底が抜けた国会:農林水産委員会での種苗法審議

 本日の参議院農林水産委員会での種苗法改正案の採択、日本政府はもう底が抜けたとしか表現しようがない。農水省が立法の根拠すら満足に説明できず、現状についても十分把握していないことが明らかになったにも関わらず、採択されてしまう、この政治はいったい何なのか?
 今日の審議では、石垣のりこ議員が農家が自家増殖していた品種が海外に流出したケースは何件、何品種把握しているのかを尋ねても、農水省の返答は山形県のさくらんぼ紅秀峰の例を繰り返すのみ。散々、立法の根拠が実質存在していないことが明らかに。あいまいなヒアリングで権利関係を大きく変えることは許されるのかという石垣議員の疑問に政府側は答えることができなかった。

 紙議員は僕が衆議院で指摘した登録品種の割合についてさらに追及、農水省の説明の数字と僕が提出した数字があまりに違いすぎる、どちらが実態に近いのかを問いただした。農水省の答えは計算し直したところ、2018年のデータで登録品種は31%、一般品種は69%となった、僕の出した数字の根拠は不明だ、と。ん? 僕の出した数字はそれぞれ33%、67%。やや違うけど似た数字になった。17%より随分違う。こちらの根拠が不明なんじゃなくて、登録品種は17%しかないという農水省の言っている根拠が不明だということを農水省自身が白状したような答弁なのだけど、それでもこちらの根拠が不明なんだそうな(頭がおかしくなる)。実際にはこちらの出した33%以外にさらに新潟県などで農水省のデータでは一般品種として計算されていたものの中に登録品種が混ぜられていることがわかって、それを修正すると40%になる(この数字は検査量の中での割合なので、検査されない中の数量は不明だが、検査されるのは生産量の7割を占めている)。ここで農水省の出している数字の信頼性は完全に崩壊したというしかない。

 さらに森ゆうこ議員が自家増殖している農家の数について質問すると、農水省は自家増殖している農家はほとんどいないというありえない答弁。たびたび審議は中断したが、結局、農水省自身が自家増殖の実態を把握できていないことが明白になった。これで無理に改正法実施を強行すれば、現場は混乱するし、破綻は目に見えている。
 
 この種苗法改正問題をいまだあまり重視していない人も残念ながらいるのだが、それはやはり誤りだろう。紙議員はこの改正案は日本の農業のあり方を大きく変えてしまうと警告した。多様な農業を失い、農民が監視される国家になる、と。まったく同感だ。このまま放置すれば、日本の家族農業は生存農業(自給自足をベースとする農業)以外、生き残ることができなくなり、日本の食と農は多国籍企業のさらなる支配下に置かれることになってしまうだろう。種苗から流通まで押さえる動きが加速しているのだから。

 今、世界ではUPOV体制に変わる種苗のあり方の模索している。でも日本はその動きを一切無視して、UPOV条約ですら求めていない例外なき登録品種の自家増殖許諾制というウルトラUPOV制度とも言うべき法改正案を明日の参議院本会議で成立させようとしている。イスラエル以外、そんな制度を持っている国は世界には存在しないと農水省も認めた。本当に、日本をそんな国にするつもりなのか? そんな国に住みたい?

 果たして、対抗策はあるのだろうか? 僕はあると思う。改定案が明日成立したとしても施行日までには時間があり、それまでにできることはある。施行阻止もありうるかもしれない。それができなくてももっといいプランがある。農水省のプランよりもずっと実現性が高い。そして、それは民主的な社会を構築する上で、不可欠な基盤となり、現在、急速に大きな破壊的な波がやってきている環境や健康に対する危機への対策ともなり、未来に向けて命を守る計画につなげていくことができると確信している。
 
 まだまだその対抗策を具体性を表現できるところまで行っていないが、それは多くの人たちと語り合いながら、動きながらでなければ具体化できるものではないと思う。
 明日以降、その実現に向けてぜひ全国の人びとといっしょに動いていきたいと思う。

本日の農水水産委員会(参議院インターネット中継)

“底が抜けた国会:農林水産委員会での種苗法審議” への2件の返信

  1. 衆議院、理路整然と説明素晴らしい、お疲れ様でした。日本は誰が動かしているのでしょう。独立した国でなくなったように感じられます。めちゃめちゃ。こんな状況でも冷静で、出来ることを模索されている。感銘を受けます。もう日本は終わったと思いました。が、印鑰さんのコメントで簡単にあきらめるべきではないのだと思わされました。多くの人があなた様の健闘にこたえる行動をとることを祈ってやみません。機会あるごとに世のお母さんに食について話します。ゼン・ハニ-カットさんのような方が日本にもいますよう、諦めずに。有難う御座いました。

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