在来種の種苗は誰のものでもないから、いつまでも使い続けることができる。だから、何も怖くない、と言いたいのだけど、実はそうとはいえない。
米国の多国籍企業Natreon社は鬱や糖尿病、不眠症、発作や胃炎を治める効能があるとして、インドの植物アシュワガンダの特許を取ろうとした。しかし、これはアーユルヴェーダで12世紀からすでにインドで使われている記録があるとして、異議が唱えられ、結局Natreon社は特許申請を撤回した(1)。
この話はアシュワガンダにとどまらない。かつてインドのニームも日本企業が特許を取ろうとしたが、インドの農民たちを怒らせ、結局撤退した。ニームは虫除けとなるため、防虫のために有機農業でも大事な役割を果たしており、長くインドで使われているものだ。
在来種が持っている効能を初めて発見したとして、多国籍企業が特許を取る。その植物は長いこと、人びとが使っているものであったとしても特許が取られるともうそれを使ったものは売ることができなくなってしまう。これを多国籍企業によるバイオパイラシー(植物資源の盗賊行為)と呼び、そうした植物を多く持つ南の人びとは特に警戒を強めている。
今後、怖いのは植物そのものではなく、その植物が持つ特定の遺伝子が発揮する機能に対して特許が企業に取られてしまうことだ。そうなるとその遺伝子が入った作物はすべてその企業の支配下に置かれてしまう。ローカルフード、ローカルな資源を人びとの共有財産として守る必要がある。
生物に特許を認めるべきではない、という主張は今、世界で強まりつつあるが、日本では農水省は知財戦略の中でこうした遺伝子特許取得を強化すべきとして、今回の種苗法改正でも関連する特許法との整合性を高めようとしている。
対抗戦略としては、今、ある在来種(薬草、花、きのこ、野菜、穀物、樹木、すべて)の目録化だろうか? 記録に残すことで使用実績を確定することで、人びとの共有財産として守ることができる。企業の特許化を防ぐことができる。
(1) India beats back US firm’s bid to patent Ashwagandha formula.
http://timesofindia.indiatimes.com/articleshow/5728923.cms