「みどりの食料システム戦略」に関するパブリックコメント出しました(第2弾)

「みどりの食料システム戦略」に関するパブコメ、締め切り当日なのだけど、昨日出したコメントは農薬について、何も言及しなかったので、あらためて、農薬についての追加のコメントを出します(例によってコメントという体裁になっていませんが)。
環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)についての意見・情報の募集について

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 「みどりの食料システム戦略」では化学農薬使用量を2030年までにリスク換算で10%減らすという目標を打ち出しています。
 現在、農薬などの使用が主因となって、生物絶滅危機が進行しつつあります。農薬の使用によって、病虫害を押さえることには限界があり、長期的には益虫の減少、害虫の増加が引き起こされ、その結果、ハチなどが大量死する事態が生まれており、もはや、わずか1割減を目標にするというのはあまりに消極的な姿勢であると言わざるをえません。
 
 また使用量を減らすというのではなく、リスク換算で減らすというのではどこまで信頼に値する目標になるか不明確です。
 現在、農薬の再評価プロセスが進行しており、ネオニコチノイド系農薬やグリホサート系農薬が審査されていると聞きますが、その情報はほとんど公開されておらず、何を根拠に何をリスクとしているかもまったくわからない状態になっています。すでにネオニコチノイド系農薬がハチなどの減少に決定的な役割を果たしており、昆虫や鳥などに留まらず、子どもの神経の発達に問題を引き起こしていることは世界的な常識となっており、だからこそ、EUでは規制が進み、米国でも使用は抑制気味です。それに対して、日本は逆にむしろ緩和し、新規承認すらされているのが現実です。グリホサート系農薬は土壌微生物から水生生物、さらには昆虫類を含む生命に大きな影響を与え、人の健康にも、アレルギー、糖尿病、神経系疾患、呼吸器系疾患、がん、世代をまたぐ影響にいたるまであまりに広範な影響を与えることも研究者は指摘しています。
 それでも政府はリスクを認めずに容認してきました。今の再評価プロセスにおいてもそれが公開されない以上、信用に値する検討が行われているとは想定することは困難です。
 
 さらに「みどりの食料システム戦略」で強調されているのがRNA農薬です。RNA農薬はRNAを虫などに摂取させ、虫を殺すものが開発されていますが、散布されるのは単純で分解されやすいmRNAではなく、二重鎖RNAであり、その影響は目標とする虫にとどまらず、広範な生態系に大きな影響を与える可能性があるばかりでなく、DNAへの逆転写などによって、後世にまで影響を残す危険も否定しきれない危険な技術であり、これを今後の農薬の柱とするのはあまりに無謀な政策です。それが低リスク農薬という文脈で扱われることに大きな違和感を持たざるをえません。
 
 このような中で農薬のリスクが低いとみなされれば、その農薬を使うことがむしろ拡大しかねません。「みどりの食料システム戦略」ではネオニコチノイド系農薬に言及があって、それを規制することが明記されたことは評価しますが、目標があまりに低すぎます。害のない合成農薬は存在しておらず、絶対量を確実に減らせるように、総合的病害虫・雑草管理(IPM)の手法を普及させ、農家の負担を減らすことができるように技術的・経済的支援を行う具体策が示されるべきです。
 
 農水省は「みどりの食料システム戦略」でモンスーン地域の農業モデルを世界に提案すると豪語されていますが、実際にはモンスーン地帯だから有機農業ができない、という言い訳に徹していたのがひじょうに情けなく思います。現在、世界でもっとも有機農家が多い国はインドであり、2位から4位はアフリカの国、そして5位はタイです。モンスーン地域だからできない、のではなく、すでに日本以上に熱帯モンスーン地域のフィリピンでも有機農業は日本の2030年の目標レベルを現在すでに達成してしまっています。
 
 なぜ、有機農業のパイオニアの国の1つであった日本がこのように遅れを取ったのか、それは日本がモンスーン地域にあるからではなく、これまでの政府の政策に問題があったからではないですか? そのような反省に立って、これらの国から学ぶ姿勢が、今の日本には必要なのではないでしょうか? 特に日本政府が低い位置づけしかしていない参加型認証について検討し直すことが不可欠です。
 
 農薬や化学肥料、つまり化学物質に頼った農業の限界性がはっり見えてきた時代に私たちはいます。そしてその使用でもっとも傷むのはそれを直接に使う農家です。化学物質に頼らない農業に現在の99.5%の慣行農家も含むすべての農家が可能な限り負担なく移行できるために必要な具体策を取り入れることが今求められています。それはさらなる後世への悪影響を生む遺伝子操作技術ではありえません。
 そして、化学物質にも遺伝子操作にも頼らない成功例は世界中に多くが存在しており、中でも日本の有機農家が積み重ねてきた経験はその宝の山です。農研機構にもその成果の一部が蓄積されているはずです。日本の大学などの研究機関、そして教育機関でそうした経験をさらに研究し、深めて拡げていけば、もっと効果的に環境を守る社会へと日本は変わっていくことができるはずです。

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