「みどりの食料システム戦略」を進めるために今国会で成立した「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」に関わる施行令、つまり、法律を受けて、農水省がこの政策を実施する省令に関するパブコメの締め切りが迫ってきた(5月31日)(1)。 “「みどりの食料システム戦略」パブコメ締切迫る” の続きを読む
Omnigenics(オムニジェニックス)の理解は今後の鍵
なぜ「ゲノム編集」や遺伝子組み換えでは画期的な品種が作れないか、生命の遺伝子発現の仕組みを知ることが重要になる。
「ゲノム編集」や遺伝子組み換えの遺伝子工学においては、1つの遺伝子は1つの機能を持つ。だから、生命の機能をバラバラの部品のようにして、それを組み立てる工学モデルを作る。合成生物学ではすでに自動車の部品のように特定の機能を持つパーツまでが作られている。それを組み合わせれば合成生物のできあがりとなる。ただ、その工学的発想で作れるのは単純な合成生命に限られる。この発想は半世紀前、遺伝子が発見された頃、考えられた古いもので、現在、研究が進む実際の遺伝子発現においては、この想定とはまったく違ったことが起きていることがわかってきている。 “Omnigenics(オムニジェニックス)の理解は今後の鍵” の続きを読む
「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する
「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する。そして地下水、食も。
自然では分解することのない合成化学物質PFAS、耐熱、耐水、汚れ防止などのためにさまざまな製品に使われるが、人体には有害でがん、甲状腺異常、肝臓障害、出生異常、免疫抑制など広範な健康被害の可能性がある。米軍基地がその汚染源となっているが、工場から排出されている可能性もある。
しかし、基地も工場もない農村がこのPFASに汚染される。その原因は肥料として用いられる下水汚泥。つまり工場排水などでPFASに汚染された水が下水に流れ込む。下水処理場の処理で水は浄化されるが、汚泥の中にPFASは残留する。その汚泥が肥料として使われている。米国の市民団体EWGは米国の農地2000万エーカーがPFASに汚染されていると推定されると4月に発表した(1)。2000万エーカーは約800万ヘクタール、日本の全農地の倍近い農地がPFASに汚染されてしまったことになる。汚染された農地では地下水も汚染され、閉鎖を余儀なくされた農場も出ている。 “「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する” の続きを読む
世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策
憂慮すべき動きが連続する。EUが来年に向けて「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認める方向に動き出したが、カナダ政府は先週、米国同様、2ヶ月のパブリックコメントの後に、多くの市民の反対を無視して「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認めた(1)。そして、EUから離脱した英国は新法案で「ゲノム編集」などのバイオテクノロジー技術の推進を定めようとしている(2)。
なぜ憂慮すべきことかというと、この動きがまったく科学的な精密さを欠いているからだ。遺伝の機構はようやく解明の端緒についたばかりのところであり、人類は遺伝子の機能も十分にはつかめていない。その段階で遺伝子破壊を進めてしまえばどんな影響が生態系に現れるのか、まったく不明の状況にある。研究者も警鐘を鳴らしている(3)。 “世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策” の続きを読む
March against Monsanto/住友化学
今日は世界各地でMarch against Monsanto(1)。 “March against Monsanto/住友化学” の続きを読む
アイウトン・クレナッキ『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア』
とても大事な本が出た。アイウトン・クレナッキ『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア』国安真奈訳(中央公論社)(1)
タイトルそのものの本だと思う。今、多重の同時危機が世界を襲う中、まさにこのアイデアが生かせるかに私たちの未来がかかっている。でも、ノウハウ本ではない。彼の語る短いエッセイを受け止めて、我が物にできるかどうかにかかっている。
アイウトンはブラジルの先住民族クレナッキのリーダーだ。 “アイウトン・クレナッキ『世界の終わりを先延ばしするためのアイディア』” の続きを読む
年金が世界を破壊する
世界で多くの人がパンデミックによる不況に苦しんでいる。それに加えて、ウクライナ危機による食料危機が襲っている。そんな非常時にも関わらず、多国籍企業は史上最高益を享受している。それだけでも非条理な事態なのに、それらの企業が嫌がっていた気候危機や生物絶滅危機に対する対策はどこかに吹き飛ばされ、多国籍企業はさらに利益を積み重ねることに邁進している。このままでは危機はさらに深刻化する。危機に対処できる時間は限られているのに、対処するどころか、対策を吹っ飛ばして、さらに危機を深刻にする破壊的な事業に巨額の資金が投入されている。いったい、その資金はどこからきているのか? その最大の資金は実は私たちの金なのだ。年金。私たちの老後を守るはずのお金が地球環境を破壊するために使われている。 “年金が世界を破壊する” の続きを読む
モンサントの後は住友化学?
モンサントの農薬ラウンドアップはもう終わった農薬にならざるをえない。訴訟が大変だから、つまり健康被害が確定的だから、というのが1つだが、もう一方で雑草に耐性がついてしまい、もう長年大量散布した地域では効かなくなってしまったからだ。これは大事件であって、現在の遺伝子組み換え作物の大半はラウンドアップ耐性が売り物。これが売れなくなれば遺伝子組み換え作物は急速に衰える。それではラウンドアップの代わりは何なのか? 実はこれがない。だからベトナム戦争の時に使われた枯れ葉剤の主成分である2,4-Dを混ぜたり、同様に古いジカンバという農薬を混ぜたりするのだが、どちらも被害がひどく、訴訟が増えるだけ。耐性ついてしまうので、農薬使用量も増えてしまう。ここで合成化学物質で自然を制御することの無意味さに気が付かなければならないし、それと一体化した遺伝子組み換え作物を終わらせる時期に今、来ている。
ところがここまでわかってきているのに新たな試みをしようとする企業がある。やめておけばいい話だけど、そんなことをやろうとしている企業はなんと日本の住友化学。 “モンサントの後は住友化学?” の続きを読む