1月9日締め切りのフードテック推進ビジョンに関するパブリックコメント、重要なので別の角度から見てみたい。
戦後日本の原則でもあった戦争をしないという国是、そして原発は新設しないという政策が国会での議論もなく、勝手に閣議決定されたのと同様に、いやそれ以上にまったく国会では何の検討もないまま、推進されようとしているのがフードテック。
何が問題か、考えてほしい。
「細胞培養肉はすごい、動物から幹細胞をちょっと持ってくるだけで殺さずに肉が増やせる。しかも気候変動ガスになる牛のゲップも出ないから気候危機対策にもなる」などといいことばかり宣伝文句を並べるけれども、細胞培養が人間社会を根底から覆すくらい、大きな影響を与えかねないことについては語ろうとしない。 “フードテック推進ビジョンを批判する:越権行為” の続きを読む
フードテック推進ビジョンを批判する:「ゲノム編集」・細胞培養食に未来はない
完全に見逃していた。「ゲノム編集」や細胞培養肉などのフードテックを推進する政策に関するパブリックコメント。締切がなんと1月9日(今度の月曜日)。一言で冗談じゃない、という内容なのだけど、期間の限られた時間の中でなんとか一人でも多くの人がコメントを寄せていただきたい。問題点について書き出すと切りが無いのだが、まずは基本的な考え方についてまとめてみたい。 “フードテック推進ビジョンを批判する:「ゲノム編集」・細胞培養食に未来はない” の続きを読む
根を張るブラジルのアグロエコロジー、一方、日本の統一地方選は?
政府が人びとの望まない政策をどんどん進めていく。こんな時にどうしていけばいいのか、とても参考になる取り組みがある。それがブラジルのアグロエコロジー運動。アグロエコロジーとは生態系を守り、その力を活用する農業に関する科学であり、そうした食のあり方をめざす農家の実践や市民の社会運動でもある。
これまでブラジルのアグロエコロジーを支えてきた柱は学校給食(PNAE)と食料調達政策(PAA)だった。政府が買い付けを保障するから、農家が現金収入を確保できる。市場に買い叩かれなくて済む。でも、極右大統領が誕生し、これらの予算を大きくカットした。新型コロナウイルスの蔓延による失業、コメや小麦など輸入穀物の暴騰という中、この政策により、飢餓層が急増する。そして、この極右大統領は空前の勢いで農薬を新規承認。現在、ブラジルで承認されている農薬の半数を占めるまでになった。海外では禁止されている農薬が続々と承認された。種苗企業は遺伝子組み換え企業によって買収され、大豆やトウモロコシ、コットンなどは遺伝子組み換え種子ばかり。
このような逆境の中でも、ブラジルのアグロエコロジー運動は地域に根を張ることで生き延びた。地方自治体が予算を出し、地域のアグロエコロジー生産をバックアップする、そんな例がブラジル全土で487存在するという(1)。その例を1つあげてみよう。 “根を張るブラジルのアグロエコロジー、一方、日本の統一地方選は?” の続きを読む
やはり遺伝子操作食品に未来はない その3: 細胞培養食に警戒を!
前の投稿で遺伝子組み換えサーモン開発企業や「ゲノム編集」作物開発企業が続々と破綻しようとしている状況を見た。遺伝子組み換え企業は大きな壁にぶち当たり、アフリカやアジアへの浸透や小麦や米などの主食に入り込もうと最後のあがきをしているのが現実だと言えるだろう。それではこうした遺伝子操作食品は今後、どうなるのか?
今後のシナリオとしては3つあると考える。
1. 消費者が「ゲノム編集」食品を受け入れてしまい、バイエル(モンサント)などが農薬・害虫耐性「ゲノム編集」作物を次から次へと出すシナリオ。
2.「ゲノム編集」ということは後景に退け、フードテックを前面に打ち出し、「ゲノム編集」はもちろん、従来の遺伝子組み換えやRNA干渉、合成生物学などの遺伝子操作技術をフルに用いた細胞培養による食品を出していくというシナリオ。
3. 遺伝子操作技術を使わない自然の力を最大限に生かすというシナリオ。 “やはり遺伝子操作食品に未来はない その3: 細胞培養食に警戒を!” の続きを読む
やはり遺伝子操作食品に未来はない その2: 消える「ゲノム編集」食品
遺伝子操作は従来の品種改良よりもずっと早く開発でき、しかも従来の品種改良ではできなかったことができるなどと言っていなかっただろうか? とりわけ「ゲノム編集」はその切り札ではなかったのか?
Calyxt社は世界で初めて「ゲノム編集」食品を世に出したと言われているが、Calyxt社の前に「ゲノム編集」食品は存在していた。それが2014年に発売されたCibus社の除草剤耐性カノーラ(SU Canola)で現在主流のCRISPR-Cas9ではなくODM(オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発)という方法を用いて「ゲノム編集」されているとされていた(1)。
しかし、2020年9月、このSU Canolaを対象に「ゲノム編集」食品は検出可能だとして科学論文が発表される(2)や否や、Cibus社はこれは「ゲノム編集」ではない、と言い始めた。ODMで編集しようとしていたが、その過程で偶然、突然変異でできたので、「ゲノム編集」ではない、と(3)。実際に「ゲノム編集」されていることは届け出書類に確認されているので、これはごまかしに過ぎないのだが、結局、このSU Canolaはこっそり市場から消えた。その後、残る「ゲノム編集」食品はCalyxt社の大豆と日本のサナテックシード社のトマト、リージョナルフィッシュ社のマダイ、トラフグだけになった。 “やはり遺伝子操作食品に未来はない その2: 消える「ゲノム編集」食品” の続きを読む
やはり遺伝子操作食品に未来はない その1:遺伝子組み換えサーモン
遺伝子組み換えサーモン(鮭)をめぐり、再び大激論が米国で交わされている。このGMサーモンは2015年に米国食品医薬品局(FDA)が承認したが、その安全性や養殖方法などに大きな問題が指摘され、訴訟も起こされ、2020年にFDAの再評価を命じる判決が出て、その再評価が11月に提出され、パブリックコメントを受けて、公聴会が12月15日にオンラインで開かれた(1)。
この遺伝子組み換えサーモンは2種類の他の魚の遺伝子を組み込むことで、本来、夏の間しか成長しないサーモンを年中育つようにして、半分の期間で倍以上に育つように遺伝子操作されている。しかし、サーモンの内臓がその成長に耐えられず、胃が破裂するなど異常を来した個体が多く、死ぬ確率も高いという。その安全性やその養殖の環境に与える影響についても疑問符が付けられている。 “やはり遺伝子操作食品に未来はない その1:遺伝子組み換えサーモン” の続きを読む
10年で8割の牛乳をNon-GMOにしたドイツ
今年を振り返る上で、畜産農家の苦境はその中でも注目が必要だ。政府の政策による苦境と言わざるを得ないのだけれども、政府の根本的な対処は表明されず。防衛費の何分の一で解決するのに。
このままであれば畜産農家がいなくなる。もし、畜産農家がいなくなり、さらに原料ほぼ輸入の化学肥料もなくなった時、果たして日本はどうなるか考えてみてほしい。
話は変わってドイツの話。ドイツではなんと8割近くの牛乳がNon-GMOだという。でもびっくりするのはこれはほんの10年の変化だというのだ。10年前はドイツでもNon-GMOの割合はわずか5%しかなかったとのこと。この10年にこれだけの変化があった。
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「ゲノム編集」食品が外来DNAを含まないという主張がウソである理由
「ゲノム編集」食品は外来の遺伝子や塩基が入っていない、だから自然と同じと政府や推進企業は言うけれども、それは何重にも誤り。『ゲノム編集ー神話と現実』の著者クレア・ロビンソンさんがそれを実際の研究論文に基づきながら説明している。 “「ゲノム編集」食品が外来DNAを含まないという主張がウソである理由” の続きを読む