なぜ「ゲノム編集」や遺伝子組み換えでは画期的な品種が作れないか、生命の遺伝子発現の仕組みを知ることが重要になる。
「ゲノム編集」や遺伝子組み換えの遺伝子工学においては、1つの遺伝子は1つの機能を持つ。だから、生命の機能をバラバラの部品のようにして、それを組み立てる工学モデルを作る。合成生物学ではすでに自動車の部品のように特定の機能を持つパーツまでが作られている。それを組み合わせれば合成生物のできあがりとなる。ただ、その工学的発想で作れるのは単純な合成生命に限られる。この発想は半世紀前、遺伝子が発見された頃、考えられた古いもので、現在、研究が進む実際の遺伝子発現においては、この想定とはまったく違ったことが起きていることがわかってきている。 “Omnigenics(オムニジェニックス)の理解は今後の鍵” の続きを読む
世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策
憂慮すべき動きが連続する。EUが来年に向けて「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認める方向に動き出したが、カナダ政府は先週、米国同様、2ヶ月のパブリックコメントの後に、多くの市民の反対を無視して「ゲノム編集」生物の規制なし放出を認めた(1)。そして、EUから離脱した英国は新法案で「ゲノム編集」などのバイオテクノロジー技術の推進を定めようとしている(2)。
なぜ憂慮すべきことかというと、この動きがまったく科学的な精密さを欠いているからだ。遺伝の機構はようやく解明の端緒についたばかりのところであり、人類は遺伝子の機能も十分にはつかめていない。その段階で遺伝子破壊を進めてしまえばどんな影響が生態系に現れるのか、まったく不明の状況にある。研究者も警鐘を鳴らしている(3)。 “世界を危うくする「ゲノム編集」生物の無規制政策” の続きを読む
バイオテクノロジー技術の規制は不可欠
世の中の注目がウクライナへのロシアの戦争に注がれている間に、世界の巨大企業は史上最大級の利益を上げている。生存すら危機的な状況に追われる地域の中小企業や労働者、農家は少なくないというのに、理不尽さばかりが募る。気候危機や生物絶滅危機への対策は次から次へと反故にされる。世界の生命にとっては踏んだり蹴ったりである。
EUでは今年12月にモンサントの農薬グリホサートの使用許可期限を迎え、使用禁止の確定がされることを多くが待っていた。ところがそれが再び2023年7月に延期された(1)。7ヶ月、延ばされるということはその期間、販売して利益を確保できるわけでモンサント(現バイエル)にとっては朗報であり、脅かされる命にとっては悲報である。そして、EUでの「ゲノム編集」生物の規制緩和の動きもある(2)。戦争が続く中で、巨大企業は着々とさらなる利益を確保している。英国でもその動きは続く(3)。 “バイオテクノロジー技術の規制は不可欠” の続きを読む
「ゲノム編集」された豚の人への移植:新たな危険
心臓病で苦しむ患者に「ゲノム編集」された豚の心臓が移植されたが、わずか2ヶ月でその患者は亡くなった。その原因は移植された豚の心臓がウイルスに汚染されていたからのようだ。
心臓病で苦しむ人たちにとって生きる希望をもたらすはずの臓器移植、しかし移植できる臓器の数は限られており、人間に近い臓器を持つ豚が活用されたわけだが、種の異なる心臓を人間に移植すれば人間の免疫機能はそれを拒絶する。その拒絶反応をさせないために「ゲノム編集」されていた。 “「ゲノム編集」された豚の人への移植:新たな危険” の続きを読む
EU、「ゲノム編集」規制緩和の圧力に屈する?
すでに想定はされていたけれども、最悪のシナリオが現実のものになりそうだ。EUが「ゲノム編集」を来年夏から規制なしの流通を認める方向で動き出した。 “EU、「ゲノム編集」規制緩和の圧力に屈する?” の続きを読む
“「ゲノム編集」は遺伝子組み換え”を覆そうとするバイオテクノロジー企業
世界で生物多様性が急速に失われている。その主要原因の1つが農業。かつて栽培されていた多様な地域の作物がグローバルな穀物に変えられる。野生動物の数が激減する中、家畜の動物の種親はごく一部の多国籍企業が握り、遺伝的に多様性のない生物が大規模増産されている。この事態こそ、感染症を激化させる原因であることはすでに多くの識者が指摘している。
そして、さらに懸念されることはその生産される生物に遺伝子操作を施すことだ。生態系の未来に大きな懸念を与えることは必至だろう。しかも、その遺伝子操作を規制なしで実現させようと、バイオテクノロジー企業は世界各国に圧力をかける。 ““「ゲノム編集」は遺伝子組み換え”を覆そうとするバイオテクノロジー企業” の続きを読む
「ゲノム編集」表示ない流通は遺伝子組み換え企業天国実現のため
政府の規制が急速になくされている、それがあたかもよいことであるかのように。しかし、それでどんな世界になってしまうか、ちゃんと想像して、その恐ろしさを感じて、手を打たないと大変なことになってしまう。
日本では「ゲノム編集」食品は表示もせずに審査もなしに流通させることが認められてしまっている。これは何をもたらすのか? 遺伝子組み換え作物の栽培国であるカナダで大問題になっている(1)。 “「ゲノム編集」表示ない流通は遺伝子組み換え企業天国実現のため” の続きを読む
米国と日本の食品表示:圧倒的な民間代替ラベルの違い
日本の食品表示、ちょっとヤバいレベルになってきている。ゲノム編集食品は表示一切なし、来年4月以降は「遺伝子組み換え原料を使っていません」という表示も実質的に不可能になってしまう。添加物でも消費者にとって不利なガイドラインが4月に出された。
そうなってきている最大の原因は政府の企業中心主義と政府と企業の回転ドア。つまり民間企業の人間が政府に入り込んで方針を決めてしまうこと。
どこの政府も同じ、というかもしれないけれども、政府はほぼ世界的に巨大企業に買収済みと言わざるを得ないかもしれないが、一方で市民社会はかなり違う。米国では民間代替認証ラベルがたくさん生まれていて、消費者は信頼できるラベルを見て、選ぶ権利が確保されている。
たくさん生まれている、ってどれくらいあるのか、と調べてみた。いやはや、なんと多いこと。とても覚えきれない。なんでこんなにあるの、と調べてみると、これだけ生まれてくる必然が見えてくる。 “米国と日本の食品表示:圧倒的な民間代替ラベルの違い” の続きを読む