モンサントはいらない–Occupyモンサントに寄せて

9月17日はOccupyモンサント世界行動日。日本では18日に東京・東銀座の日本モンサント株式会社前と首相官邸前で行動が行われ、そこで問題を提起しました。時間が限られていて、話しきれなかったので、話したかった内容をまとめておきます。

モンサントと民主主義は相容れない

モンサントが世界で何をしようとしているか、日本の中では十分な情報がありませんが、南米でモンサントがやっていることをみれば、この企業の本質がわかります。

南米では遺伝子組み換え作物は民主主義的なプロセスを経て導入されたものではありませんでした。遺伝子組み換えの問題がほとんど知られていなかった1996年のアルゼンチンにモンサントは紛れ込むことに成功します。そのアルゼンチンから遺伝子組み換え大豆が非合法に密輸品としてブラジルやパラグアイなどに持ち込まれたのです。本来、密輸品のものを耕作することは犯罪のはずですが、今なおラテンアメリカでは大地主はその地域の警察や裁判所にもにらみを効かす権力者です。その権力者を動員し、国会ロビーを強くかけて、民主主義的なプロセスも一切吹っ飛ばして、ブラジルでもパラグアイでも遺伝子組み換えが2005年に合法化されてしまいます。

モンサントは社会を壊す

大豆連合共和国その後、遺伝子組み換え大豆はあっというまに南米に広がり、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアに渡る地域は「大豆連合共和国」と揶揄される(モンサントと同じ遺伝子組み換え企業のシンジェンタのパンフレットに使われた言葉)までになってしまいました。多くの小農民や先住民族が土地を奪われ、パラグアイやアルゼンチンでは6割もの農地が大豆に占拠され、そのほとんどが遺伝子組み換えになっています。

モンサントは種子会社を買収し、農民はモンサント以外からは種子を購入することが困難になり、大豆では遺伝子組み換え以外、選択がなくなってしまう事態が報告されています。

この農地の過半数を占領する大豆を南米の人びとは食べません。輸出用の家畜の餌やバイオ燃料に使われます。飛行機で農薬噴霧し、大型のコンバインで収穫する機械化農業は職もわずかしか提供せず、土地を失った人びとは一気に飢餓層になってしまいます。アルゼンチンには以前存在しなかった飢餓層がモンサントの介入以降、生まれてきてしまったと報告されています。

もう1つ、深刻なのは農薬被害です。遺伝子組み換え大豆が導入された地域では雑草がどんどん農薬への耐性能力を獲得してしまうため、農薬使用量が劇的に増加してしまいました。農薬空中散布により、ガン、白血病、出生障害などの被害が続出し、アルゼンチンのコルドバでは裁判が起こされ、モンサントの農薬空中散布に有罪判決が下っています。

モンサントのクーデタ

パラグアイで6月に政変が起こりました。現地やラテンアメリカの社会運動は政変直後からこれはモンサントによるクーデタだと批判を加えました。

クーデタに倒された前ルゴ大統領は2008年パラグアイで史上初めて小農民の権利を守る立場で大統領に選出されました。しかし、議会は大地主に握られ、大統領の農地改革の試みは進まず。それでもさらなる遺伝子組み換え承認に対してルゴ前大統領は抵抗します。

6月17日に農地改革を求める人びとと警官の間で銃撃戦となり、17名が死亡する事態が起きます。この事件を利用して、議会は短時間のうちに大統領の罷免を決めてしまったのです。

民主主義をまったく無視したこうした動きに、モンサントは直接顔を出しませんし、関与を否定していますが、誰一人、モンサントの影響を否定する人はいません。

そして現に政変で権力を握ったフランコ政権は矢継ぎ早に遺伝子組み換えBt木綿などの遺伝子組み換え種子を相次いで承認しています。

パラグアイだけでなく、中南米のほとんどの国でこのような動きが起きています。

種子の支配をめざすモンサント法案

今年の3月にはメキシコでモンサント法案とよばれる法案が出されました。どんな中味かというと、農民が自分たちの種子を自由に蒔くことを犯罪とする法案です。つまり、種子はモンサントなどの特定の企業から買わなければならないというのです。メキシコでは先住民族が先祖代々受け継いだトウモロコシなどの種を育ててきています。その歴史を犯罪とする法案にはメキシコ中から怒りがぶつけられ、法案は成立しませんでした。しかし、実質的にモンサントなどから種子を買わなければ農業ができない状態を作り出す動きは進んでしまっています。

もしそれが成立してしまえば何が起きるか? 農民が自分が作りたい作物を作れないというだけでなく、農業生産がすべてモンサントなどに支配されてしまうというだけでなく、この世の中で存在しうる種がモンサントらの管理するわずかな種類の種になってしまうということ。これは何を意味するでしょうか?

種は多様な違いがあり、その多様な違いで環境の変化に対応することが可能になります。今後、気候変動が大きくなる時代に、この種の多様さが未来を守る力になります。しかし、この多様さがまったくない、環境変化に対応する力を失ったモンサントの種だけが残ることになる。近い将来、こうした種が絶滅して農業生産が絶えてしまう危険すら起こりかねない。その時、多様な種を守り続けているところが世界の食料生産を支配するでしょう。しかし、多様な種を多くの農民の力を使わずに保持できるのはごく一部の種子企業だけで、その企業の多くが現在遺伝子組み換え企業に買収されています。地球の生命の危険とその危機を利用した独占が起きてしまう危険があると思います。

日本では否定しているターミネータ種の合法化をブラジルで画策

さらにモンサント社は日本のWebサイトでは否定する見解を表明している自殺種と呼ばれるターミネーター種をブラジル国会にはその合法化を求める法案を提出しています。この自殺種の種を殺す遺伝子が他に広がれば、地球上の生命に危機がもたらされる可能性すら指摘されています。しかし、モンサント社は自殺種の計画、研究は一切ないと日本のWebサイトでは言っているのに、地球の裏ではその合法化法案を出しているのです。これがモンサントという企業の本質を示しています。

「モンサント・カンパニーは、現在に至るまで、不稔種子製品の開発・商品化は一度も行なっておりません。多くの零細な農業生産者が抱いている懸念を共有し、モンサント・カンパニーは、食用作物における不稔種子技術の商品化は行なわないと、1999年に公約しました。弊社は、この公約を堅持しています。この公約に反するいかなる計画、研究もありません。」

日本モンサント株式会社のWebサイトに掲載されている文書

ブラジル政府のサイトに掲載されたターミネーター種合法化法案一方、右に掲げるのはブラジル国会に提出されたターミネーター種の合法化法案。与党労働者党(左翼政党)の下院リーダーCândido Vaccarezzaから出されたもの。しかし、その法案のPDF文書のプロパティにはモンサントの契約弁護士の名前が入っており、一大スキャンダルに。つまり、モンサントの契約弁護士の書いたファイルをそのままCândido Vaccarezzaが法案として提出したことになる。
Projeto de líder do governo é redigido por lobby 「政府のリーダーの法案はロビーによって入力されていた」(ポルトガル語)

バイオテク企業による生命支配–TPPが彼らに必要な理由

今、自然の生命、私たしの体自身がバイオテク多国籍企業により植民地化されようとしています。その植民地化を可能にするのが知的所有権です。TPPもACTAもその知的所有権の支配を世界化させるためのツールです。TPPへの加入により、現在よりもはるかに危険な状態が作られてしまいます。それは絶対避けなければなりません。

共有知、情報共有でモンサントを追い詰めよう

東京東銀座日本モンサント株式会社前の抗議行動モンサント社は莫大な訴訟費用を確保して、対立するものを脅します。日本のマスコミは世界でもっともモンサントのことを報道しないのではないでしょうか? だから日本ではモンサントの本質がまるで伝わらない。世界でなぜモンサント占拠運動が行われるのか、日本人の多くが知らない。

しかし、モンサントの本質がわかればわかるほど、モンサントはその存在場所を失っていきます。情報を共有して、しっかりとモンサントを追い詰めていきましょう。

日本モンサント株式会社前のアクションの様子 (Facebookの写真)

注:あくまで集会発言で、一つ一つの根拠、出展を書いていると学術論文になってしまうので、書いていませんが、すべてこれらは出展もちろん、あります。右上にあるTwilogのリンクをたどって検索かければたどれます。
そのうち時間できれば出展も書き足すことも考えたいですが、時間ができそうにありません。あしからず

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