やはり遺伝子操作食品に未来はない その3: 細胞培養食に警戒を!

 前の投稿で遺伝子組み換えサーモン開発企業や「ゲノム編集」作物開発企業が続々と破綻しようとしている状況を見た。遺伝子組み換え企業は大きな壁にぶち当たり、アフリカやアジアへの浸透や小麦や米などの主食に入り込もうと最後のあがきをしているのが現実だと言えるだろう。それではこうした遺伝子操作食品は今後、どうなるのか?
 
 今後のシナリオとしては3つあると考える。
1. 消費者が「ゲノム編集」食品を受け入れてしまい、バイエル(モンサント)などが農薬・害虫耐性「ゲノム編集」作物を次から次へと出すシナリオ。
2.「ゲノム編集」ということは後景に退け、フードテックを前面に打ち出し、「ゲノム編集」はもちろん、従来の遺伝子組み換えやRNA干渉、合成生物学などの遺伝子操作技術をフルに用いた細胞培養による食品を出していくというシナリオ。
3. 遺伝子操作技術を使わない自然の力を最大限に生かすというシナリオ。
 
 1の可能性は以前残っていて、今後、「ゲノム編集」作物が出てくることは当然警戒せざるをえない。
 現在の勢いを考えると2のシナリオには相当警戒しなければならないことになる。というのも、米国食品医薬品局(FDA)がゴーサインを出したUpside Foods社の細胞培養肉に関してFDAは規制する意思を放棄している。これではその製造に関する詳しい情報を消費者はまったく知ることができない。「ゲノム編集」食品が作り出した、政府が規制しない遺伝子操作食品に関する方針がそのまま新たな細胞培養食に受け継がれてしまう可能性がある。
 
 しかし、この細胞培養食とは、言ってみれば究極の人工合成食でありジャンクフードなのだけど、宣伝は洗練されている。発酵文化は日本食でも重要な位置を占めるが、この細胞培養食はその最新バージョンであるとして「精密発酵」などとしてあたかも自然なプロセスをさらに進めたかのようなイメージで宣伝して、その不自然さを塗りつぶすのだ。「細胞培養技術を使えば、気候危機や食料危機もこれなら解決できます」と。しかし、現実はその逆で生態系の循環を無視した人工合成食の生産は多重危機を深刻化させるだけだ(1)。
  
 問題は多岐にわたる。発酵タンクを作って置いておけば、勝手にブクブクと食が沸いて出てくるというわけにはならない。当然、遺伝子操作生物を入れたタンクにさまざまな栄養を注ぎ込まなければならない。その栄養をどう作るかが問題で、それが遺伝子組み換え大豆やトウモロコシ、サトウキビになるかもしれない。壁にぶつかった遺伝子組み換え農業が息を吹き返す。
 そして、さらに大きな問題が廃棄物だ。自然な発酵であれば素材は自然に帰る。しかし、合成生物学で作られた発酵物に使われたバイオマスの9割はこれまで自然界に存在したことのない生物を含むため、そのまま廃棄すると環境に悪影響を与えるので不活性化しなければならなくなる。こうした生産が拡大していけば、何十億トンの有害廃棄物が作られてしまう。
 
 自然なサイクルでできたものを、伝統的に発酵させるのであれば起きない問題がこの「精密発酵」では生み出されてしまう。原発が核廃棄物を作るように、フードテックは環境に破壊的影響を与える廃棄物を生み出す。
 
 気候危機や生物絶滅危機に直面する中で、どうしてこのようなフードテックにお金を注ぎ込むというのは到底、常軌を逸した行為といわざるをえない。それにも関わらず、このフードテックが気候危機対策などとして急速に莫大な投資を集めている。
 
 そして、それが「自然な」新しい発酵食品として何も表示せずに自然食品として売り出されていこうとするだろう。
 
 南の貧しい国にも発酵タンクを作らせれば食が作れるという。ビル・ゲイツのような「慈善家」がそのタンクの設置を貧困国に勧めている。でもそのタンクから生まれる生産は極少数の企業が特許を持っている。食もすべて特許で支配できてしまう。マイクロソフトのOSを通じて巨額の富を築いたように、特許を持つ食の生産を支配的にしてしまえば、世界を支配できてしまう(2)。
 
 この究極の人工合成食に対して、どのように対抗していくべきか、早急な対策を考える必要がある。そして、そうではない、本当の意味で生態系を守る食のシステムを構築できるのか、道筋を作り出していく必要がある。その食は今年からすでに販売が開始されている。急いで考える必要がある。
 
 
(1) Wake-Up Call for Organic Advocates: Synbio Poses Greater Threat than Old-School GMOs
https://www.organicconsumers.org/blog/wake-call-organic-advocates-synbio-poses-greater-threat-old-school-gmos

(2) Lab-grown food is no way to nourish the planet
https://www.theguardian.com/food/2022/nov/28/lab-grown-food-is-no-way-to-nourish-the-planet

The Future of Food: GMO 2.0 promises fall short
https://www.newhope.com/market-data-and-analysis/future-food-gmo-20-promises-fall-short

Synthetic Biology – The Future of Food?
https://www.environmentalhealthsymposium.com/blog/synthetic-biology-the-future-of-food

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