アマゾン先住民族の薬草・伝統医療と多国籍企業のバイオパイラシー

ブラジルとペルー国境に住む先住民族Matsés(マツェス?)のシャーマンが伝承し続けている薬草の知識など伝統医療の方法、知識が500ページを越える百科事典としてまとめられた。

先住民族の生存が脅かされる中、こうした知識も急速に失われてしまう危惧がある。先住民族の伝統医療については偏見があるかもしれないが、多国籍製薬企業がもっとも目を付けている知識でもある。

製薬企業は研究者を先住民族の村に派遣し、研究者は先住民族のヒーラーからその知見を聞き、薬草を採取、本国の研究所に送り、特許を取り、その使用権を独占してしまう。そうした製薬企業によるバイオパイラシー(生物多様性資源の盗賊行為)がアマゾンでは大きな問題になっている。

こうした犯罪からこの先住民族の知見を守るためにこの百科事典は先住民族の言葉だけで記録され、英語やスペイン語などへの翻訳は行われない。百科事典で簡単に薬草が特定できないように写真も使われない。

将来、バイオパイラシーが起きた場合、この百科事典がその違法性を証明する証拠にもなるだろう。つまり製薬会社が開発する前に先住民族がすでにその効用をすでに活用していることが証明されればその製薬会社の特許は成立しなくなる。

アマゾンの森を単なる産業資源と見て、先住民族をその開発を妨げる邪魔者と見ることを世界が卒業した時に、この先住民族の伝統医療の知識は抗生物質も効かないウイルスやバクテリアの脅威におののく世界を助けるものになるかもしれない。しかし、それは相当先になりそうだ。世界の製薬企業への社会的制御が行われていない。企業の利益のために生態系やそこに住む人びとを犠牲にすることを防ぐ仕組みはまだ十分ではない。逆にTPPでそうした企業の知的所有権の優越性が決められようとしている。

この百科事典はこの知識を先住民族の医療に生かしていくことに使われる。先住民族の医療が西洋的医療だけになっていくのではなく、こうした知識がコミュニティの中で使われていくことに活用される。

こうした実践で、あらためて気がつくことはこうした医療と農(アグロエコロジー)が先住民族社会では一つであるということ。われわれが学ばなければならないことは多数ありそうだ。

Amazon tribe creates 500-page traditional medicine encyclopedia
http://news.mongabay.com/2015/06/amazon-tribe-creates-500-page-traditional-medicine-encyclopedia/

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