ケニアの種苗法改正:タネを守ることの意味

 今、ケニアで起きていることを見れば、日本で起きていることの本質を理解できる、そして何をすべきかも見えてくるのではないか?
 ケニアでは農家が持つタネに代わり、遺伝子組み換え種子を買わされる制度へと変えられようとしている。ケニアの人びとはそれとどう闘っているか見てみよう。
 
 1980年代、構造調整計画がIMF・世銀によってケニアに押しつけられる。その結果、社会政策は破壊され、政府の民営化が進み、水道など公共政策が民営化され、自由化で外国製製品があふれ、ローカルな食を作る農業が輸出向け産品モノカルチャーに変えられていく。ケニアの市民はこれを債務植民地主義と呼ぶ。債務を作らせて、その国の政策を強引に変えてしまう。それを決めるのは多国籍企業。そして、今、タネが民営化されようとしている。
 ケニアの伝統食を支えてきた雑穀などに代わり、輸出向けのコットンが押しつけられていく。モンサントなどの遺伝子組み換え企業がUPOV1991条約を押しつけ、ケニアの種苗法が変えられた。農民たちが守るタネを取り上げ、毎回、タネを買わなければならないような制度にしてしまう。そしてそのタネはほとんどが海外企業のタネだ。
 それと同時に始まったのが遺伝子組み換え種子の押しつけ。2012年以来、ケニア政府は遺伝子組み換え栽培を禁止しているのに、政府自身が農民に遺伝子組み換え種子を農家に配っている。遺伝子組み換え企業のシンジェンタはタネと同時に携帯電話やテレビを農家に押しつけ、21ヶ月後に支払えなければ収穫をすべて差し出させる契約をケニアの地域で進めている。政府や地方自治体が実質的に多国籍企業の出先機関にされてしまっている。ケニアはアフリカの新自由主義の橋頭堡にされている。他のアフリカの諸国もケニアの後を追うように圧力がかけられている。
 
 農家が雑穀など自分たちが食べるローカルな食のシステムに代わり、安い金額で輸出用のコットン生産のシステムに組み込まれる。コットンは食べられないから食料は輸入に頼らざるをえなくなる。種子・化学肥料・農薬を作る多国籍企業と穀物メジャーが利益を得て、膨大な数の人びとが奴隷化されるシステム。COVID-19の蔓延で、ケニア政府は世銀の融資を得たが、その融資の条件を満たすために、ケニア政府は小麦の輸入を強制される。自国の農家が小麦を作ることができるのに。日本はそれを強要する立場にあることを忘れてはいけないだろう。ウクライナでの侵略戦争によって、状況はさらに厳しくなる。
 
 タネが多国籍企業に握られるのは政治的な問題に留まらない。地域の生態系は地域の植物に依存している。外来のヒマワリやGMコットンでは地域の昆虫は生きていけない。地域の昆虫が激減すると地域の植生は受粉ができずに衰える。絶滅の連鎖が起きる。化学肥料の投入によって土壌の微生物も衰え、水を蓄えられなくなってしまう。生態系に大きな影響が現れてしまう。微生物叢から植物相、昆虫、野生動物に大きな影響が出る。
 
 この変化は農業生産のあり方にもさらに大きな影響を与える。生態が貧困になってしまえば、化学肥料と灌漑施設がなければ農耕が困難になる。大規模農園を経営する企業だけが大きくなり、小農は生存が困難になる。生態系もそれと共に生きる人びとも危機に陥る。
 
 しかし、ケニアの人びとはこの状況の中で、政府がいい法律を作るのを待ってはいない。農家が採った在来のタネのシードバンクを作り、生態系を守るアグロエコロジーを活用した生産物を消費者への産直を通じて生産するネットワークを構築しつつある。COVID-19の蔓延の中で、そうしたタネへの需要は拡大し続けているという。
 
 日本の種苗法改正とケニアの種苗法改正はその背景が大きく異なり、また農家の反応も大きく異なる。しかし、どこかケニアで起きていることに共通性が見えないだろうか? 日本での種苗法改正の持つ意味はケニアの文脈においてみた時、よりはっきり見えてくると思う。多様な種子を保持し続けるケニアの農家、その多様性を奪おうとしている種子メジャー、遺伝子組み換え企業。どちらが人類や生態系のためになるのか、考えれば、それは自ずと答えは明らかである。
 タネを守る活動が世界的に急速に伸びている。これは日本にとっても肝心なことになるだろう。自分たちのタネとして企業支配されないタネの確保の重要性を改めて確認したい。

Imperialism and GMOs in Kenya: A perspective from social movements
https://roape.net/2022/04/05/imperialism-and-gmos-in-kenya-a-perspective-from-social-movements/

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