「自然の権利」を認める国が続々と

今後は「人権」という言葉を他の言葉に置き換える必要が出てくるのかもしれない。人間以外の野生の生命が持つ権利、自然の権利を認める国が増えてきた。
 2012年にボリビアが初めて自然の権利を認める法律を作って以降、ウガンダが2019年に、そして、今年3月に、チリ、エクアドル、パナマが続々と法制化した。

 ヒトが人権を持つように野生動物も権利を持つ。動物以外はどうなのかと気になるところだけれども、ヒト以外が権利を持っているというのはこれまでの常識を覆すことになりうる判断だと思うので注目したい。

 ボリビアでの法律名はLEY MARCO DE LA MADRE TIERRA Y DESARROLLO INTEGRAL PARA VIVIR BIEN。善く生きるための母なる地球と統合的な発展のための枠組み法

 VIVIER BIEN(善く生きる)はラテンアメリカの民衆運動で不可欠な考えになりつつある。開発によって生きる環境が破壊されてきたラテンアメリカで、特に先住民族運動や伝統的住民の運動が環境と社会的発展を調和させることの重要性を訴え、その意義の理解が広がり、単なる物質的な発展ではなく、包括的な生の発展を可能にする政策を求める潮流が大きくなってきている。その文脈で自然も権利を持つ、という言説には説得力がある。動物福祉法とは少し文脈が違う。

 もっとも、自然は人間に直接語らないし、訴えないし、その権利をどう守るのか、という問題がある。政策としてどうその法律を生かすのか、考えると難しく思えるかもしれない。しかし、最近の「ゲノム編集」魚などを考えると、この観点は早急に検討する必要があるようにも思える。
 たとえば筋肉の抑制遺伝子を破壊して筋肉ムキムキになってしまうマダイはその筋肉の急成長のため背骨が曲がり、満足に泳げない状態になっていることが指摘されている。トラフグは食欲を抑制する遺伝子が破壊されため、肥満となり、肝臓への負荷が増え、糖尿病になりやすいと考えられる。このような遺伝子破壊は魚の生きる権利の否定ではないだろうか?

 実際にヒトへの「ゲノム編集」の適用は進められようとしているものの、それにはかなりの慎重な検討がなされている。同様のことを魚や他の動物への「ゲノム編集」でやっているかというとやっていない。ヒトは訴訟を起こせるが、魚や牛は起こせないからだろう。しかし、自然に生まれる問題はヒトであろうが、魚であろうが、植物であろうが、微生物であろうが変わりない。いや植物や微生物はその遺伝的影響が交雑などでどんどん広がっていってしまうという点において、ヒト以上により深刻な影響を及ぼす可能性がある。ヒトに用いることに慎重にする技術は、他の自然の生命への適用はさらに慎重にすべきなのに、それをしていないのはまったくおかしなことである。

 科学のあり方、産業のあり方、社会のあり方を根本から問い返す動きとして、この自然の権利に注目したい。

Bolivia: Ley Marco de la Madre Tierra y Desarrollo Integral para Vivir Bien, 15 de octubre de 2012
https://www.lexivox.org/norms/BO-L-N300.xhtml

RIGHTS OF NATURE GAIN GROUND IN UGANDA’S LEGAL SYSTEM
https://www.gaiafoundation.org/rights-of-nature-gain-ground-in-ugandas-legal-system/

In Panama, Nature Now Has Rights Just Like People and Corporations
https://www.ecowatch.com/panama-nature-rights.html

Chile poised to grant rights to Nature; could become 2nd such country besides Ecuador
https://www.downtoearth.org.in/news/environment/chile-poised-to-grant-rights-to-nature-could-become-2nd-such-country-besides-ecuador-82168

Ecuador Gives Legal Rights to Wild Animals
https://www.ecowatch.com/animal-rights-ecuador-wildlife.html

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