の農民には遺伝子組み換えの耕作をやめようという動きがある。US farmers may stop planting GMs after poor global yields
遺伝子組み換えが導入される1996年を境に大豆栽培のコストは325%上がっている(1995年と2011年の比較)。“SEED GIANTS VS. U.S. FARMERS” PDF
もう1つの問題は1994年に承認されたラウンドアップ耐性遺伝子組み換え大豆の特許の有効期間が切れること。Threat to global GM soybean access as patent nears expiry
特許が切れればその種子を維持するのにモンサントはお金を使いたくない。すでにブラジルでは最高裁判所がモンサントのラウンドアップ耐性大豆(RR1)の特許は失効しているとしている。
こうした状況の中でモンサントにとっては新しい遺伝子組み換え大豆の承認がビジネス存続に不可欠な条件となっている。ジカンバ耐性大豆とラウンドアップ耐性とBt毒素を組み込んだIntacta RR2 Proの承認を狙っているわけだが、前者は米国で審査終了、承認待ちの状況だが反対運動は大きくなっている。後者は最大輸入国の中国が承認していない。それだけ問題のあるものなのだ。
今、モンサント型の農業を継続するのか、それともそれとは違う農業にしていくのかが問われている時である。そして前者を選択すれば、さらなる農地汚染・破壊、遺伝子資源の汚染と喪失、世界の人びとの健康被害、環境破壊につながっていく。そんな重大な岐路にいるのにマスコミからはほとんど情報が伝わらない。
日本のマスメディアは今回のジカンバ耐性遺伝子組み換え大豆の承認が相当問題あることを報道してほしいものだ。
この事態に危機感を覚える人はぜひ、パブリックコメントにメッセージを送ろう(パブリックコメントは承認前の儀式になってしまっているが、できることが限られている中、やらない手はない)。
こちらから→ 除草剤ジカンバ耐性ダイズMON87708 系統に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についてのパブリックコメント送信フォーム