パブコメを潰すパブコメ:「ゲノム編集」飼料後代交配種問題

 政府がデタラメを元に法律を作っていったらどんな国になってしまうだろう? 腹が立つのはそんなことが日常茶飯事になりつつあるからだ。また新たな「ゲノム編集」の後代交配種に関するパブリックコメント本日開始(1)。

 「ゲノム編集は自然界の変異と区別できないから表示もしないで流通させてよい」。こんな言い方が繰り返される。でもこれって聞き飽きたデタラメの新バージョンに他ならない。最初の世代の遺伝子組み換え食品が出てきた時は政府はこう言っていた。「遺伝子組み換え食品は従来の食品と実質的に同等だから安全だ」と言い切ってきた。それがあたかも科学的な事実であるかのように見せかけて。しかし、実際に遺伝子組み換え食品を検討した科学者たち(米国FDA[食品医薬品局]の科学者たち)の見解は全然違っていた。遺伝子組み換え食品は従来の食品とはまったく異なるので、安全性が確認されるまでは市場に出すべきではないというのが科学者たちの意見だった。それを塗りつぶして「実質的同等性」を米国政府の政策に変えたのがモンサントからFDAに送り込まれたマイケル・テイラー。

 そんなデタラメを元に日本の遺伝子組み換え食品政策は形成されてきた。そして、新バージョン「ゲノム編集は自然の変異と同じ」というデタラメの上に日本の食品政策が形作られていく。

 「ゲノム編集」の種苗は外来の遺伝子が残っていなければ届け出をすれば表示もせずに流通していいことになった。もっとも外来遺伝子が残っているかどうか、申請の上、審査して、その結果、ないことが確認されて、流通が承認されるというプロセスは当然必要なはず。でもこれも不要。なぜかというと、バイオテクノロジー企業はこの申請・承認プロセスを嫌った。つまり、それが表示の根拠になるからだ。表示という規制によって第1世代の遺伝子組み換えは壁にぶつかった。だから第2世代の遺伝子操作技術「ゲノム編集」は規制させないことに全力を挙げて、相談・届け出という奇妙な新プロセスを作ることになった。相談して、その中で外来遺伝子が残っていないことを政府が確認する、それでなければ届け出になる。それって、常識的に申請・審査・承認じゃないとおかしい、と思うのだが、任意の相談・届け出という不可解なプロセスに変わってしまった。任意だからやらなくても罰則もない。

 さらに驚くのが「ゲノム編集」の後代交配種に関する対応。「ゲノム編集」後代交配種というのは少し異なる種の親同士を交配させて作った種苗。つまり「ゲノム編集」と通常の種苗を交配させる、あるいは「ゲノム編集」同士の交配で作った子世代のことを意味する。親は届け出を求められるが、届け出された親から作られた子の交配種は届け出を求めないという方針を政府は出している。

 届け出されるのは親の種苗だけ。そしてそれは流通することもなく、飾りになるだけ。実際に流通に回されるのは後代交配種ということになり、それは届け出すらされない。親も子も表示の必要はない。この品種の名前が親と異なればもう、その種苗がどうやって作られたのかほとんど辿ることができなくなる。こうなればもうわたしたちは「ゲノム編集」されているかどうかまったく知ることはできなくなってしまう。

 そんな方針が出されたものの家畜の飼料に「ゲノム編集」作物を使う場合について行われたパブリックコメントでは、さすがにそれはまずいだろうというコメントが殺到し、農水省も後代交配種であっても一定の条件で届け出を求めるように変更が行われた(2020年2月7日)。
 でもそれもつかの間。たとえ、後代交配種で元の「ゲノム編集」とは変化が生まれているとしても届け出すら不要と変えられようとしている。

 当然、「ゲノム編集」種苗と通常の種苗を交配しても、「ゲノム編集」同士を交配させても「ゲノム編集」の影響はその子の世代に残るだろう。その影響がどう発現するかはケースバイベース。それなのに届け出不要。

 遺伝子組み換え作物の承認プロセスを簡易化する圧力がモンサント(現バイエル)などからかけられ、承認された遺伝子組み換え作物を親とする交配種は承認プロセスが省略された。それも問題なのだが、まだ表示義務は存続する。「ゲノム編集」はそれすらなくなる。問題が起きても、もはや規制不能になる。

 こんなデタラメを許さないように、みなさん、パブリックコメントにメッセージを送りませんか?

(1) ゲノム編集飼料及び飼料添加物の飼料安全上の取扱要領の一部改正案に係る意見・情報の募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003263&Mode=0

(2) このパブコメは昨年12月の検討会を受けたもの。その検討会は参加して、その報告書いたので、ご参考まで
https://www.facebook.com/InyakuTomoya/posts/4862428110450647

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