数値で見る農業モデルと種子

 イデオロギー・思想の闘いは得てして不毛な結果しかもたらさない。実際に人びとの行動を変えるのはある具体的な事実であることが多いと思う。具体的な指標で比較した時、明確にその差が出る時、人びとの行動は変わっていく。
 農業生産はどうあるべきか考えてみる。
 たとえば、単位面積あたりの収穫高ではなく、栄養という指標で比較してみよう。モンサントの農薬を使う遺伝子組み換え大豆はカロリーこそさほど変わりないが亜鉛などの微量ミネラルが不足するといわれる。微量ミネラルが欠けてしまえば深刻な疾患に陥る。人の体は微量ミネラルを食から得られなければ命を保てないからだ。グリホサートはキレート剤としてそうしたミネラル分を植物が吸収することを阻害してしまう。そして体内に入ったグリホサートは他の植物に含まれるミネラル分の体内への吸収を阻害してしまうかもしれない。これに対して有機的な方法で作られた作物はそうした栄養面に対して圧倒的に有利である。
 次に、土壌に蓄えられる炭素という指標から比べてみよう。有機的な生産ではそうでないものに対して、26%多く炭素を土壌に蓄えることができる。植物による光合成によって炭水化物が地中に放出され、それが土壌の栄養となる。土壌を豊かにして、植物の共生細菌を養い、菌病から植物を守り、さらに土壌細菌がもたらすミネラル分などの栄養を植物に与え、さらに大気中の二酸化炭素を土壌に固定することによって気候変動をもたらす要因を減らすことができる。
 さらに職という面から見てみる。産直に支えられる農業は市場向けの農業に対して、地域経済を豊かにすることができる。米国の研究では産直に支えられる農業は地域で循環する割合が高く、一般市場向けに行われる農業に対して3倍以上の職を作り出すことができるという。

 世界で深刻な栄養失調状態にある。必ずしも食がなくて飢えているわけでなく、栄養に問題のある食が溢れ、糖尿病と栄養失調が共存し、悪循環に陥っているケースが増えている。世界を襲う気候変動、そして、職を失う人びと、すべて、今、解決を求めて世界がさまよっているものばかり。日本も無関係では決してない。これを食のあり方を変えることで解決可能になることがわかれば、世界は変わり出すだろう。そして、現に変わりだしてきている。
 その変革を実現する時に鍵となるのは種子である。工業的農業ではない農業を可能にするのは、そうした種子があって初めて可能になる。気候変動や社会を守る上で、種子は最優先課題にする必要がある。

WE NEED TO PUT NUTRITION AND SEEDS AT THE CENTER OF SECURITY AGAINST CLIMATE CHANGE
http://seedfreedom.info/we-need-to-put-nutrition-and-seeds-at-the-center-of-security-against-climate-change/

New Study Shows Organic Farming Traps Carbon in Soil to Combat Climate Change
Organic farms were found to have 26 percent more long-term carbon storage potential than conventional farms.
http://civileats.com/2017/09/11/new-study-shows-organic-farming-traps-carbon-in-soil-to-combat-climate-change/

Organic agriculture gives communities an economic boost
http://www.uniondemocrat.com/lifestyle/5814439-151/organic-agriculture-gives-communities-an-economic-boost

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