「ゲノム編集」は品種改良にあらず

 暑さに強いという体毛の短い「ゲノム編集」牛が2年後に市場に出てこようとしている(1)。さらに中国の華中農業大学は背骨のない「ゲノム編集」魚を作ることに成功とか(2)。骨を抜かなくていい、って、それはもはや生命への冒瀆としか思えないのだけど、商品化はされるのだろうか?

 「ゲノム編集は遺伝子組み換えに比べて安全そう」と思ってしまう人は少なくない? しかし、実際には「ゲノム編集」食品は安全どころか、これまでの遺伝子組み換え食品にもなかった危険が存在しうることを研究者たちは指摘している。なのに遺伝子組み換え食品と違って表示しないで流通可能にするのは大問題なのだが、日本のマスコミはその危険を報道しようとしないから多くの人が知らない。科学的な根拠があるデータが出ているにも関わらず。

 「ゲノム編集」は画期的な品種改良技術だと宣伝されているけれども、遺伝子操作技術で実現できた品種としては除草剤耐性や害虫抵抗性(虫を殺す毒素を作る)品種くらい。どのどちらも耐性のある草や虫の出現によって意味がなくなってしまった。遺伝子操作品種が作られ始めて30年近くが経つが、他に画期的な品種は生まれていない。金だけはかかるけど、意味あるものが作れない、それが現実であるにも関わらず、またその新バージョンを時代を切り拓く新技術と祭り上げる。しかし、すでに失敗が確実である。

 というのも「ゲノム編集」では従来の遺伝子組み換えでも起こりえない問題が起きうることが示されている。生物はランダムに遺伝子を変えて進化していくわけではない。変異していい部分と変異させてはいけない部分があり、後者は変異しないように守る防御機構が存在している。でも「ゲノム編集」ではそれを働かないように操作してしまう。

 「ゲノム編集」を食に適用する上で起こりうるリスクについて、科学的なデータをもとにレポートがまとめられた。まとめたのはドイツとカナダの団体(3)。

 これは従来の遺伝子組み換えだけでなく、たとえば放射線を放射したり、化学薬品につけることで突然変異を起こさせる品種改良よりもはるかに深刻な問題を引き起こしうる。放射線放射育種などではその生物が自分の遺伝子を守る機構は健在であるから(といって放射線がいいというわけではもちろんない。「ゲノム編集」で育種は放射線照射よりも危険であるということ)。

 従来の品種改良方法と「ゲノム編集」を使ったものは同一であると見なすことで、表示もせずに流通させていいと日本政府は言うわけだが、その根拠が問われている。同一ではないのだ。だからこそEUは規制する姿勢を変えるべきでない、という主張が広く支持されている。しかし、日本ではその根拠すら報道されない。「ゲノム編集」では日本が突出し、米国、オーストラリア、中国もしのぎを削る。その中でEUの規制方針が撤回されようとしている。そうなれば世界の食は急速に危険度を増すことは確実だろう。

 だからこそ、「ゲノム編集」技術は品種改良技術として受け入れてはいけないと思うが、譲りに譲っても表示義務は譲るわけにはいかない。マスコミもこうした情報をしっかり目を通して、報道するようになんとかお願いしたい。英語では厳しいという場合は日本語に訳したガイドブックが役立つはず(4)。

(1) 「ゲノム編集」牛についての投稿
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/6321096487917128

(2) 華中農業大学の骨なし「ゲノム編集」魚
https://www.hzau.edu.cn/info/1138/15572.htm

(3) レポートは17ページにわたるもの(添付イメージはその表紙)。ドイツのTestBiotechとカナダのCanadian Biotechnology Action Networkが公開。
The risks of New GE techniques
https://www.testbiotech.org/en/news/risks-new-ge-techniques

(4) 『ゲノム編集−神話と現実』無償ダウンロード可能
https://okseed.jp/genomemyths.html

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