「ゲノム編集」の拡大を止めるのは地域から

 「ゲノム編集」食品は、いったい現在、どれだけ出回っているか? 世界中が騒いでいるのに実質現在、流通しているのは日本の3品種(トマト、マダイ、トラフグ)だけ(1)。それもオンライン販売などに限られ、一般のスーパーにはまだ出回ってはいない。市民の過半数が食べたくないと言っているものを無理に出せば、たちまちボイコットキャンペーンが立ち上がって、挫折してしまうから、今は、消費者が「ゲノム編集」食品を受け入れることに全力を注入しているのが現状と言えるだろう。 “「ゲノム編集」の拡大を止めるのは地域から” の続きを読む

失敗が宿命付けられたCRISPR−CAS9による「ゲノム編集」生物

 新しい技術は必ず世界をいい方向に変えるという考えを科学技術信仰と呼ぶとすると、いつの間にか、無意識のうちに自分も含めた多くの人間がそれに染まっているのかもしれない。遺伝子組み換え作物栽培が急速に広まったことはその傾向を補強しているだろう。でも実際には遺伝子組み換え作物は災難と呼ぶより他ない品種しか作れなかった。「ゲノム編集」もそれに輪をかけたものになる可能性が高い。そして細胞培養肉も。
 この技術はちょうど10年前に論文が発表された。「正確に狙った遺伝子だけを破壊できる」技術だと宣伝されて、特許を巡って巨大なお金が飛び交うホットな技術となった。そして2020年にはノーベル化学賞まで受賞した。
 
 しかし、その大騒ぎに反して、根本的な欠陥が指摘され、CRISPR-Cas9を使った「ゲノム編集」食品の流通が行われているのは日本のわずかな3品種だけだ(流通といっても一般のスーパーなどでの流通ではなく、オンライン販売やふるさと納税の返礼品などに限られる)。
 
 その欠陥とは何か? “失敗が宿命付けられたCRISPR−CAS9による「ゲノム編集」生物” の続きを読む

EUは「ゲノム編集」生物だけでなく遺伝子組み換え規制をすべて緩和する?

 CRISPR-Cas9による「ゲノム編集」には遺伝子大量破壊などの危険があることが明らかになってきているにも関わらず(1)、「ゲノム編集」生物への規制が来年7月にEUで突破され、「ゲノム編集」食品が流通するだけでなく、従来の遺伝子組み換え生物の規制も大幅に緩和される危惧が高まっている(2)。 “EUは「ゲノム編集」生物だけでなく遺伝子組み換え規制をすべて緩和する?” の続きを読む

CRISPR-Cas9による「ゲノム編集」が危険すぎるわけ

 「ゲノム編集」でもっとも使われているCRISPR-Cas9、やはり医療や食品開発に使うには危険過ぎると言わざるを得ない。
 
 政府や推進企業はCRISPR-Cas9は「正確に狙った遺伝子だけを編集できる技術」として問題を認めようとしていない。狙っていない遺伝子が破壊されてしまうオフターゲットの問題も、オフターゲットが出ていないことを確認している、として問題ないとしている。

 しかし、狙った通りの遺伝子を破壊できたとしても、そこにさまざまな想定外の変異が生じることがあることがすでに報告されている。大量の遺伝子破壊、大量の遺伝子の挿入、遺伝子の入れ物である染色体が切れてしまう染色体破砕が起きるケースが報告されている。それが想定した遺伝子であろうとなかろうと、この大量の遺伝子の破壊あるいは染色体破砕は確率的にはそう高くないとしても確実に起きている。だからこれは人間のセラピーにはとても使えない、という判断にならざるをえない。 “CRISPR-Cas9による「ゲノム編集」が危険すぎるわけ” の続きを読む

「ゲノム編集」無規制の世界化が目指すゴールとは?

 「ゲノム編集」食品を無規制に流通させていい、という方針は米国が作り出し、日本が追従したものだが、肝心の米国がずっこけてしまったので、日本の突出振りが目立つ結果となってしまっていたが、ここに来て、世界で急に「ゲノム編集」食品の規制突破の動きが本格化している。安全性が確かめられたからとかではなく、突出している国の好きにさせてはならないとばかりに遅れちゃまずい、という馬鹿な競争がその原因だ。 “「ゲノム編集」無規制の世界化が目指すゴールとは?” の続きを読む

キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)

 キーストーンという言葉がある。文脈によって印象が変わってしまうけど、ここでは生態系を支える要石という意味で考えてほしい。たとえばよく知られるのは海におけるサンゴ。サンゴは海洋生物の4分の1を直接支え、間接的に支えるものを入れれば4割を支えるという。そのサンゴは海の中の0.1%にしか存在しない。サンゴが失われれば多くの海の生物が死滅する。サンゴは海の生物を支えるキーストーンだ。
 遺伝子の中でもキーストーンと呼ぶべきものがあることが研究によって判明した(1)。その遺伝子がなくなると、周辺の生物の絶滅という事態を生んでしまうというのだ。つまり、その遺伝子は周辺の生態にとってキーストーンになっていることになる。 “キーストーン遺伝子の発見:失えば生物絶滅も(「ゲノム編集」規制が不可欠なもう1つの理由)” の続きを読む

英国政府が「ゲノム編集」生物緩和法案提出も市場は冷ややか

 英国政府が5月25日に「ゲノム編集」生物を規制せずに流通可能とする法案を出し、来年以降、英国のスーパーマーケットで変色しないマッシュルームやビタミンDを強化したトマトなどの「ゲノム編集」食品が売られるようになると一斉にマスコミが報道しだしている(1)。しかし、この決定が英国市民の圧倒的多数の声を無視して出されていること、そして、何より英国のスーパーがまったく積極的でないことはしっかりと見ておくべきだろう。結局、これでは「ゲノム編集」産業は簡単には進まないことが明らかだ。 “英国政府が「ゲノム編集」生物緩和法案提出も市場は冷ややか” の続きを読む