新型コロナウイルスが照らし出す日本の公共政策の貧困と差別

 ウイルスには国籍も人種も性別も思想もない。等しくわたしたち一人一人を守れなければ、ウイルスは守られていない人びとを襲うだろう。そしてそこが新たな感染源となっていく。「一人も取り残さない」社会を作るというのは単に差別がない、倫理的に正しい社会というだけではなく、ウイルス感染の危険からも一番よく守られる社会でもある。

 イタリアで感染が急拡大する原因はまだつかめないけれども、その蔓延が押さえられない1つの理由となっていると考えられることに、イタリアで地域の病院が大幅に統合、廃止されたことを挙げる人もいる。病院、医師、医療従事者が圧倒的に足りず、医療にかかれない人たちが少なくないという。
 米国では貧困層はまっとうな医療を得る機会から排除されて、一人どころか多くの人びとを取り残した社会となってしまっている。そしてその人びとが社会のシステムを支えている。どう蔓延を止められるのか、心配は大きい。公共のシステムを民営化し、アクセスをしにくくすることが私たちの社会をより脆弱に、命をより危険にさらすことになる。
 そして、日本でも病院統廃合のニュースが大きく取り上げられたことは記憶に新しい。日本の新型コロナウイルスへの政府の対応については大きな問題があることがわかっているが、もし、病院が統廃合された後にこの感染が襲ったらどうなっているか、想像しただけでも恐ろしい。残念なことに保健所の数は1980年代に比べるとすでに半分近くに減らされている(保健所設置数・推移グラフ参照)。それが今回の事態の混乱の一因にもなっているだろう。

 ウイルスは2つのことをもたらすだろう。1つは現在の社会がいかに脆弱なシステムに依存しているかをあからさまに示してしまうということ、そしてもう1つはこの危機を利用して、政治権力によって、この脆弱なシステムを変えようとする市民の動きを阻み、押さえ込めようとする危険な動きだ、と思う。

 人びとがパニックに陥る時に、その社会の日頃の無意識の差別が明らかになる。そして弱者にその暴力が向かう。それを許せば、社会はますます脆弱になる。社会が真に安全になるためには、こうした差別と暴力と向かい合うことしか方法がない。
 苦しい日々が少し続くかもしれない。でも必ず終わりが来る。そしてその苦しみをもっとも減らす最良の方法は差別と立ち向かう、そして一人も取り残さないことを真剣に考えることだと思う。

 残念ながら、現在の日本はそれとは真逆に動きつつある。明らかに異なる方向に動かす公共政策を作らなければ、命は守りきれない。政治を、進む方向を、流れを変えよう!

さいたま市、備蓄用マスクの配布対象から朝鮮幼稚園を除外

 米国ではウイルス感染のために働きに行けなくなった特に非正規や外国人住民への水道水の提供が止まって大問題になり始めている。手も洗えなければ感染は悪化するし、そもそも命の問題に直結する。水という公共サービスを民営化することの危険をあらためて浮かび上がらせている。
Coronavirus Pandemic in U.S. Fueled by Stunted CDC Budget & Lack of Access to Healthcare, Insurance

保健所設置数・推移(日本)


 この投稿のオリジナルはFacebookにしたものなのだが、Facebookから「この投稿は他の人には表示されません。Facebookの規定は、虚偽の広告、詐欺、セキュリティ問題などを防ぐためのものです」という警告が来たためにブログに移した。どこに虚偽の広告や詐欺、セキュリティ問題が存在するというのだろう? 

Facebookによると
• 収入を得るために人為的にコンテンツ配信を増やしている
• 表示する前に、コンテンツを「いいね!」、シェア、またはおすすめすることを必須としている
• 他のユーザーになりすましている
ということに当たるというのだが、Facebookの投稿で収入はまったく得ていないし、配信など1日に1つ出すのがせいぜいであり、他人が「いいね!」、シェアするのはもうお任せするのが当たり前であり、依頼した事実もない。他のユーザーになりすましているというのもまったく無関係。自分の名前で自分が書いているだけの話。

 さらにFacebookはこうも書いている。
「紛らわしい情報や不正確な情報を使って「いいね!」やフォロワー、シェアを集める行為を禁止しています。」

 紛らわしい情報や不正確な情報とは何なのか? 誰が紛らわしい、正確な情報と判断するのだろうか? 保健所の数は実際の数字だし、さいたま市で起きたこともまぎれもない事実である。それをもとに意見を述べることは言論の自由で当然のことである。情報の何が正確であり、不正確であるか、誰が判断するかが大きな問題となる。政府や企業にとって都合の悪い事実をすべて「不正確な情報」と決めつけ、排除してしまうのであれば、これは検閲ということになる。

 ウイルス関連ではデマ情報によって、市場に混乱を引き起こしたり、差別が助長される可能性がある。それではこの投稿はそのような市場に混乱をもたらすような情報を含んでいるのだろうか? 差別を助長する可能性があるのだろうか?

 何をもとにこんな警告が来たのか、考えられることの1つは、単語の自動解析で、問題ある可能性がある、ということでひっかかった可能性が考えられる。人的にすべての投稿をチェックすることは不可能なので、自動的に機械的に分析して、それでひっかかるものの表示を止めてしまうということか(現状では処理中となっていて表示はされている)。

 デマによる被害を止めるために、到底すべての投稿を人的に読んでチェックすることは不可能だから、こうした処理がされる必要が出てくることは理解しうる。そしてそのアルゴリズムが全然優れていないために、まったく見当外れのチェックがされてしまう、ということに過ぎないということであろうとは思うが、特措法の成立も考えれば、SNSからこうした情報が一切排除されてしまう可能性も今後、考えざるをえないのかもしれない。

[追記]シェアした人のもとにも規約違反の警告は送られていることがわかった。その措置に不服を申し出ることができて、オプションと表示されたリンクをクリックしていくと、措置に承服しないという選択肢がある(とてもわかりにくい)。それを選んで送信することで、不服を受け付けるという仕組みになっているようだ。不服を申し出る人が一定数いれば、この措置は自動的に解除されるのか、後ほど、この違反警告は表示されなくなった。でも間違った措置であったわけなのだから「この措置は取り消しました」と通知すべきだろう。多くの人に違反警告だけが送られ、いつの間にか消えている。多くの人たちには「違反したんだ」という印象だけが残り、それは訂正される機会もないかもしれない。
 人力でチェックすることはできないから、こうしたシステムを作るという必要性そのものは理解できるが、このシステムが誤ったイメージを作り出し、言論空間を歪めかねず、Facebookはこのシステムを改良すべきであろう。

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