失敗が宿命付けられたCRISPR−CAS9による「ゲノム編集」生物

 新しい技術は必ず世界をいい方向に変えるという考えを科学技術信仰と呼ぶとすると、いつの間にか、無意識のうちに自分も含めた多くの人間がそれに染まっているのかもしれない。遺伝子組み換え作物栽培が急速に広まったことはその傾向を補強しているだろう。でも実際には遺伝子組み換え作物は災難と呼ぶより他ない品種しか作れなかった。「ゲノム編集」もそれに輪をかけたものになる可能性が高い。そして細胞培養肉も。
 この技術はちょうど10年前に論文が発表された。「正確に狙った遺伝子だけを破壊できる」技術だと宣伝されて、特許を巡って巨大なお金が飛び交うホットな技術となった。そして2020年にはノーベル化学賞まで受賞した。
 
 しかし、その大騒ぎに反して、根本的な欠陥が指摘され、CRISPR-Cas9を使った「ゲノム編集」食品の流通が行われているのは日本のわずかな3品種だけだ(流通といっても一般のスーパーなどでの流通ではなく、オンライン販売やふるさと納税の返礼品などに限られる)。
 
 その欠陥とは何か?

 DNAの二重鎖をCRISPR-Cas9は切断する。これは生命にとってはきわめて危険な事態となる。その生命はなんとか二重鎖を閉じ、修復しようと努める。しかし、単に二重鎖が切られるだけでなく、特定の遺伝子が破壊される。その途上で特定の遺伝子のみならず、遺伝子が大量に破壊されてしまうケースが生まれる。染色体破砕が起きることもある(1)。
 
 また、昆虫や動物、人の場合にはp53遺伝子がある。これはがん抑制遺伝子と言われ、がん化した細胞死させ、再生を促す。そのことでガン細胞が増殖することを防ぐことができる。CRISPR-Cas9が二重鎖を破壊することによってp53遺伝子はその細胞に危険が迫ったとして、動き出す。p53が動き出せば「ゲノム編集」された細胞は死滅することになるので、「ゲノム編集」は失敗してしまうことになる。「ゲノム編集」ではp53の能力が損なわれた場合に成功しやすくなる。そのため「ゲノム編集」された細胞はp53の機能が低くなっている、あるいは操作の過程でp53の機能が低い個体が優先される。そうして作られた「ゲノム編集」はがん化しやすい不安定なゲノムを作り出す可能性が高くなる(2)。

 つまり、CRISPR−Cas9による「ゲノム編集」は細胞毒性を生み、ゲノムの不安定性を作り出すということだ。
 
 そうした不安定な個体を環境中に出すことはその種の絶滅だけでなく、周辺のエコシステムをなす生命の存続にも影響を与える可能性がある。
 
 こうした科学的知見が蓄積されているにも関わらず、日米などの政府は、「ゲノム編集」による品種改良は自然の変異と変わりないとして、表示も規制も不要とする方針を出した。EUやニュージーランドは裁判所がそれに反して、従来の遺伝子組み換え生物として「ゲノム編集」生物を規制する判決を出したが、今、その判決を覆すためにロビー団体によって圧力が加えられ、覆す基本方針が出されてしまった。南アフリカ政府も規制する姿勢を打ち出した(2021年10月)が、それに大きな圧力が加えられている(3)。
 
 果たして、規制撤廃によって、推進派が待ち望んだ状況が作られ、「ゲノム編集」食品市場は成功するだろうか? いや、失敗するだろう。なぜなら、その中心技術であるCRISPR-Cas9に根本的な欠陥があるからだ。
 
 その成功しない技術のために巨額の税金がつぎ込まれる。その欠陥を押し隠すためにバラ色の宣伝キットをこれまた税金つぎ込んで産業育成を図ろうとする。本来、もっと他のことにつぎ込むべきお金が無駄になり、環境も健康も破壊されてしまうかもしれない。遺伝の機構も十分わからない状態で遺伝子を操作した生命を環境中に出すということが決定的に間違っている。短絡的な科学の産業化によって、破壊されるのは科学への信頼だろう。このような短絡的な方法ではない、もう1つの科学のあり方があるはずだ。
 
 そして、厳しい状況を迎えている日本の農業にとって、必要なのは「ゲノム編集」された種苗や畜産品種では決してないし、その無駄金を使っている余裕はないはずだ。
 
(1) 染色体破砕に関する2021年9月23日の原稿
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/pfbid02DnRVbCkkgSBcgaxVj3w5SZbNBiZEoTqLf8WDBfuH4Kx8pd3s8fGJSSnJvwn2egN1l

CRISPR-Cas9による「ゲノム編集」が危険すぎるわけ

CRISPR-Cas9による「ゲノム編集」が危険すぎるわけ

(2) Gene editing via CRISPR/Cas9 can lead to cell toxicity and genome instability
https://phys.org/news/2022-08-gene-crisprcas9-cell-toxicity-genome.html

(3) The battle over regulation of new breeding techniques in South Africa
https://www.gmwatch.org/en/106-news/latest-news/20078-the-battle-over-regulation-of-new-breeding-techniques-in-south-africa

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。