ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?

 ウイルス感染症は人間や家畜だけでなく、植物もターゲットになる。作物の多様性を失えば、作物が全滅する、そんな脅威に直面する。

 実際にアイルランドで19世紀に悲劇が起きている。ジャガイモが菌病にやられ、ほとんど全滅。同じ品種だけ大量栽培していたことが原因。そのために多くの貧農が食べていけなくなり、2割が餓死、2割が国を捨てて移民せざるをえなくなった。

 何がその後の救いとなったかというと、ジャガイモの原産地の南米にはきわめて多様なジャガイモが存在していたこと、その多様な生物資源を使うことでその後は難を逃れることができたこと。つまり、ヨーロッパの人びとは南の地域の生物多様性に助けられたということができる。生物多様性を守ることはそうした脅威から命を守ることにつながる。 “ブラジル:在来種を守る条項はいかに生まれたか?” の続きを読む

在来種を守る:バイオパイラシー/特許と在来種目録

 在来種の種苗は誰のものでもないから、いつまでも使い続けることができる。だから、何も怖くない、と言いたいのだけど、実はそうとはいえない。

 米国の多国籍企業Natreon社は鬱や糖尿病、不眠症、発作や胃炎を治める効能があるとして、インドの植物アシュワガンダの特許を取ろうとした。しかし、これはアーユルヴェーダで12世紀からすでにインドで使われている記録があるとして、異議が唱えられ、結局Natreon社は特許申請を撤回した(1)。 “在来種を守る:バイオパイラシー/特許と在来種目録” の続きを読む

遺伝資源の保護とバイオパイラシー

 今、世界で多くの生物が絶滅に瀕している。野生動植物だけではない。かつて栽培していた品種が消えてしまう。特に先進国ではその消失が激しく、かつて地域毎に異なる品種が農家によって維持されていたものが商業的な種子に代わっていく中で失われていっている。
 生物多様性を確保することの重要性は1992年のリオデジャネイロ環境開発会議でもその後の生物多様性会議でも確認され、それは生物多様性条約に結実し、名古屋議定書も作られたことは記憶に新しい。FAOは食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約を2001年に作り、農家が農業生物多様性を守る担い手であることを確認している。 “遺伝資源の保護とバイオパイラシー” の続きを読む

TPPと「モンサント法案」

 WikiLeaksがTPPの知的所有権項目のテキストをリークした。その内容は想像していた通りだった。「モンサント法」の世界化である。
 TPPや米国との自由貿易協定でラテンアメリカ諸国には「モンサント法案」が押しつけられた。この法案は総じて、
・ 農民が種子を保存することを犯罪として取り締まる。
・ 農民が種子を他の農民と交換・共有することを禁止する。
・ 農民は毎回、政府に登録された種子を購入しなければならない。
とするものだ。ラテンアメリカでは諸国では激しい反対運動が繰り広げられ、こうした法案は葬り去られている。TPP批准国ではメキシコとチリにこの法案が登場し、どちらも廃案となったが、もしTPPが成立してしまえば再び、この法案が登場してくるだろう。 “TPPと「モンサント法案」” の続きを読む

アマゾン先住民族の薬草・伝統医療と多国籍企業のバイオパイラシー

ブラジルとペルー国境に住む先住民族Matsés(マツェス?)のシャーマンが伝承し続けている薬草の知識など伝統医療の方法、知識が500ページを越える百科事典としてまとめられた。

先住民族の生存が脅かされる中、こうした知識も急速に失われてしまう危惧がある。先住民族の伝統医療については偏見があるかもしれないが、多国籍製薬企業がもっとも目を付けている知識でもある。 “アマゾン先住民族の薬草・伝統医療と多国籍企業のバイオパイラシー” の続きを読む

インドの種子の闘いとバイオパイラシー

 1月26日はインドの独立記念日の意味合いが強い共和国の日。その日にオバマ大統領がインドを訪問する。バンダナ・シバ氏がそのオバマとインドのモディ首相に公開書簡を書いたが、その内容がすごく、この間のバイオテクノロジー企業による種子支配との闘いの歴史となっている。 “インドの種子の闘いとバイオパイラシー” の続きを読む