英国で「ゲノム編集」生物に関する法律が成立

 3月23日、英国で「ゲノム編集」生物生産・流通を可能にする遺伝子工学法(精密育種法)が成立した。米国や日本とは違い、英国では法律が作られた(日本では省庁内の検討だけで進められた)という違いがあるものの、英国でも表示をせずに「ゲノム編集」食品を流通させることが可能になるが、前途は険しいだろう。
 これまでも英国では黒焦げにしても発がん性物質のアクリルアミドができないように「ゲノム編集」された小麦などが開発されてきたが、いよいよそれが市場に出てくるかもしれない。新たにPBOなる概念が導入される(precision bred organism、精密育種生物)が、それは科学的な概念ですらなく、むしろ科学無視の産物に過ぎない。
 しかし、そのような生産物はそんな急速には拡がらないだろう。そもそも「ゲノム編集」などのバイオテクノロジー企業を発展させるために規制の強いEUから抜けるというのはBrexitを正当化する一つの理由だったが、Brexitが成立しても、そこにバイオテクノロジー企業の熱狂は生まれなかった。
 「ゲノム編集」食品推進に賛成したのは英国のうち、イングランドのみ。スコットランドやウェールズはすぐに「ゲノム編集」食品の無規制流通に反対する姿勢を明白にした。そして英国市民も反対の声を上げた。EUにも売れず、英国でもほとんど売れないのであれば市場がない。そんなものは作らないと一時、好意的だった農民組合も背を向けた。
 
 すでに英国をはじめ、ヨーロッパにはNon-GMO民間代替認証が存在している。特にドイツのVLOGは広く認知が進んでいるようだが、今回の新法の成立はこのようなNon-GMO認証の価値を高めるだけになるのではないだろうか?
 
 もっとも日本では3月20日、米国の遺伝子組み換え企業コルテバ(6大遺伝子組み換え企業の2社、ダウ・ケミカルとデュポンが合併。現在、4大遺伝子組み換え企業のうち最大の「ゲノム編集」に関する特許を保有する)の「ゲノム編集」ワキシーコーン(トウモロコシ)の届け出が発表され、今後、いよいよ世界の4大遺伝子組み換え企業が「ゲノム編集」市場に参入し、生産拡大を図ってくることが予想される(この件は講演旅行中で書く余裕がこれまでなかったが、大問題でいずれまとめたい)。
 
 「ゲノム編集」食品は決して順調に伸びないだろう。そして、その抵抗は世界に広がっていくことは間違いない。

Genetic Technology Bill Becomes Law

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Gene editing act passed into law in England

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