ボルソナロ大統領がG7のアマゾン森林火災緊急援助を拒否。さらなるアマゾン破壊をもたらす法や自由貿易協定が成立。私たちも深く関わるこの破壊的な動きをどう止めるか問われている。
アマゾンの大規模森林火災・アマゾン破壊が今後、止まり、危機が回避されるか、どうかはボルソナロ政権の対応にかかっているが、さらに彼を利用する多国籍企業やそのロビー、さらにはそれに買収された日本などの政府の姿勢に注目する必要がある。
G7はアマゾンでの森林火災対応についての緊急援助をブラジル政府に提案(1)。しかし、大統領はそれを拒絶(2)。曰く「植民地主義的である」と。G7や世界の市民にものは言われたくない。ブラジルの寡占勢力が自由にする権利を侵害するな、というのがボルソナロの言い分(3)だが、気を付けてほしいのはこれは、大地主や鉱山企業、それらと結びついた政治家たちの発想であり、ブラジル市民社会の考え方ではない、ということだ。このボルソナロ大統領の姿勢こそが植民地主義者のものである。つまり、かつてのヨーロッパからの植民者と同様、森と共存してきた先住民族やキロンボーラ(黒人伝統的コミュニティ住民)、伝統的住民たちを追い出し、抵抗する人は殺して、森を壊した植民者と同じことをしているからである。
森を守る人びとがいる限り、森は完全には破壊できない。その人びとが姿を消した時、森も消える。この問題の解決にはそこに生きる人びとの権利が焦点になければならない。アマゾン破壊を止めるためにはこれが鍵である。
ボルソナロ大統領が攻撃しているのは先住民族だけではない。労働法制を改悪して、労働者の権利を奪い、教育予算を削減し、さらに年金削減によって年金生活者の生きる権利を否定しており、こうした姿勢に対しては全国で100万人単位の抗議行動がたびたび起きている(ほとんど報道されないが、無視していい動きでは決してない。ボルソナロ政権と安倍政権とはきわめて親近性が高く見えるだろう。実際に彼は安倍政権の政策が好きなようだ)。これらの問題がすべて地続きのものであることを少なからぬブラジル市民は感じており、今や、多くの市民が大統領の姿勢を批判し、支持率も落ちている。
ボルソナロ政権は世界中からの抗議にあわてて、アマゾンの森林火災に軍の出動を命じた。その軍に先住民族の権利を守る活動を行うNGOが同行できなければ、そこで先住民族の人権のさらなる蹂躙が生まれてしまうかもしれない。G7の提案はNGOや地元の住民団体との協力が前提となっている。それに対して、ボルソナロ大統領はブラジルの開発する主権を尊重しろ、と反論する。彼は今なお一切、姿勢を変えていない。
これはG7の提案の前になるが、ブラジル国会では8月21日にアマゾン破壊をさらに促進するための暫定令(MP881)が承認され、大統領の署名を待つだけになっている(4)。先住民族の土地を開発の対象とする最悪の法案は退けられたが、今なお、ブラジル政府はアマゾンをさらに破壊していく意欲を持ち続けている。
ここまで来ると先進国も批判するが、先進国に基盤を置く多国籍企業はボルソナロ政権と親密な関係を維持して利用してきており、この極右政権と先進国は経済協定を結ぶのに積極的である。EUと南米南部共同市場(Mercosul)との協定は先日成立し、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインの欧州自由貿易連合(EFTA)ともこの23日に合意に達している(5)。今後、ブラジルの農産物をさらに世界へ、という動きは止まっていない。日本とのMercosulとの協定も今後進む可能性がある。新自由主義的な動きを止めなければ、この地球はあと数十年以内に人類の激減をもたらす破局にまっしぐらになるだろう。
アマゾンで起きていること、そして私たちの日本で起きていること、これらはシンクロしている。特に食・農において、日本で起きていることとブラジルで起きていることは貨幣の表と裏といえるほど、関わりがある。
(1) アマゾン森林火災=G7が消火や植林用資金約束=NGOや住民との協働条件
(3) 《ブラジル》アマゾン森林火災の消火活動本格的にはじまる=軍派遣で散水用大型機出動=伐採促進を否定しない大統領=抗議運動も活発に行われる
(4) ブラジル国会でアマゾン破壊へのインセンティブになる暫定令が21日に承認された
Enquanto Amazônia arde, governistas e ruralistas aprovam mais incentivos à devastação no Senado
(5) Mercosulと欧州自由貿易連合EFTAとの自由貿易協定
Para governo, acordo Mercosul-EFTA elevará PIB do Brasil em US$ 5,2 bi em 15 anos