昨年行われた「第7回セラードの人びと大会(VII Encontro e Feira dos Povos do Cerrado)」の短いドキュメンタリー。先住民族、キロンボーラ(黒人自立共同体キロンボの住民)、小農民、市民運動の人たちが集う。大きな会議であり、さまざまな歌、踊り、そしてセラードの自然の産物の市が多数立つ交換の場で、そのあまりに豊かな多様性に目を奪われる。
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モンサントはいらない–Occupyモンサントに寄せて
9月17日はOccupyモンサント世界行動日。日本では18日に東京・東銀座の日本モンサント株式会社前と首相官邸前で行動が行われ、そこで問題を提起しました。時間が限られていて、話しきれなかったので、話したかった内容をまとめておきます。 “モンサントはいらない–Occupyモンサントに寄せて” の続きを読む
Rio+20/ピープルズ・サミット:注目すべき会議・イベント(1)
Rio+20ではリオデジャネイロ市街から30kmほど離れたリオセントロで国連の公式会議が開かれる。リオデジャネイロの市街、フラメンゴ公園(フラメンゴの埋め立て地に作られた公園)では3万人もの世界からの社会運動、NGOなどが参加してピープルズ・サミットが開かれる。
さらにリオデジャネイロから遠く離れてアマゾン奥地のアルタミラでXingu+23という会議が13日から17日まで開かれる。これは現在、建設が強引に進められているベロモンチダムに反対する先住民族、川の民、アルタミラの住民、支援団体・個人が開くもので、ダムの建設を進めるブラジル政府に対して強い反対の意志を表示しようというものだ。
Xingu+23のサイト
この+23とは23年前の1989年にベロモンチダム建設が止まった、それから23年を意味している。ベロモンチダム建設は軍事独裁時代の70年代に計画され、それ以来、長い反対の闘いが続けられてきた。そして昨年ついに建設が始まってしまった。
昨年作られた以下のビデオは建設が始まる直前の状況を語る。
昨年建設開始以降、大きな問題がすでに作られてしまっている。政府は住民に対して影響力を最小限にするための施策を保障した。しかし、それは裏切られ、契約された大勢の労働者が来ているにも関わらず、町の病院などのインフラはそのまま、少女買春の急増、さらにはその労働者の労働条件を巡るたびたびのストライキなど混乱が続いている。川のせき止めも始まり、水が濁り、川で生活する人びとの生活に直接的な影響が生まれてしまっている。
この動きに対して、前環境大臣で先の大統領選で善戦したマリーナ・シウバ、ブラジル音楽の巨匠で元文化大臣のジウベルト・ジル、解放の神学者として有名なレオナルド・ボフなど著名人も賛同し、ベロモンチダムを止めるために動いている。
しかし工事は進み森林破壊は広がっている。その状況を伝えるAPFの番組(ポルトガル語)
ベロモンチダムの他にもアマゾンに多数のダム建設が進められようとしている。ダム建設はアマゾンの生態系に大きな影響を与える。このRio+20が終わると一斉に建設が加速するのではないか、先住民族や環境問題に関わる人びとにはそうした懸念がある。こうして開発されるダムの多くはアマゾンでの鉱山開発のためのエネルギー、あるいはアマゾンに建設される工場などで使われる可能性が高い。いずれにしてもアマゾンとその住民には何のメリットももたらさない開発計画である。こうした現状にはぜひ目を向けてほしい。
Rio+20:ブラジルの環境問題と日本
UNDB市民ネットセミナー「地域の声をリオへつなぐ」 2012年5月26日13時30分〜16時30分 地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)で話をさせていただいた。
生物多様性問題、環境問題に関わる日本の多くの人たちがリオデジャネイロで6月に開かれるRio+20に参加する。
この機会は2つの意味で重要だと個人的に思っている。
1つは福島東電原発事故と闘う人びとの声を直接、世界の人びとに伝えること
そして、もう1つは南米で進むジェノサイド・エコサイドの実態を日本からの人びとが目で耳で知ること。
福島、そして各地にある深刻な放射能汚染、その中で苦闘する人びとのことをインターネットを通じて伝えることの困難さ、直接、苦闘されている方々の言葉を届けることができればどれほど大きな力になるだろうか?
同時に、ブラジルを中心とした南米の状況を整理する中で、特に都市から遠く離れた地域で起きているジェノサイドの問題をあらためて考えざるをえなかった。遺伝子組み換え、ダム、鉱山開発、ユーカリ植林など、その深刻さには時に言葉を失う。
そして、いくら僕が言葉を駆使しても伝わらないものがある。直接、被害者の口から語られる言葉を聞くことの意義ははかりしれないほど大きい。ブラジルで起きているこれらの破壊すべてにおいて、悲しいことにも日本は深く関わっている。そして南米の遺伝子組み換え汚染は日本やアジアにも押し寄せる可能性が高い。
福島を中心とした放射能汚染と南米での遺伝子組み換え汚染(遺伝子組み換えの汚染+農薬汚染)は僕には1つの表裏のことに思えてならない。
この二つの経験を交わし合うことには歴史的意義があると思う。もちろん、単に経験を交わし合うにとどめずに、今後、この世界の動きを反転させ、変えていくための地球大の連携を作り出していくこと、それができるのはRio+20のピープルズ・サミット以外には見出しにくいだろう。
この機会にA SEED JAPANの人びとのご好意でその一団に混ぜていただけることになった。機会を最大限に生かせるようにできる限りのことをしたいと思う。
ベロモンチダムのビデオ紹介 & Xingu+23
ブラジルのベロモンチダムにより大きな影響を受ける先住民族が他の遠くの地域の先住民族と共にダム建設と闘う決意を語るビデオ。マトグロッソ州ピアルスで300人、18の異なる民族を代表する先住民族が集まり、ベロモンチダムが先住民族に対して与える影響を語り合い、決意を固める。
オリジナルは”Belo Monte – Piaruçu”
すでにダムの建設は2011年に始まり、川は濁り、人びとは大きな影響を受けている。現地で何が起きているか、上のビデオをぜひ見てほしい。映像も音楽も美しいビデオなので、そのまま再生させるのではなく、歯車のアイコンをクリックして、解像度を720p HDを選択し、さらに全画面で見てほしい。
ベロモンチダムに影響を受けるシングー川周辺先住民族や住民はRio+20が開かれている同じ時期、ダム建設地に近いアルタミラに集まり、Xingu+23という集まりを持つ。+23とは1989年にベロモンチダムの建設を止めた年から23年ということを意味する。
すでにサイトも立ち上がっていて、寄付も受け付けている。Xingu+23。
資金的にも厳しい中行われるこの会議、なんとか支援したいところだが、日本からは直接寄付が難しいようだ。
支援するいい方法がないものか模索中。
ブラジルの森林、 先住民族と日本
A SEED Japan グリーン主流化セミナー ブラジルの森林とわたしたちの生活 で現在のブラジルが抱える問題と日本の関わりについて話をさせていただいた。
身近な次元で何が可能かということまで落とし込んで、話題を提供すべきだったのだけど、ブラジルの問題を包括的にまとめ出すとその現実の厳しさに引きずられてしまって、現実を語ることに終始してしまったと反省している。
もちろん、身近な次元でできることはあるし、それを討論していくためにはさらに1時間くらい必要だったのかもしれない。
たとえば遺伝子組み換えの問題。
南米を浸食している遺伝子組み換え大豆は、社会を蝕み、環境を蝕み、人の健康を蝕んでいる。これをブラジル人社会の側だけで変えようと思っても非常に困難。買い手がいっぱいいる以上、さらなる拡大を防ぐことは難しい。その遺伝子組み換えは北での家畜の餌やバイオ燃料になっている。日本の商社もどんどん輸入を拡大している。
遺伝子組み換え大豆で育った家畜の肉は実際に危険であると思う。カナダで遺伝子組み換えの飼料で育った肉を食べた妊娠中の女性93%の血液からBt 毒物(Cry1Ab)という遺伝子組み換え作物が作り出す殺虫性の毒が検出されたという研究が昨年発表されている。この場合はBt遺伝子組み換えトウモロコシのケース(Bt toxin found in human blood is not harmless)。
害虫には毒となるタンパクを作るように組み替えられたものなのだが、人間の腸では破壊されてしまい、体外に排出されるから安全と説明されていた。遺伝子組み換え大豆の場合にも残留除草剤の影響に関する懸念は高まっている。そうした肉を食べることは食べる側の健康被害の可能性を拡大し、さらに南北米大陸での遺伝子組み換え穀物の生産を支えることになる。
どうせ肉を食べるなら安全な飼料を使っている肉にすべきだし、遺伝子組み換え飼料の市場にブレーキをかけない限り、遺伝子組み換え作物の耕作の拡大を止めることは難しい。だから十分に意味のある試みになる。
そうしたことをやっていくことも森林を守る取り組みの1つだと思う。
さらにブラジル現地に行けば、魅力のある運動をやっている人たちに直接会うことができる。そうした人たちとつながっていくことで個々ばらばらであれば不可能な新しい社会を作る道が見つかるだろうと信じている。
Rio+20の機会を活用して、そうした可能性をぜひ見つけてきてほしい。
行けない人(自分も含め)にもどんな可能性があるか、これから模索していきたいと思う。
遺伝子組み換え大豆に追い詰められる南米先住民族 ブラジルを中心に
【PARC先住民族チャンネル】オープン記念セミナー <脱成長・脱原発の時代と先住民族の暮らし> 2012年1月21日 アジア太平洋資料センター(PARC)で遺伝子組み換えと南米の先住民族の問題について話させていただいた。
同時に上映させてもらったビデオ、Killing Fields (Ecologist Film Unit / Friends of the Earth、日本語字幕GreenTV) 第一幕第2幕ビデオの方はヨーロッパから見た遺伝子組み換えが主題で、特に第2幕の最後の方はかなり主題から逸れてしまうのだけど、日本語の字幕の入ったビデオがほとんどないので、これを使わせてもらった。
急激な遺伝子組み換え大豆栽培の増加によって南米の先住民族や自然が痛めつけられている。日本もまたそれに無関係ではない。
ジウマ・ルセフ大統領へのメッセージ:ベロモンチダム建設を中止してください
ジウマ・ルセフ大統領、
ベロモンチダムの建設を中止してください。
ベロモンチダムはブラジルの地域社会のニーズに応えるものではありません。
現に現地に住む先住民族や伝統的住民は長年強く反対の声を上げてきました。その声は無視されています。
ベロモンチダムはアマゾンの鉱物資源開発に使うものと理解せざるをえません。そしてその資源の多くは海外に輸出されます。その開発の過程で、アマゾンの生態系は大きく破壊されてしまうことでしょう。
一時的に鉱山開発でブラジルが外貨を獲得し、利益を得たとしても、アマゾンの生態系が破壊されてしまえば、長期的にみればブラジル社会にとっては大きな痛手になります。鉱山資源は永続しません。しかし、アマゾンの生態系は今後長くブラジル社会を支える資源となります。
自然を破壊し続ける開発がこのまま続けばブラジルはもちろん、世界は崩壊するでしょう。その端的な例を私たちは東京電力福島原発事故で経験しました。この事故によって日本、そして世界は放射能汚染に長く苦しむことになります。このような開発はもはや続けることができない、ということを東電原発事故は示しています。
日本列島の住民はアマゾン破壊で作られるアルミや鉄を使って便利に生活してきました。そしてそのことを十分知らずに来ました。しかし、その生活はさまざまな浪費を生み出し、世界を汚染しており、もはや維持できるものではないと思います。
ベロモンチダムがひとたび建設されれば、先住民族を初めとする人びとの失われる生活、そして森、川は戻ってきません。鉱山資源はそう長くは続きません。どちらが重要か、ブラジル社会が長く幸せになれる道はどちらか、熟慮いただき、ベロモンチダムの建設を中止するようお願いいたします。
2011年8月22日
印鑰 智哉