グリホサートの終わりの始まり:EU5年間使用承認延長劇

 モンサントの農薬グリホサートはEUでさらに5年間の使用が承認されてしまったけれども、これはグリホサート禁止に向かう大きなバネになりうると昨日書いた。
 実際にフランスのマクロン首相はグリホサートを3年以内に禁止するように指示したとTweetしている。


 もうさっそく始まっている。フランスだけだろう、と言うかもしない。だけど、そうではない。10月22日、欧州議会環境公衆衛生委員会はやはりグリホサートを2020年までに禁止する決議を行っている。そして24日、欧州議会はグリホサートを2022年までに禁止する決議を行っている。

欧州議会環境公衆衛生委員会、グリホサート2020年までに禁止議決
欧州議会、2022年までに禁止を議決
MEPs Vote to Ban Glyphosate in European Union in 2022

 欧州議会の議決は強制力がない。欧州委員会で出されてきたのは5年間の使用延長承認提案。しかし、この5年の使用延長というのは5年間で禁止という欧州議会の決定と実質的に同じになる可能性はあるのではないか? 実際にフランス政府はその方向に踏み出している。すでにグリホサートに依存している農家がグリホサートを使わない形に変更するのには時間はかかるかもしれない。しかし、その間、規制できるものは規制していく。たとえば公共の土地での使用禁止、個人使用禁止、これはすでに少なからぬ自治体や国が打ち出している方策だ。そして収穫前散布(プレハーベスト)の禁止。
 収穫前散布、プレハーベストは大きな問題になりつつある。このプレハーベストによって、たとえばドイツのビールから、Ben & Jerry'sのアイスクリームから、英国で売られるパンの3割からもグリホサートが検出される。遺伝子組み換えを避けていても、最近では小麦などにグリホサートを収穫前に散布してしまう。小麦などの乾燥には手間がかかるが、収穫前に枯れてくれるから乾燥と収穫が楽になるとして広がってしまっている。収穫前にかけてしまうのでその小麦にはたっぷりとグリホサートが残ってしまう。小麦だけでなく多くの作物にプレハーベスト散布されている。プレハーベストを禁止しようという声は高まっている。
 フランス政府はグリホサートのみならずモンサントを買収しようとしているもう1つの遺伝子組み換え企業バイエルのグルホシネート(バスタ)まで禁止する方針を打ち出している。これらの農薬がなくてもやっていける代替策があることも強調されている。現にEUでは3分の2の人たちがグリホサートの禁止を望んでいるという。

 こうした農薬を禁止しようという趨勢はもはや止まらないだろう。

 しかし、日本政府はその趨勢に逆らって規制緩和を行うのだろうか? 日本でもモンサントのラウンドアップ(グリホサート)の販売代理店である日産化学はラウンドアップの大豆への収穫前散布に使うプロモーションページを作って宣伝している。すでに大豆は遺伝子組み換え導入の時に一桁高い残留基準に緩和済みなので、今回の緩和対象ではない。プレハーベストされた大豆は遺伝子組み換えでなくとも遺伝子組み換えと同等のグリホサートを含んでいることが想定される。国産大豆といえとも安全とは言い切れない。
日産化学:大豆収穫前散布プロモーションページ

 さらに小麦が緩和されてしまえば、大豆以上に小麦から日本の住民はグリホサートを摂取してしまう、つまり遺伝子組み換え大豆以上に小麦が危険な食物になってしまう(グリホサートに関して言えば。遺伝子組み換えにはグリホサートなどの農薬以外にも危険因子があるが)。
もうそばもうどんも安心して食べられなくなる?

 その点では、日本が一番問題なのだと思う。グリホサートやラウンドアップがホームセンターや100円ショップで何の警告もなく、売られている。このままでは日本がもっとも危険な国になってしまう。

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