「ゲノム編集」神話と現実

 「ゲノム編集」による遺伝子操作について、日本語圏では推進派の情報が大量に流されている。「ゲノム編集」はその中心的技術であるCRISPR-Cas9がノーベル化学賞を取るなど、遺伝子の機能を探求するためには画期的な技術であることは疑えないが、それを使って農作物や家畜を作るというのはとんでもない短絡である。にも関わらず、それが画期的な品種改良方法であるかのような情報がマスコミや高校などでも使われており、大いに懸念せざるをえない。
 そんな中で「ゲノム編集」とはどんな技術で、食に適用をすればどんな問題が起きるか、欧州議会のGreens/European Free Allianceが60ページ超のわかりやすいガイドブック『ゲノム編集−神話と現実』をまとめた。全文無料でダウンロードできる。 “「ゲノム編集」神話と現実” の続きを読む

「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ

 またパブリックコメント、しかもひどいパブコメなので意気消沈、読む気もしないと言われるかもしれないけれども、書かざるを得ない。日本政府は2019年10月に「ゲノム編集」農作物を実質的に申請・承認プロセスを経ずに、安全性の検査もないまま、「同断・届け出」という奇妙な仕組みを作って、表示などの規制もせずに生産・流通させることを認めた。
 もっとも問題なのは、最初の「ゲノム編集」種苗は相談・届け出を求めるけれども、その種苗を親として交配させた後代交配種(つまり「ゲノム編集」種苗の品種同士、あるいは「ゲノム編集」種苗と従来の種苗とかけ合わせてつくった子の種苗)は届け出しなくていいとしたことだ。
 届け出すらしないのだからもう規制も不可能になる。従来の作物とまったく区分ができなくなってしまう。そうすれば反対すらできないだろう、というバイオテクノロジー企業の悪知恵をそのまま受け入れたわけだ。

 しかし、それを飼料に使う場合についてはパブコメで批判が殺到し、農水省も後代交配種でも形質が変化した場合など一定の条件の場合は届け出が必要とすることに昨年2月に方針転換した。でもその方針が使われることは一度もないまま(1)、早くも農水省はさらに方針転換して、その決定を反故にして、後代交配種は一切届け出不要に変えるとしたのだ。それが3月5日に締め切りとなるパブコメで示された方針なのだ。あまりに異例の朝令暮改的迷走だろう。よほどバイオテクノロジー企業から圧力を受けたのだろう。
 怒って当たり前のことをやっているのだけど、マスコミは報道しない。そんな中、粛々とバイオテクノロジー企業のための政治がまた進もうとしている。でも、黙ってられないから、以下のコメントを送る(2)。 “「ゲノム編集」飼料での後代交配種のパブコメ” の続きを読む

バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府

 「ゲノム編集」作物の飼料としての取り扱いに関するパブリックコメント(既報)の締め切り(3月5日)が迫ってきている(1)。
 今回のパブコメについては2月4日にまとめているのでそれを参照していただくとして(2)、今回のポイントは以下
・ 日本政府は「ゲノム編集」された作物を親として交配させた品種(後代交配種)は届け出すら不要としている
・ 飼料としてそうした作物を用いることに対して行われた2019年9月開始のパブリックコメントに批判が殺到→農水省は2020年2月7日に後代交配種で一定の変化が出たものは届け出を求める方針を出す(3)
・ パブコメを受けて変更した政策を今回のパブコメではひっくり返し、後代交配種の届け出を一切不要とするもの “バイオテクノロジー企業の言いなりの日本政府” の続きを読む

「ゲノム編集」食品ボイコットに向けた動き

 本当に今、目を覚まさないと。大事な分かれ道が目の前にある。目もくらむような変化が起きようとしている。どんな変化か?
 Covid-19の蔓延で世界が苦しむ中、有機農業・アグロエコロジーの発展はめざましい。英国では2020年12.6%も有機市場が拡大したという(1)。米国ではなんと14パーセント(2)。新型コロナウイルスの出現は消費者の行動をも大きく変えつつある。
 2018年にフランスのシンクタンクIDDRIは2050年のヨーロッパの農業と食のあるべき姿を提示した。アグロエコロジー、生態系の原則に基づく農業に転換させることで化学物質の投入を段階的になくして、土壌や微生物を守りながら、増加する人口を健康な栄養で支え、慢性疾患にも対応できるというものだ。2050年にはこの100年間近く、世界を苦しめた化学物質にはもう頼らない時代にできるのかもしれない。そのために今、やるべきことが検討されている(3)。気候変動も和らぎ、生物大量絶滅というシナリオも変えられるのかもしれない。次の世代への大きな希望が見えてくる。
 しかし、もう1つの恐ろしい道が大きな口を開けて構えており、わたしたちを呑み込もうとしている。それはBrexitでEUを離脱した英国で鮮明に現れている。EUの厳しい遺伝子組み換え規制からも離脱しようというのだ。 “「ゲノム編集」食品ボイコットに向けた動き” の続きを読む

「ゲノム編集」の魚流通にのめり込む日本政府

 本当にろくでもない人たちに政権まかせておくと、ろくでもないことの連続となる。今度は「ゲノム編集」の魚。もっとも個別案件を審査して市場流通云々ではなく(従来の遺伝子組み換え食品と違って、そんな審査過程はそもそも「ゲノム編集」の場合は略される)、「ゲノム編集」の魚をどう扱うかについて議論するという調査会が厚労省で2月10日に開かれる。ライブ配信予定。9日に厚労省のサイトにURLを掲載予定(1)。 “「ゲノム編集」の魚流通にのめり込む日本政府” の続きを読む

パブコメを潰すパブコメ:「ゲノム編集」飼料後代交配種問題

 政府がデタラメを元に法律を作っていったらどんな国になってしまうだろう? 腹が立つのはそんなことが日常茶飯事になりつつあるからだ。また新たな「ゲノム編集」の後代交配種に関するパブリックコメント本日開始(1)。 “パブコメを潰すパブコメ:「ゲノム編集」飼料後代交配種問題” の続きを読む

政府が見逃す「ゲノム編集」が作り出す問題

 「ゲノム編集」の問題について続々と新情報。政府や企業などゲノム編集」推進側が流す情報とあまりに異次元。推進側は「ゲノム編集」によって起こる変化は自然界でも起きていることと同じだという。確かに紫外線や自然放射線に生物は曝され続けていて遺伝子が壊れて、変異することは起きる。でもこれは長い進化の中で、その変異から守る仕組みも発達させてきている。
 ところが「ゲノム編集」はその防御の仕組みをかいくぐって遺伝子を破壊する。問題は遺伝子だけに留まらない。ゲノムの中の遺伝情報がコーディングされている遺伝子はわずか2%に過ぎず、以前は残りをジャンク(ゴミ)と呼んできた。しかし、残りの部分が遺伝子発現に大きな役割を果たしていることもわかってきた。まったく同じ遺伝子を持つ細胞でも、あるものは心臓になり、あるものは目になる。これはDNAメチル化によって可能になる。DNAメチル化はゲノムに入り込んできたウイルスの遺伝子の発現を抑制したり、ガン化にも大きな関わりがあるという。このDNAメチル化をCRISPRを使った「ゲノム編集」は変えてしまうというのだ(1)。 “政府が見逃す「ゲノム編集」が作り出す問題” の続きを読む