コオロギ食・工業的昆虫食推進にノー

 コオロギ食をめぐってSNSが騒がしい。イナゴなどの伝統的昆虫食と違う問題がそこにある。岸田首相が予算委員会で推進宣言したフードテックだが、その推進ビジョンのロードマップによるとすでに昨年にコオロギの生産ガイドラインは完成していて、今後、他の昆虫のガイドラインが作られていくことになっている。
 
 なんでこんなことになっているかというと、タンパク質をめぐって過剰な争いを世界は繰り広げているからだ。食肉産業は世界ではごくわずかの企業に仕切られている。そのもとでの食肉生産は鳥インフルエンザ、豚熱、BSEなど致死的な病を作り出し、自動車や飛行機、鉄道を合わせたよりもはるかに多い気候変動効果ガスを作り出し、生物が生きられないデッドゾーンを作り出した。農作物で最大のタンパク質を産出する大豆はアマゾンを破壊しつつある。もはやタンパク質ビジネスはさらなる収益を上げられない臨界点に達してしまった。
 
 昆虫食に移行すれば、この事態は避けられるのか? 確かに牛肉よりはタンパク質を作る上での効率ははるかにいいかもしれない。しかし、「タンパク質だけが必要」という強迫観念のままであれば問題解決どころかさらなる問題が作り出される可能性がある。
 
 これまでのタンパク質ばかりを追い求めてきたアグリビジネスが、なぜ危機を迎えているのか、をしっかり分析することが肝心のはずだ。それをせずに、昆虫食でこれまでと同じ行動を続け、また新たな集約的工業型農業を作り出せば、今まで以上に大きな問題が生み出されることになるからだ。
 
 牛も大豆も自然な循環の中で重要な役割を果たす存在である。どちらも気候危機などを作り出さずに存在してきた。それを自然の循環から切り離し、集中的に育てることで、循環が壊され、環境が破壊される。気候危機が生み出され、生物絶滅危機が起こり、そして生み出された食は健康被害を作り出す。
 コオロギもまた自然の中で生きていれば、その循環の一部をなす。でも自然から切り離し、隔離して膨大な数を繁殖させれば、そのツケは自然に帰っていかざるをえない。感染症などの危険は飛躍的に増すだろう。
 
 そして、このタンパク質ビジネスは社会的に大きな負荷をもたらしている。遺伝子組み換え大豆を独占したモンサントが果たしてきた役割はこれまで言い尽くされてきたと言ってもいいだろう。米国や日本の政府の政策を勝手に決め、ラウンドアップの規制を妨害して、自社の利益を最大化させてきた。食肉産業はモンサントほど日本ではその悪事が報じられていないが、食肉企業JBSはアマゾン破壊に関わっているだけでなく、食肉加工において、多くの労働者の権利を蹂躙していることが明らかになっている。問題ある化学物質もこの生産過程で大量に使われ、それが人びとの健康を破壊している。食を独占させてしまえば、社会的格差もさらに広がってしまう。
 
 無理な食料生産によって、生態系が壊れだし、健康被害も拡大し、伸び続けてきた平均寿命も短くなり始め、未来への希望が妨げられる時代、今後、求めるべき食とは生態系の循環や社会的正義を復活させるものでなければならない。同時にその破壊を続けてきた政府や企業の責任も問われなければならない。
 
 牛も大豆も自然の循環に戻すことで、本来の力を発揮することができる。大豆は輪作に組み込むことで土壌の回復に貢献してくれる。大豆耕作を失ってしまった地域がそれを取り戻すことができれば化学肥料などの必要も激減するだろう。そして、その利益は一部の企業が独占することなく、社会全体に返すことが可能になる。
 
 昆虫食は一部の企業に生産が集中し、そしていずれ「ゲノム編集」などの遺伝子操作、感染症対策でさまざまな有害な物質が使われることは避けられない。そのような方向に政府の予算を使うべきではない。自然の循環と社会的正義を果たせる食のあり方を実現することを妨げる工業型昆虫食、そしてフードテックを推進させてはならない。
 
 「ゲノム編集」食品問題の基礎講座、3月14日夜オンラインで開催します。昆虫食は主なテーマではありませんが、「ゲノム編集」食品問題に関心があればご参加ください。参加は無料ですが、OKシードプロジェクトのサポーター登録(無料)が必要です。ぜひ、ご参加を!
https://okseed.jp/supportus.html

参考
フードテック推進ビジョン ロードマップ案
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000244872
パブリックコメント「「フードテック推進ビジョン(案)」及び「ロードマップ(案)」についての意見・情報の募集」の結果について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&bMode=1&bScreen=Pcm1040&id=550003602

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