抗生物質としての農薬。農薬が耐性菌を生み出している

 植物が自分が生きるために作り出した光合成によって作り出した炭水化物、それを植物は土壌微生物に提供する。そして土壌微生物は植物が生きるために必要とするミネラルを提供する。植物と微生物の共生関係、これは尽きない興味を生み出す。莫大な量の微生物が植物を、そしてわたしたちの命を支えている。まだ人類はこの共生関係のほんの一部しか理解できていない。この共生関係はわたしたちの命の根拠であり、そして危機にあるわたしたちを守る解決策でもある。
 この共生関係がどのように破壊されてきてしまっているか、研究が進んでいる。まず化学肥料がこの共生関係を断ち切る。微生物によって守られていた植物が雑草に負け、菌病などに犯される。そして農薬が不可避となっていく。この農薬は問題の解決とはならず、さらなる悪循環を作り出す。
 
 モンサント(現バイエル)の農薬ラウンドアップ(主成分グリホサート)などの農薬は抗生物質作用を持つ。モンサントはグリホサートを抗生物質として特許を取っているくらいだ。モンサントはグリホサートは土壌に入ったら、すぐ微生物に分解されると説明していたが、実際には逆に微生物の活動を抑えてしまうため、その散布はわずかな量でも土壌の微生物の環境を大きく変えてしまう。土壌の中に抗生物質耐性菌、つまり薬が効かない菌が生み出される(1)。これは人への感染症の脅威にもなりうる。 “抗生物質としての農薬。農薬が耐性菌を生み出している” の続きを読む

「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ

 またパブリックコメント、しかもひどいパブコメなので意気消沈、読む気もしないと言われるかもしれないけれども、書かざるを得ない。日本政府は2019年10月に「ゲノム編集」農作物を実質的に申請・承認プロセスを経ずに、安全性の検査もないまま、「同断・届け出」という奇妙な仕組みを作って、表示などの規制もせずに生産・流通させることを認めた。
 もっとも問題なのは、最初の「ゲノム編集」種苗は相談・届け出を求めるけれども、その種苗を親として交配させた後代交配種(つまり「ゲノム編集」種苗の品種同士、あるいは「ゲノム編集」種苗と従来の種苗とかけ合わせてつくった子の種苗)は届け出しなくていいとしたことだ。
 届け出すらしないのだからもう規制も不可能になる。従来の作物とまったく区分ができなくなってしまう。そうすれば反対すらできないだろう、というバイオテクノロジー企業の悪知恵をそのまま受け入れたわけだ。

 しかし、それを飼料に使う場合についてはパブコメで批判が殺到し、農水省も後代交配種でも形質が変化した場合など一定の条件の場合は届け出が必要とすることに昨年2月に方針転換した。でもその方針が使われることは一度もないまま(1)、早くも農水省はさらに方針転換して、その決定を反故にして、後代交配種は一切届け出不要に変えるとしたのだ。それが3月5日に締め切りとなるパブコメで示された方針なのだ。あまりに異例の朝令暮改的迷走だろう。よほどバイオテクノロジー企業から圧力を受けたのだろう。
 怒って当たり前のことをやっているのだけど、マスコミは報道しない。そんな中、粛々とバイオテクノロジー企業のための政治がまた進もうとしている。でも、黙ってられないから、以下のコメントを送る(2)。 “「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ” の続きを読む

国連を乗っ取ろうとする多国籍企業

 世界が有機農業・アグロエコロジーの方向に向かっていることは間違いない。ここ20年近い間に有機市場は5.5倍近い急拡大をしているだけでなく、国連FAOも生態系を守る農業アグロエコロジーの普及を2013年から掲げており、ラテンアメリカ、アフリカ、そしてフランスや英国各国などでもアグロエコロジーを政策に取り込み始め、農薬や化学肥料の使用の規制も始まっている。農薬・化学肥料は生物の絶滅、土壌の劣化・損失や気候変動を激化させる原因としても注目され、大幅に減少させることが国際的に求められる状況になってきた。
 農薬、化学肥料、遺伝子組み換え種子を手掛けるアグリビジネスにとって、大きな敗北は2010年以降、国連までもがアグロエコロジー推進に進んでいったことだろう。しかし、彼らは黙って歴史の舞台から下がろうとしてはいない。それどころか、今、国連FAOを乗っ取るばかりの勢いでロビーを重ねている。 “国連を乗っ取ろうとする多国籍企業” の続きを読む

バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府

 「ゲノム編集」作物の飼料としての取り扱いに関するパブリックコメント(既報)の締め切り(3月5日)が迫ってきている(1)。
 今回のパブコメについては2月4日にまとめているのでそれを参照していただくとして(2)、今回のポイントは以下
・ 日本政府は「ゲノム編集」された作物を親として交配させた品種(後代交配種)は届け出すら不要としている
・ 飼料としてそうした作物を用いることに対して行われた2019年9月開始のパブリックコメントに批判が殺到→農水省は2020年2月7日に後代交配種で一定の変化が出たものは届け出を求める方針を出す(3)
・ パブコメを受けて変更した政策を今回のパブコメではひっくり返し、後代交配種の届け出を一切不要とするもの “バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府” の続きを読む

父の仕事

 2月11日に旅立った父親の告別式が昨日終わりました。実家に行くと、父が残していた記録が出てきて、それをなんとか残しておきたいと思いました。父親は橋の設計技師で災害で流されるなどで失われた橋の応急橋を設計し、実際に設計だけでなく建設の現場に足を運んでいました。 “父の仕事” の続きを読む

「ゲノム編集」食品ボイコットに向けた動き

 本当に今、目を覚まさないと。大事な分かれ道が目の前にある。目もくらむような変化が起きようとしている。どんな変化か?
 Covid-19の蔓延で世界が苦しむ中、有機農業・アグロエコロジーの発展はめざましい。英国では2020年12.6%も有機市場が拡大したという(1)。米国ではなんと14パーセント(2)。新型コロナウイルスの出現は消費者の行動をも大きく変えつつある。
 2018年にフランスのシンクタンクIDDRIは2050年のヨーロッパの農業と食のあるべき姿を提示した。アグロエコロジー、生態系の原則に基づく農業に転換させることで化学物質の投入を段階的になくして、土壌や微生物を守りながら、増加する人口を健康な栄養で支え、慢性疾患にも対応できるというものだ。2050年にはこの100年間近く、世界を苦しめた化学物質にはもう頼らない時代にできるのかもしれない。そのために今、やるべきことが検討されている(3)。気候変動も和らぎ、生物大量絶滅というシナリオも変えられるのかもしれない。次の世代への大きな希望が見えてくる。
 しかし、もう1つの恐ろしい道が大きな口を開けて構えており、わたしたちを呑み込もうとしている。それはBrexitでEUを離脱した英国で鮮明に現れている。EUの厳しい遺伝子組み換え規制からも離脱しようというのだ。 “「ゲノム編集」食品ボイコットに向けた動き” の続きを読む

アマゾン破壊を資金的に支えているのは日本人の年金!

 アマゾンが焼かれている映像に心を痛めている人は多いと思う。あの大規模な破壊の背後にはアマゾン森林を燃やしてそこを牧草地に、場合によっては家畜の餌にする大豆栽培畑にしようとする勢力がいる。でもそれには金がかかる。それに投資しなければ破壊は進まない。
 でも、その資金が日本の年金から出ているとブラジルのNGOが告発している。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)から膨大な投資がJBSに向かっている。JBSはブラジルの企業だが、今や世界最大の食肉企業であり、これまでもアマゾン破壊への関与で世界から大きな非難を受けてきた。その企業にわれわれの年金がつぎ込まれ、われわれの老後はアマゾン破壊から上がった利益で支えられるのか? “アマゾン破壊を資金的に支えているのは日本人の年金!” の続きを読む