相次ぐ「ゲノム編集」解禁の動きと対抗策

 インドは「ゲノム編集」食品(ただし植物のみ)の緩和を決めた。しかも、外来からの遺伝子も塩基も挿入しないSDN-1だけでなく、数塩基を挿入するSDN-2についても認めるという。この決定は科学的な根拠に基づかず、無責任なものだという非難があがっている(1)。
 インドだけではない。アフリカでも「ゲノム編集」作物の緩和圧力がかけられている(2)。ヨーロッパで「ゲノム編集」卵が、米国で「ゲノム編集」牛が出てこようとしている。そして中国は世界のトップの「ゲノム編集」農業特許を保有している。「ゲノム編集」生物には従来の遺伝子組み換え生物でも生まれないリスクが起こりうる。その実証は一切せずにバイバスして議会や市民・農民との協議もなく、いきなり栽培開始、市場流通させるというのはあらゆる意味で反科学であり、反民主主義であり、許されていいものではない。

 「ゲノム編集」農業はもう避けられない道なのか? すでにその有用性には根本的な疑義が表明されている。遺伝子操作技術では複雑な遺伝機構は改良できず、むしろ従来の品種改良に劣るという指摘だ。実際にこれまでの遺伝子操作技術で成功したのは農薬をかけても枯れない除草剤耐性と害虫を殺してしまう害虫抵抗性遺伝子組み換え作物だけ。どちらも単純な機能しか持っていない。しかもそのどちらの機能も数年経つと、雑草や害虫が耐性を持つので意味を失ってしまうという。結果的に何もいいものがないのが遺伝子操作作物ということになる。

 しかし、社会に役に立たないものでも、市場独占に使えるものであれば多国籍企業にとっては意義が見出されてしまう。そして社会は大きくその負の遺産に苦しむことになる。この20年間で種子市場の独占は急速に進み、過半数の市場をわずか4つの遺伝子組み換え企業が独占している。

 また現在の動きは単純に遺伝子組み換えから「ゲノム編集」へと移るというものでもなく、従来の遺伝子組み換え作物をさらに規制緩和させる動きが伴っていることに注意する必要がある。米国では実質的に遺伝子組み換え作物の規制をなくす方針をトランプ前政権が打ち出し、それが現政権に受け継がれている。

 そして、世界では人が直接食べる主食の遺伝子組み換え作物の栽培が始まっている。アルゼンチンの遺伝子組み換え小麦はひどい失敗になりそうだが、今年、フィリピンでは遺伝子組み換え稲(ゴールデンライス)の栽培が大幅に拡大されてしまいそうだ(3)。アフリカでも遺伝子組み換えササゲ豆の栽培が承認されてしまっている(4)。

 このような中、どう対処できるか? 食を遺伝子組み換え技術・企業から守るためにはどんな方法が取りうるだろうか? 当然、厳格な規制と表示義務の導入を政府に要求していくことは必要だが、政府自身の民営化(政府の中枢に民間企業が直接入り込む)がグローバルに進んでいる中、規制政策の実現には時間がかかりそうだ。そんな中で有効な方法と思われるのが、安全リスト方式だ(いわゆるホワイトリスト。ホワイト/ブラックという言葉は避けたいので安全リストととりあえず表現してみた)。

 つまり、遺伝子組み換え表示義務(いわゆるブラックリスト)がうまく機能しない中、これは安全と確認できる、遺伝子操作されていない安全なものをリスト化して、選べるようにしていくこと。実際、種苗にこれを作らなければ有機認証は崩壊してしまう。知らないうちに遺伝子操作作物を育ててしまえば、有機農業が有機農業でなくなってしまう。世界の農業で一番、拡大しているのが有機農業であり、その点、その根本が崩れてしまう大変な話だ。

 でも、EUでは有機農業のタネも認証が必要なので、その安全リストはすでに確保されている。米国にも有機種苗会社は急成長を遂げている。もっとも問題なのが日本だ。日本では政府は有機種苗の生産にまったく無関心で、民間の有機種苗生産事業者がいくつかあるだけ。有機種苗を軸に、遺伝子操作されていない種苗(有機でないものも含む)のリスト作成の制度作りを国会で早急に行う必要がある。これにはニーズもあるし、可能なはずだ。

 遺伝子操作されていない種苗のリスト作りを急速に進める必要がある。そしてそれはいわゆる種苗会社だけでなく、家庭菜園でもできることである。日本に存在するさまざまな植物、遺伝資源を家庭菜園や地域の圃場で育て、守る活動とそれを支える政策が必要になる(5)。

(1) Concerns as India relaxes rules around gene-edited crops
https://theecologist.org/2022/apr/04/concerns-india-relaxes-rules-around-gene-edited-crops

The risks of New GE techniques India deregulates some gene-edited plants
https://www.gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20011

(2) Experts urge Kenya to consider new approach in regulating gene-edited crops
https://www.foodsafetyafrica.net/2021/09/08/experts-urge-kenya-to-consider-new-approach-in-regulating-gene-edited-crops/

(3) On IRRI’s 62nd Anniversary, Farmer-Scientist Network Holds Press Conference to Stop the Entry of IRRI’s Golden Rice – Calls For All Candidates to Support Just, Equitable, Safe, Healthy, And Sustainable Food Production
https://masipag.org/2022/04/on-irris-62nd-anniversary-farmer-scientist-network-holds-press-conference-to-stop-the-entry-of-irris-golden-rice-calls-for-all-candidates-to-support-just-equitable-safe-healthy/

(4) Deficiencies in the Risk Assessment of Genetically Engineered Bt Cowpea Approved for Cultivation in Nigeria: A Critical Review
https://www.mdpi.com/2223-7747/11/3/380?h=1

(5) 各地で生まれているシードバンクやOKシードプロジェクトはそのために大いに活用できるはず。OKシードプロジェクト
 また、川田龍平議員がローカルフード法案を第208回通常国会に提出予定。

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