コカコーラのジュースからPFAS。農水省の下水汚泥利用に声を

 昨年末、コカコーラ社のジュース(Simply Tropical Juice)に永遠の化学物質と言われるPFASが含まれているとして、集団訴訟がニューヨーク連邦裁判所で起こされた(1)。PFAS汚染は米軍基地から大量に消火剤などから出されて沖縄や東京など軍事基地のある周辺で大問題になっているが、このPFAS、化粧品から梱包材、農薬など広範に使われていて、大問題だが、”All Natural”を売り文句にしているジュースにも含まれているとすると深刻。
 どのような経緯で入ったのか、農薬経由か地下水からか、経緯がわからないが、今後、PFAS汚染がどこまで及んでいるのか、調べていく必要がありそうだ。
 
 ウクライナへの戦争で急騰している化学肥料の対策として農水省が下水汚泥を肥料原料とする対策を打ち出して、国交省などと検討を続けている(2)。基本的に安全な糞尿を循環させるということができるのであればそれはいいアイデアだろう。もし、これがたとえば抗生物質なども使わず、飼料にも気を配る畜産農家の支援につながり、小さな循環を可能にする地域小規模循環を支援する計画であれば、地域経済にも効果的な取り組みとなりうるはずだ。
 
 でも、農水省と国交省の検討会は一切非公開であり、そのメンバーを見ると、広域の下水汚泥の活用を前提とした大きな規模の取り組みをしようとしているように見える。広域下水となると、広範な範囲で使われているPFASが下水汚泥に含まれてしまうことが避けられない。
 
 昨年、米国のメイン州は下水汚泥を肥料に使うことを禁止した。米国では日本の農地の倍近い800万ヘクタールがすでにPFASに汚染されてしまっており、その汚染ゆえ閉鎖しなければならない農場まで出ているという。だからこそ、汚染を拡げないために下水汚泥の利用が禁止された(3)。
 
 だから下水汚泥の利用をするのであれば、それが小さな範囲で安全が確認されたものに限るべきなのだ。それ以外の広域の下水汚泥を利用するというのはあまりに無謀だろう。「永遠の化学物質」で農地が汚染されてしまったら、取り返しがつかない。自分の農地は使わないから大丈夫という話にならない。上流の農地で使われてしまえばその汚染に影響される可能性は十分ある。
 
 農水省は下水汚泥の利用に関して重金属については基準を設けているがPFASについてどう取り組むか、まったく不明である。議事録を読んでもPFASへの言及が一言もない。放射性物質の汚染とPFAS汚染はその長期的影響を考えればもっとも注意すべきことであろう。戦争で一時的に化学肥料が跳ね上がったから急いでやる、とやってしまえば、その影響は後々まで続いてしまうことになる。最近、米国ではPFASに関する基準が厳格化された。その被害の大きさが認識されたからだろう。しかし、日本ではまだ十分な対策は練られていない。
 
 このような重要なテーマであるのに、検討会はなぜ非公開なのか、農水省の対応もマスコミの対応もひじょうに疑問だらけである。
 
 検討会は公開すべきだし、使われようとしている下水汚泥にどれほどPFASが含まれているか、しっかりとした形で検証することは最低限必要だし、これ以上に小さな地域循環を可能にするもう1つのあり方を検討していくべきだろう。
 
(1) Coca-Cola class action claims Simply Orange contains forever chemicals
https://topclassactions.com/lawsuit-settlements/consumer-products/food/coca-cola-class-action-claims-simply-orange-contains-forever-chemicals/

(2) 下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/221018_1.html

(3) 「永遠の化学物質」PFASが農地を汚染する

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