モンサントとリン鉱山汚染

 ラウンドアップ(グリホサート)の有害性についてはずいぶん勉強してきたつもりだったけど、まだまだある。今日、初めて、理解したこと。その前にまず、復習。植物や腸内細菌が持つアミノ酸を作る経路(シキミ酸経路)を損なう。これが大きな問題。さらにキレート効果を持っており、ミネラル分を剥ぎ落とす。ミネラル不足の原因を作る。そして、体内に入ると神経毒として機能する。ガン化のチェック機構を狂わせ、ガン化を防げなくしてしまう、精子の生育を妨げる…。
 でもそれだけじゃなかった。グリホサートの化学式を見るとPがある。これはリン。グリホサートをどうやって作るためにはリン鉱山からリンを持ってこないといけない。ところがこのリン鉱山は多くの場合、ウランやラドンなどの放射性物質、ヒ素と混在している。つまり、ラウンドアップを作るために、地下に眠らせて置いてほしい有害な重金属がいっしょに引き出される。原発を作るためのウラン鉱山が実はこのリン鉱山も兼ねていることは多い。
 だからラウンドアップは製品になって、それから環境を汚染するだけではなくて、製品作る前の原料を集める段階から環境を汚染してしまう。 “モンサントとリン鉱山汚染” の続きを読む

急ピッチで進む「ゲノム編集」魚流通に向けた調査会

 日本政府が「ゲノム編集」食品の普及に躍起となっている。政府が戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で税金をつぎ込んでその開発をプッシュした「ゲノム編集」トマトの種苗の一般市民への配布が始まろうとしている。次に目論むのが「ゲノム編集」魚なのか、厚労省は2月10日に最初の調査会を開いたと思ったら、3月17日は3回目がすでに行われている(1)。なぜ、こんな急ピッチなのか? その内容も前の投稿のようにとんでもない内容のもの。こんな形式的な調査だけで日本で「ゲノム編集」魚を流通させようというのだろうか? “急ピッチで進む「ゲノム編集」魚流通に向けた調査会” の続きを読む

在来種の野草を育てることの意味

 ミツバチも、鳥も激減している。国連関連組織もあと30年で100万種の生物が絶滅すると警告している。30年後に突然それはやってくるのではなく、毎日数多くの生物がすでに姿を消しつつある。このままでは人類にとっても生存はさらに危機的になる。
 でもこのシナリオは変えることができる。その最も有効な手段の1つが家庭菜園。庭やベランダでその地域在来の野生の草花を育てることがとてもいいという。草ならなんでもいいじゃない、チューリップの方がきれいだし、というわけにはならない。というのも多くの昆虫は特定の植物でしか生きていけない。たとえば北米を象徴するオオカバマダラという蝶は現在、絶滅の危機に瀕している。その原因は米国で大量に撒かれるモンサント(現バイエル)のラウンドアップがオオカバマダラの幼虫が食べるミルクウィード(トウワタ)を枯らせてしまうので餓死してしまうからだ。
 だけど、逆にこのトウワタをオオカバマダラが産卵する地域の家庭菜園で栽培してあげれば絶滅を防ぐことができる。だから、家庭菜園はその地域の生物多様性を守るオアシスになりえる。農薬使わない野生の草花を育てる人は彼らの守り手、ヒーローになれるということ。 “在来種の野草を育てることの意味” の続きを読む

有機農業の離陸と公共調達政策

 公共のお金(税金)が何に使われるべきか、特に公共調達と言われる部門。学校給食がその典型。税金を人びとのために使うのは当たり前であるべきなのだけど、実際に巨大企業に流れるように変えられつつある。水道の民営化がそうであるように。
 人びとの目が行き届かないところで、人びとのお金が巨大企業に吸い込まれる。サービスは悪化し、高くなる。これを民主化して、人びとが望む方向に変えようという動きは今、世界各地で、地方自治体中心に大きくなりつつある。
 一方で、この公共調達分野、特に学校給食の分野ではかなり前から世界各地で取り組みが始まっている。その端緒はEUが2008年に緑の公共調達(Green Public Procurement)を始めたことだろうか? EU諸国では公共調達での有機化目標を定め、これがその国での農業の有機化を進める上で底上げする力になっている(1)。 “有機農業の離陸と公共調達政策” の続きを読む

「みどりの食料システム戦略」とRNA農薬

 2050年までに有機農業を25%にするという目標を日本政府は立てた。「みどりの食料システム戦略」である(1)。有機農業の目標を立てたことは重要。もっと押し上げなければならない。しかし、この戦略には2つの大問題が隠されている。
 1つは化学農薬や化学肥料による農業からバイオテクノロジー、遺伝子操作技術による農業に転換しかねないこと、もう1つは日本だけ市場原理主義になっていること。
 気候変動の激化だけでなく、生態系の崩壊が急速に進んでおり、有機農業・アグロエコロジーを急速に転換することは今後、不可欠であり、不可避の政策にならざるをえない。今回の戦略はその危機を利用して、この転換期を化学農業から有機農業・アグロエコロジーへの転換ではなく、バイオテクノロジー農業への転換に使おうとしている。まず、それが最初の大問題。詳しく見たい。
 
 2050年までに化学農薬の使用量50%削減目標。世界で日本だけが規制緩和を続けてきたネオニコチノイド系農薬を転換させるという。大転換だ。いいことのように見えるが、但し書きに注目。「リスク換算で50%」、つまり「安全な」農薬を開発して、それに移行させればいいことになる。でも果たして安全な農薬は存在しうるか? その新規農薬とは何なのか? それはRNA農薬。 “「みどりの食料システム戦略」とRNA農薬” の続きを読む

未来の種子のシステムはどんなもの?

 未来を先取りしたいと思わないだろうか? 気候変動の激化や生物大量絶滅が危惧されている中で、それへの解決策が示せれば世界に大変な貢献ができることになる。そんなわくわくするような試みがあちこちで行われているものの、それをすべて潰してしまうようなおかしな政治がわたしたちの前に立ちはだかる。それは産業の発展も阻害する。 “未来の種子のシステムはどんなもの?” の続きを読む

国連食料システムサミット:多国籍企業による国連乗っ取り

 国連を多国籍企業がジャックする? 今年はかつてないほど食のシステムをめぐる激突の年にならざるをえないだろう。忘れないでほしいのはこの流れを作り出している底流は世界の有機農業・アグロエコロジーの実現をめざす動きであること。それは世界大に広がり、市場も各国政府の政策も変えつつある。これに脅威を感じて反撃を始めているのが化学企業/遺伝子組み換え企業。市民の力は大きいのだ。
 モンサント(現バイエル)や住友化学が作るCropLifeがFAOにすり寄ることに成功したことを先日報告した(1)が、こうした動きはこれに留まらない。今年9月に国連は食料システムサミットの開催を予定している(2)が、その責任者に担当されたのはなんとビル・ゲイツ財団が設立したアフリカ緑の革命同盟(Alliance for a Green Revolution in Africa、 Agra)の代表。アフリカの農民から種子を奪って、遺伝子組み換え種子や農薬・化学肥料を押しつけるための組織と言っていいだろう。そして、その発表されたサミットのコンセプトペーパーには精密農業、メガデータ、遺伝子組み換え技術、多国籍企業が売り込みをかけている言葉が並ぶ(3)。 “国連食料システムサミット:多国籍企業による国連乗っ取り” の続きを読む

「ゲノム編集」神話と現実

 「ゲノム編集」による遺伝子操作について、日本語圏では推進派の情報が大量に流されている。「ゲノム編集」はその中心的技術であるCRISPR-Cas9がノーベル化学賞を取るなど、遺伝子の機能を探求するためには画期的な技術であることは疑えないが、それを使って農作物や家畜を作るというのはとんでもない短絡である。にも関わらず、それが画期的な品種改良方法であるかのような情報がマスコミや高校などでも使われており、大いに懸念せざるをえない。
 そんな中で「ゲノム編集」とはどんな技術で、食に適用をすればどんな問題が起きるか、欧州議会のGreens/European Free Allianceが60ページ超のわかりやすいガイドブック『ゲノム編集−神話と現実』をまとめた。全文無料でダウンロードできる。 “「ゲノム編集」神話と現実” の続きを読む