「ゲノム編集」食品は、いったい現在、どれだけ出回っているか? 世界中が騒いでいるのに実質現在、流通しているのは日本の3品種(トマト、マダイ、トラフグ)だけ(1)。それもオンライン販売などに限られ、一般のスーパーにはまだ出回ってはいない。市民の過半数が食べたくないと言っているものを無理に出せば、たちまちボイコットキャンペーンが立ち上がって、挫折してしまうから、今は、消費者が「ゲノム編集」食品を受け入れることに全力を注入しているのが現状と言えるだろう。
実際、売り上げなどさほど上がっていないはずだ。それにも関わらず、昨年は4000人に苗を無償で配っているという。昨年10月からは苗のオンライン販売を始めた(2)が、その価格で計算すると3300万円という金額になる。そして、今年からは福祉施設に無償配布し、来年からは小学校に無償配布するとしている。売れているならともかく、どう考えても元が取れないことを営利企業がどうしてできるのか? 普通の営利企業であれば支出が収入を大きく上回り続けば潰れる。しかし、潰れそうにない。
この事業は、日本の市民の意識を変えさせること、つまり「ゲノム編集」食品への警戒感を薄れさせることを目的としている事業ならぬ事業、言ってみれば人びとの警戒心を壊すための戦争をしかけているんじゃないか、と思えてくる。それではその軍資金はどこから? やはり米国遺伝子組み換え企業コルテバか? などと勘ぐってしまう。
そんな不自然なことができるなんておかしいと思うかもしれない。資本主義社会であれば潰れて当たり前のはずだから。でも、他にも例がある。たとえば米国で最初の「ゲノム編集」大豆油を作ったCalyxt社は27ドルあった株価は0.2ドル代まで下がっている。こんなに下がったらもう破綻になるのが普通だろう。
でも昨年9月、米国農務省のロンドン事務所が開催したセミナー(3)に登場したCalyxt社の幹部はCalyxt社の今後の展開をバラ色に描いて見せている。無理してんじゃないの、と思うかもしれないが、彼女の表情は作り笑顔には見えなかった。
彼女の経歴がこの会社の性格を物語る。彼女は米国の遺伝子組み換え企業の雄、デュポン・パイオニア社でキャリアを始め、その後、モンサント社に移り、その後、Calyxt社での仕事を始めている。こうした経歴を持つ社員が支えている企業だろう。つまり、今は市場がない、儲けが確保できない事業をやるためにモンサント社からいったん外れて、スタートアップ企業を作り、成功を収めれば、再び重役として遺伝子組み換え企業に戻り、事業自体も吸収されるだろう。だから、あの「ゲノム編集」大豆油が大失敗に終わって、売れなくても全然問題はない。資金は豊富だからだ。これからも「ゲノム編集」大豆、小麦、オーツ麦、アルファルファ(牧草)など続々と出す予定でいる。巨大な資本がバックにあるのだから、いつか市民の警戒心が破られて、市場ができれば、それでOKなのだ。
市民は選ぶ権利を奪われて、あきらめざるをえない、と思うとしたら、あきらめるのはまったく早すぎる。なぜならまだ成功例は1つも出ておらず、むしろ推進企業は苦境の中にあるからだ。
英国では88%の人が「ゲノム編集」食品の表示ない流通に反対のパブリックコメントを送り、積極的だった農民組合もその市民の姿勢を見て、慎重姿勢に変わった。結局、売れないものは作れない。儲けが出る見込みがなければ本格的な生産や流通も不可能だ。消費者の力はやはり大きい。
しかも、CRISPR-Cas9を使った「ゲノム編集」生物には遺伝子大量破損や染色体破砕の可能性があり、この問題を解決する方法は現在、見つかっていない。そもそも開発側が根本的なところから出直ししなければならない状態になっている(そんな危ない遺伝子操作方法をなぜ日本政府はいち早く十分確認もせずに認めてしまったのか、日本の市民は怒らなければならないのだが)。無理すれば破綻も早くなるだろう。そううまく進みそうにない。
「ゲノム編集」食品に対抗する有効な手段は何だろうか? やはり一番、効果的なのは地域での取り組みだろう。たとえば学校には無償配布なんてもちろん、受け付けさせない。学校給食では「ゲノム編集」食材は使わせない、さらに有機無償給食を実現させる。交雑させないように「ゲノム編集」作物の栽培する場合の規定を条例で作ることで栽培を規制していく、「ゲノム編集」されていない在来種のシードバンクを作る、どれも市町村単位で動くことがとても有効な課題ばかりだ。これらが実現できれば拡大を食い止める大きな力になるだろう。利益がでなければやがてお金も集まらなくなる。
ということで、現在OKシードプロジェクトでは地域別にサポーター地域ミーティングを始めています。これまで関西地域、中部地域、関東地域、九州地域で開いてきました。この四国地方の地域ミーティングを8月25日に、東北地方の地域ミーティングを8月31日に開催します(参加は無料。学習会ではなく、地域で何をしていきたいか参加者同士で議論するミーティングです。政党宣伝は一切お断りです)。
双方向で話し合うために参加は先着20名に限定しています。地域で「ゲノム編集」の問題への取り組みを始めたいという方はぜひ、ご参加ください。四国や東北以外の地域の方はしばらくお待ちください。
8月25日 四国地方地域ミーティング参加申し込み
https://forms.gle/qB1eoPtSpZSTdUfe8
8月31日 東北地方地域ミーティング参加申し込み
https://forms.gle/ytcQkEmo1vhaWeJm9
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/cartagena/detailed_info/genome.html
米国でも毛の短い牛にOKが出ていて、2年後に登場予定と言われる。
(2) ゲノム編集トマト家庭菜園用苗の販売開始のお知らせ
自社製品だからいくら無償で配っても大した負担にならない、と思うかもしれないが、特許料は払わなければならない。だから苗も高い。だけど、その特許権者が日本で実績作るためにお金を出していたら?
(3) USDA-Londonによる「ゲノム編集」に関するオンラインセミナー(英語)Calyxtの読み方はこのセミナーに出席した同社幹部(国際調整部長、Global Regulatory Director)はケイリックスト(最後のトはほとんど聞き取れないからケイリックスに近い)と発音していた。