いや、もうほら見たことか、という動きになっているモンサントのグリホサートのEUでの使用延長をめぐるバトル。
モンサントとバイエルは延長承認の後、ワインかビールで祝杯したかもしれない。でもさぞかしまずい祝杯だったろう。飲み終わった後は青ざめていたのでは?
なにせ、ぼろぼろと都合の悪いニュースが飛び込んでくる。フランスに続き、イタリアも3年以内にグリホサートを禁止する方向であることがわかった。その上に、承認賛成に寝返ったはずのドイツもフランスと協力しながらグリホサートを禁止・規制する方向で検討というニュースが流れてくる(だったら、使用延長に賛成するなよ)。
こうなると、もはやEUでのグリホサートの命運は見えてしまったようなものだ。
そもそも数年前まではグリホサートを禁止するなんていうことはありえないと思われたほどのことだった。あまりに世界中で使っていて、多くの農家がそれに依存していて、禁止するなんてとんでもない。もし、禁止するなら何を使うの? 2,4-D? もっと危険だよ、という話しになるから。しかし、今ではグリホサートや農薬に頼らない方法が現実的であることが注目されだしており、禁止するということが環境団体の叫びで終わらず、ほとんどクーデタ的な小細工をやらない限り使用承認得られない寸前のところまで来てしまった。
数年前まではグリホサートの危険性についてEUでもマスメディアが取り扱うことはまれだったというが、この承認をめぐる1年半の騒ぎで、マスメディアに多くのニュースが流れ、しかも、「モンサント文書」(EUの食品安全認可を行うEFSAのグリホサートの安全性の審査の文章を書いていたのが実はモンサントの研究者であることが暴露された件)や今回のドイツ政府の醜聞(農相単独で政府が合意していない賛成に回る)などもあって、モンサントやグリホサートの信頼度は地に落ちた。
これはEUでのグリホサートに反対する市民運動の大きな成果だと言えるだろう。
今後大変な事態も起きるかもしれない。特にドイツのメルケル政権の中で、今後、連立を組む政党同士の深刻な対立を生む可能性はあるだろう。今後の政権運営に大きな影響を与える可能性もある。緑の党は農相の罷免を求め、市民は罷免を求めるオンライン署名を始めている。
いずれにせよ、この騒動の中で多くの市民がグリホサートの危険に気がついたということがもっとも重要。それがやがて政治を変えていくことになるだろうから。
要するにEUは表面的には再使用を認めたことになっているが、その内実は実はあと5年で禁止に向かって動き始めているというのが現実的な趨勢だといえる。これで日本政府がグリホサートの大幅規制緩和する道が開けたとするとしたらあまりに状況が見えていないということになる。
Glyphosate row casts shadow over German coalition prospects
Germany’s Christian Schmidt admits taking glyphosate decision alone
モンサント大臣は出てけ! ドイツでのオンライン署名
Der Monsanto-Minister muss gehen!
With glyphosate re-approved, is environmentalists' strategy in tatters?