破綻した米国の「ゲノム編集」企業、残るは日本だけ

 ついに米国で「ゲノム編集」大豆を開発したCalyxt社、資産を身売り、合併交渉か?(1)
 米国での「ゲノム編集」大豆油事業は無残な失敗に。世界で残っているのは日本の「ゲノム編集」トマト、マダイ、トラフグだけ。しかも売れている形跡はなく、結局、膨大な国の予算が無駄という結果になるだろう。
 
 米国で「ゲノム編集」Calyxt社は「ゲノム編集」大豆油Calinoの販売に乗り出したが、まったくの不振で、2017年10月13日には27.83ドルを付けていた株価が、159分の1である17セント(0.17ドル)まで落ちた(添付図)(2)。

Calyxt社株価の推移 
 米国政府は2018年にトランス脂肪酸の使用を段階的に禁止することを決めた。トランス脂肪酸はオリーブオイルなどには含まれないが、大豆油には含まれる。オリーブオイルは高価なため、安い大豆油でトランス脂肪酸の少ない油を「ゲノム編集」で開発するというのがCalyxt社の狙いだった。
 しかし、これは遺伝子組み換え大豆でもよくあることだが、従来の大豆に比べ、この「ゲノム編集」大豆の収穫が落ち、農家からも不評を買い、また安い油を必要とするレストランからも論議を呼ぶ「ゲノム編集」大豆油をあえて使おうという動きは生まれず、結局、開発費を回収できずに株価も大暴落しまった(3)。2019年以降、失敗を重ね、ついに2022年、断念という局面になっている。
 
 遺伝子組み換え企業は従来の遺伝子組み換え作物も「ゲノム編集」作物も、生産性が高いと宣伝するが、実際にはそうした遺伝子組み換え品種が従来の品種よりも生産性が上がったという根拠は存在しない。保守的で遺伝子組み換え企業にも支援されている米国科学アカデミーですら、遺伝子操作技術は生産性の向上には役立っていないと公表せざるをえなかった。
 でも多くの人がいまだに幻想を抱いている。「食料危機だから遺伝子組み換え作物や「ゲノム編集」作物が必要なんじゃないか」と。
 
 Calyxt社の失敗で、世界に残っているのは「ゲノム編集」トマト、マダイ、トラフグだけ。すべて日本が作ったものだ。日本のこの「ゲノム編集」食は長い月日をかけてすべて国の予算で開発したもの。民間企業でやっていたら実現する前に破産していたはずだ。開発を国の予算で行い、無理矢理商品化にこぎつけたが、利益はまったく出ていないだろう。
 特にCRISPR-Cas9などDNAの二重鎖を破壊する「ゲノム編集」では遺伝子大量破壊や染色体破砕などの危険があることがすでに指摘されており、それを使った食品を無規制で流通させるということはもはや非常識と言わざるを得ない。
 
 こうした金食い技術に税金をつぎ込むほど、日本は余力がある国なのか? それ以上に食料高騰や食料危機に対応することにお金は使うべきであろう。
 
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ちなみにCalyxtの読み方はセミナーに出てきたCalyxt社のディレクターの発音ではケイリックス(ト)という感じだった(ケイにアクセントがあり、トはほとんど聞き取れないほど弱い)。日本語ではカリクスト社、カリックス社と表記されることが多い。ケイリックスト社(Calyxt)と書くのがいいと思うのだけど、日本語式発音では通じない可能性大。

(1) Calxyt considers sale of assets, merger
https://www.bizjournals.com/twincities/news/2022/09/22/calxyt-considering-sale-of-assets-merger.html

(2) Calyxt社の株価の推移 https://www.google.com/finance/quote/CLXT:NASDAQ?sa=X&ved=2ahUKEwixuO-Eo836AhUoqlYBHZsNA80Q3ecFegQIMBAY&window=MAX

(3) Gene-edited crops pioneer Calyxt crashes, giving the lie to deregulation claims
https://www.gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20106-gene-edited-crops-pioneer-calyxt-crashes-giving-the-lie-to-deregulation-claims

Calyxt gene-edited soybean flops in the US
https://www.gmwatch.org/en/106-news/latest-news/19784

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