ブラジル・ミナスジェライス州で第4回アグロエコロジー全国大会が開かれる。
http://enagroecologia.org.br/
ブラジルで始まった第4回アグロエコロジー全国大会、テーマは「アグロエコロジーと民主主義ー農村と都市をつなぐ」。食と政治というところだろうか。家族農家、先住民族、キロンボーラ(黒人コミュニティ)などの運動を担う人たちが中心となり、さらに学者・学生たちの代表さらには政府関係者など合計2000人が集まる。規模は大きい。
12の中心テーマが掲げられている。あらく訳すと
1. 土地問題:先住民族の土地、伝統的住民、農地改革、紛争と抵抗
2. 市場の社会的建設:衛生と認証
3. コミュニケーションと文化
4. 水:保護とアクセスの民主化
5. 女性、フェミニズムとフェミニズム経済、暴力の撲滅
6. 食料主権、食料栄養保障、食文化と栄養
7. 都市農業と都市への権利
8. 気候変動とアグロエコロジー
9. 種子、社会的生物多様性と薬草
10. アグロエコロジーの知見の構築と農村での教育
11. 農薬と遺伝子組み換え vs 健康によい食、健康の問題
12. 若者
どれも興味深いものばかり。こうした会議は小さな地域レベルや大きな地域間レベル、さらには今回のような全国レベル、さらには国際レベルというさまざまなレベルで頻繁に開かれている。そして政策も経験の共有も深められている。
ブラジルでは大学にはアグロエコロジー学科が作られていて、アグロエコロジーを専攻する研究者、学生の数も増えている。そして、そうした人たちも農民代表と共に参加している。こうした関係も含めて学ぶべきものが大きい。
健康被害、環境破壊を引き起こす遺伝子組み換え農業をはじめとした工業型農業・食のシステムに対し、土地なし農業労働者などを含む人びとによる生態系を守る農業を通じて、食のシステムを変えていく社会の底辺からの包括的な社会変革運動であり、そしてなにより人の命を守る食・農業の実践でもあるブラジルでのアグロエコロジー、労働者党政権の崩壊により、厳しい状況にさらされているがその中でどんな大会になるのか、とても気になっている。
ブラジルのアグロエコロジー運動は現在、世界が直面している問題において、1つの方向性、提案を指し示していると言えると思う。たとえば、種子の問題。企業による種子のシステムとは異なる農民の種子のシステムの存在を認めるクリオーロ種子条項をブラジルのアグロエコロジー運動は提案して、2003年に実現、その後、包括的なアグロエコロジー政策も政府に認めさせ、アグロエコロジー推進のための予算を農村の人びと自らが加わって決定していく。まさにこれこそ民主主義と言いたくなる要素を持った政治を実現している。革新政権の崩壊後、それがどうなってしまうのかとっても心配ではあるが、しっかり根を張った動きは止まらないのではないだろうか?
一方、日本には現在は企業の種子のシステムのための法律しか存在していない状態になっている。予算も農家の思いはどこまで反映されているだろうか? それを考える時、ブラジルの動きは参考になると思う。
そのブラジルのアグロエコロジーの現在を考える上で参考となる本が昨年発行されている。“A Política Nacional de Agroecologia e Produção Orgânica no Brasil” ブラジルにおけるアグロエコロジー政策について書かれた本で出版はブラジル政府なのだが、その執筆はアグロエコロジー運動に関わる人たちが加わっており、その中の1章は農民の種子を守るためのクリオーロ種子条項について割かれている。
今後のアグロエコロジーを考えて行く中でこの本はとても魅力があるが、すべて無料ダウンロードすることができる(まだダウンロードしただけで中味は読めていない。というか全部で470ページ。簡単に読めない量…。ポルトガル語)。
この大会、参加することはできないのだけど、実は日本から参加している人がいる。会議報告はインターネットでも見ることはできるけれども、人びとの思いなどは現地で参加しない限り知ることはできない。その意味で日本から参加者がいることはとっても貴重なことだと思う。
今後の展開がとても楽しみになってきた。