WikiLeaksのように弾圧されても回し続けるWebサイトを作る方法

WikiLeaksのサイトがAmazonから追い出され、放浪した時があった。しかし、すぐに、http://wikileaks.ch/が立ち上がり、しかも世界各地にそのミラーが作られ、もう米国政府といえども、もはや弾圧しきれない状態が作られてしまったことは記憶に新しい。

日本でも同じような事態が起きないとは限らない。以前、働いていたNGOではISPに置いたサーバーのデータは事務所のイントラネットのサーバー上で同期させていたが、それでも両方とも押収されてしまう可能性もある。政治的な弾圧でなくとも、たとえばサーバーを置いていた場所が火災や地震でデータがすべて失われるかもしれない。

どのように対処するか?

望ましいのは地理的に離れた安全な複数の場所でWeb用のデータを同期させておくことだろう。

rsyncというディレクトリー単位でデータの内容を離れたサーバーの間で同期するツールがあり、Linuxのサーバー同士だと、簡単に同期させることが可能だ。圧縮して暗号化して同期できるので、安心して使うことができる。WikiLeaksのミラーもこのrsyncを使って行われている。

しかし、問題なのはそうした地理的に離れた複数のサーバーを使える人・団体は多くないことだ。また仮に確保できたとしても、バックアップサーバーのデータにアクセスする方法をどのように確保できるか? 誰もがアクセスできる状態にすればそのバックアップサーバーのリスクを高めることにもなる。限られた人だけがデータにアクセスできるのであればその人たちが動けなくなった時におしまいだ。

あれこれ考えたのだけど、以下のような方法はどうだろうか?

Windows、Mac、Linuxで使うことのできるTrueCryptを使ってデータを暗号化し、Dropboxに必要なデータを保存する。DropboxもまたWindows、Mac、Linuxに対応しており、動作も安定している。

巨大なサイトだとDropboxが無料で使える容量を超えてしまうかもしれないが、たいていのサイトであれば十分無料の範囲で利用可能だろう。

しかも、そのデータはLinuxのわからない人でもDropboxで使うメールアドレスとパスワード、それから暗号化を解くパスフレーズがあれば手にすることができて、別のサーバーにぶち込めばそれでサイトを継続することが可能になる。複雑なCMSを使っているということがなければすぐに回復できるだろう。

  1. Webのディレクトリーのデータをtarを使って、バックアップディレクトリーに圧縮コピーする。
  2. MySQLのデータはmysqldumpなどを使って、書き出す。
  3. 上記の2つのファイルは別ディレクトリーにファイル名に日付を加えて保存する。月名は加えずにおくので、最低1月は過去のデータが残る。上記の処理をすべてシェルスクリプトにして、crontabで毎日定時に実行させる。
  4. 最新版は暗号化した上、DropBoxディレクトリーに保存する。

Dropboxの容量が十分確保できれば最新版だけでなく、バックアップできるといいけれども、容量が心配になってしまうかもしれない。

備忘録をかねて、サーバーへのDropboxのインストール方法(コマンドラインオンリー) (英文)

問題はTrueCypt。サーバー上で使うのはやややっかいかな。tarの暗号は弱そうだし、encfsであればとりあえずはOKだろうか。Linuxの他、MacではOK。Windowsでも使えそう(かな?)。
Dropbox+encfsで暗号化したファイルをMacとUbuntu/Linuxで同期してみる

他にいい方法あったら教えてください。

データさえあれば、いざという時にはWikiLeaksと同じようにrsyncで同期させてもらえるサーバー運営者とのネットワークを作って、ミラーサイトをいっぱい作ることは可能なはずだけど、その際には別のサーバー管理者にCMSのインストールをお願いするわけにはいかない。

CMSで運用している場合でも、データベースを前提とせずにすべてスタティックなHTMLファイルに書き出しておいて、単純なファイルの同期だけで済むようにWebサーバーの設定を変更しておくべき。URIの最後に?id=…のような変数がつく形ではなく、静的なpagetitle.htmlのような形でURIを書き換えられるようにWebサーバーを設定して、その静的なファイルを書き出しておけば、それは可能。この件はSEO対策でよく言われるが、それだけでなく、重要なことだろう。
wgetを使えば、サイト全体をテキストファイルで書き出せる(ただし、リンクされていないページは書き出せないけど)。

ただし、データを更新したりするためにはその作られたページのデータだけでは困難なので、やはりバックアップの基本はCMSを使っている場合はデータベースファイル&Webディレクトリーのファイルのバックアップとなるでしょうね。

追記:2011/03/08 encfsやTrueCryptでやるまでもなく、すでに標準でインストールされているGnuPGでやるのがよさそうだ。TrueCryptなどの場合、まず仮想化させるディスク容量を決める。Dropboxぎりぎりのサイズで作ればアップデートするたびにその2GBをやりとりしなければならない。これは重い。かといって小さく作ればその容量の中に入るかどうかいつも気にしていなければならない。GnuPGはファイル単位で暗号化してくれるので、そんな心配がない。ファイルの多いディレクトリーごと保存するという場合はともかく、今回はtarで1つのファイル、MySQLで1つのファイルしかないのだから、GnuPGでやるのが効率がよさそう。しかもだいたい標準で入っているので何も新たにインストールしなくていいし、Linuxはもちろん、Windows、Macにも対応している。信頼感もある。

ADSLとドアフォンの共存方法

つまらないことなのだけど、同じことで他の人が時間を浪費しないようにメモしておきます。

とあるところにADSLを導入することになり、ISPと契約してモデムが送られてきた。電話線にADSLモデムをつなぎ、ADSLから電話機に接続する。ADSLはすぐにつながり、電話機も問題なし。あっという間。ここまではよかった。問題はその電話機がドアフォンともつながっていたこと。

ドアフォンがつながらない、と言われて、配線よく見たら、ドアフォンアダプターからは6極6芯のケーブルになっている。ADSLは入力も出力もどちらも2芯だからドアフォンがつながらないのはあたりまえ。

それならスプリッターかませればいいのだろう、とスプリッターを店に見に行ったけど、どのスプリッターも入出力2芯(それが当たり前なのだけど)。ドアフォンアダプターからは6芯の出力しかない。

インターネット上の情報検索したらかえって混乱した。アダプター自作しろとか。しかし、実際、きわめて簡単だった。

ドアフォンアダプターを壁から外したら2芯の電話線がドアフォンアダプターの背面につながっていて、その電話回線に加えてドアフォンからの4本の導線が加わって出力には都合6芯となっているのだった。だから、スプリッターはこの電話線とドアフォンアダプターの間につなげばいい。スプリッターとの入出力で電話回線2本分出し入れするだけなので、改造も不要。ADSLも通常通りスプリッターとつなげばOK。

ドアフォンも問題なく動き、インターネット接続も快調。

Help us for the information on the struggle against GM technologies in the world

The Japanese government is going to authorize GM soya cultivation inside Japan?

The Japanese government will have a bilateral negotiation with the USA on TPP (Trans-Pacific Strategic Economic Partnership) in the middle of January. The USA government should be pushing the Japanese government to authorize GMO production inside Japan. At the same period, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries of Japan (MAFF) has started asking public comments on authorization of cultivating genetically modified soya inside Japan by January 22nd.

Unfortunately the mass media in Japan don’t report on the GM issues. The problems caused by GM soya in Paraguay, Argentina and Brazil are not reported. They don’t report how Indian farmers are suffering from the imposed GM industry nor how European are fighting against the pressure by the US governments and multinationals such as Monsanto.

GM industry may successfully open the gate in Japan because there are few resistants although the most of Japanese don’t like GM technologies. We, Japanese eat soya and consumers care about whether soya is GM or not. But most of them don’t know most of salada oil is made from GM canola. There are no strict compulsory labeling regulations on the GM foods in Japan.

Information project to let the Japanese consumers and farmers to know what GM causes in the world

That is why we have started an information project to let the Japanese consumers know what GM is causing problems in the world.

Please let us know the most important incidents on the GM industry and the victory and the struggle in your country against the GM technology, such as the URL of web pages.

We will make a short introduction in Japanese to the information you provide.

Would you kindly send the URL and short explanation why it is so important from the following info form? -> info form via Google Docs.

Thank you for your help in advance,

In solidarity,

INYAKU Tomoya on behalf of the information project

ブラジルのある農村におけるベーシック・インカムの実験 その1

ブラジル・サンパウロの郊外の小さな村でベーシック・インカムの実験を始めてしまった人たちがいる。

ベーシック・インカムとは収入の額に関係なく、成員全員、子どもからお年寄りまで個人に対して生きていく上で必要最低額を支給しようというものだ。

ブラジルNGOによるベーシック・インカムの実験
ReCivitasによるプレゼンテーション

当然、ベーシック・インカムとは税金などと関わり、NGOが実行するというよりは国政レベルの政策論と思ったので、なんで村でNGOがベーシック・インカムなんだ、と話を聞いた時はまったくつかめなかったが、PARCで開かれた『対話集会 ブラジルのNGOの実践から学ぶ 貧困をなくすために〜農村でのNGOの役割』に参加し、目を開かされた思いだ。

彼らの実践を正確に紹介すべきところなのだが、その余裕が十分ない。通訳もどきをしていて、うろ覚えでしかないのだけど、私にとっておもしろかった、と思ったところのエッセンスだけ、数回に分けて記録に残しておきたいと思う。

この実験を始めたNGOは2007年に創られたヘシビタス(ReCivitas)というNGO。ブルーナとマルクスという若い夫婦が創ったNGOだ。彼らは農村問題での貧困問題、市民権確立の活動をこのNGOを通じて行っていた。

2004年、労働者党政権はベーシック・インカム市民権法を成立させた(Wikipediaポルトガル語)。しかし、実際にはブラジルではこの法律はまだ実行されていない。ルラが再選に臨む時、2003年から始められていた貧困家庭の支援を目的にしたボルサ・ファミーリア(家族支援計画 Wikipediaポルトガル語)をこのベーシック・インカムの第一歩とするとしているが、ボルサ・ファミーリアを今後どうやってベーシック・インカムに転換していくのか明らかにはされていない。

ベーシック・インカムは収入の多さによって差別せず、全員に支給することを基本とするものだ。もし、貧しい人・家庭だけに支給するのでは、その人が貧しくなくなった時に支給を止める必要がある。支給を受けたいがために、貧困状態を継続するということにもなりかねない。また貧困であることを証明しなければならなくなる。その検証に手間・費用がかかってしまう。プライドも傷つくかもしれない。それゆえ貧困な状況に陥っても、受け取ろうとしない可能性もある。収入の高低に関わらず支給するのならそんな問題もない。

ただし、当然、その対象は大きくなり、どう財源を確保するかという問題も出てくる。その場合、これまでの社会福祉がどうなるのかなど、実現するためには国政レベルでコンセンサスが必要となってくる。しかし、ここで難しくなる。ベーシック・インカムがどんな社会を生み出すのか多くの人にとって想像ができないからだ。想像ができないことでコンセンサスを創ることは困難。コンセンサスがなければベーシック・インカムは実現できない。となると鶏か卵かでまったく進まない。

ヘシビタスが思い切った実験に踏み出すのはこのジレンマを超えるためだ。マルクスは言う。「ベーシック・インカムはアカデミズムの中で議論されている限り前に進まない」。彼らはへシビタスでニュースレターの印刷などに使っていたお金を小さなコミュニティに使うのであれば、そのコミュニティでベーシック・インカムが実現できてしまうことに気がつく。それをさっそく実行に移してしまう。

続く

Kindle 3

Webで長い文章に出くわした時、PCのディスプレイで読み続けるのが結構苦痛だ。かといって紙に印刷して資源浪費したくない。

そんな時、文章部分だけEvernoteに保存して、KindleのWebブラウザーを使い、Evernoteのモバイル版(http://www.evernote.com/mobile/)を見るようにする手がある。

これなら十分読める。これでWebで長いデータに出くわしてもこわくない。

ただ、日本語ならまだいいのだけど、これがポルトガル語だったりすると、せっかくデジタルデータなのだからオンライン辞書が使いたくなる。ChromeだとBubble Translateというエクステンションを入れれば、ワンタッチで日本語や英語で単純な訳(詳しい訳じゃなくて1つの訳語例のみ、ショートカットを複数作れるので、日本語へのショートカット、英語へのショートカットを別に設定可能。3つ以上も可能)を出してくれて、能率よく読めるのだけど、現在のKindleだとそれは無理。

またiPhoneやAndroidのタッチパネルに慣れてしまうと、現在のKindleのインターフェースではいらいらがかなり募ってしまう。これはハードウェア的な制約だから、ファームウェアのアップデートで解決することは期待できない。

以下、画面キャプチャー。2割、画像小さくしているので、フォントが実際よりも汚く見えるかもしれない。またコントラストは実際にはこんなどぎつくはない。
Kindle経由で見た長いWebページ

A SEED JAPAN連続セミナー 「生物多様性を知る×伝える×守る 情報通信技術の活用術」その1

9月25日、A SEED JAPAN連続セミナー「生物多様性を知る×伝える×守る情報通信技術の活用術」で話をさせていただきました。

うまくブレーンストームの素材を出して、A SEED JAPANの行動計画に貢献したいところだったのだけど、ちょっと思うようにいかず、せっかくよんでいただいたA SEED JAPANの方たちには申し訳なかったのだけど、どんな話をしたのか簡単にまとめておきます。

これまでの国連関連の国際会議でNGO、市民運動の方でどうインターネットを活用してきたのかを見てみます。

1992年リオデジャネイロ国連環境開発会議(UNCED)

ちょうど、私はアジア太平洋資料センター(PARC)とブラジル社会経済分析研究所(IBASE)の交換プロジェクトでリオデジャネイロで活動していて、日本からの投資がブラジルの社会・環境にどのような影響を与えているのかを調査していました。

80年代からアジア太平洋地域で紙パルプなどの原料にするために大規模なユーカリ植林が大きな社会問題となりつつありました。しかし、このユーカリ植林は70年代、日本のODAがつぎ込まれてブラジルで大規模に行われています。それが現在、南の国々に広げられていることがわかり、UNCEDの会議の機会を活用して、ユーカリ植林問題に取り組む国際ネットワークを作ろうと考えました。

何も組織的バックアップもなく、そのようなことを提案するというのは今考えると、突拍子もない若気の至りという感じでしたが、NGO会場が設けられたグローバルフォーラムでよびかけのチラシをまき始めました。しかし、この会場を訪れる人の数、3万人といわれ、一人でチラシをまいたところでたかがしれています。

そこでIBASEの事務所に戻り、APC(Association for Progressive Communications、進歩的コミュニケーション協会)の電子会議室に提案を書き込みました。このAPCというのはブラジルをはじめ、アルゼンチン、英国、米国、オーストラリア、南アフリカなど各地を相互につなぐいわばNGO、市民運動のためのパソコン通信ネットワークといえるもので、インターネットの機能を先駆的に世界各地の市民運動に提供したものです。1992年の段階ではインターネットはまだ市民には遠い存在でした。

電子会議室に書き込んだこの提案には即反響が来ました。カリフォルニアの大学教授からは、ユーカリを植えると他の植生が育たなくなってしまう、カリフォルニア州ではユーカリ伐採とその土壌汚染に取り組んでいる、ということで、その取り組みを知らせてきてくれました。

そして、UNCEDの最終日、ホテル・グローリアのロビーに、ブラジル、ウルグアイ、インドネシア、タイ、フィリピンなどのNGOやThird World NetworkやGreenpeaceなどの国際組織も入って、単一性植林問題国際ネットワークが立ち上がってしまったのでした。

情報コミュニケーション技術(ICT)が市民運動にとって武器になる、ということはこの時に痛感しました。この時のネットワークは市民社会に広く訴えるような(広報的)機能はありませんでしたが、世界各地のNGOを相互につないで情報交換できる仕組みがあるということは特に日本から参加した人たちには大きなショックだったろうと思います。この時期、日本にはNiftyServeやPC-VANなどのパソコン通信サービスはありましたが、まだお互いのユーザー同士でメールを交換することすらできず、閉じられたシステムだったからです。

海外のNGOの中にはすでにAPCの会議室を通じて、リオの会議に参加する前に情報交換を済ませて、リオの会議ではいきなり議論を始めるところが少なからずありました。しかし、日本の多くの参加者にとってはいきなりでしたから、言語のハンディキャップ以上に情報のハンディキャップを負っての参加になってしまいました。

実はAPCの本部は私が働いていたIBASEにあり、私はIBASEのスタッフといっしょに働きながら、日本にAPCのシステムを作ることの必要性を感じ、帰国後、さまざまな人との協力のもとに、それはJCA-NET(http://www.jca.apc.org/)という形で実現することになりました。

1997年気候変動枠組み条約COP3京都会議

JCA-NETが設立されてすぐに開かれた京都会議、GEIC(現GEOC)の支援を得て、NGO情報発信支援プロジェクトに取り組みました。これは国連会議が行われた会議場に100台を超すPCのLANを組み、会議に参加するNGOが声明など簡単にインターネットを通じて情報発信できるようにする仕組みでした。

事前の準備もままならず、という感じでしたが、最終的に国内外の46団体のメッセージを発信することができ、海外のAPCからもこのプロジェクトのおかげで京都会議をモニターできたよ、と評価されました。

しかし、この仕組みも一方的な告知のみで、会議場の外の人たちはそれをモニターするしかできなかったものでした。

1995年頃から日本でもインターネットが本格的に普及し始めていました。当時はメーリングリストも普及していましたが、メーリングリストも参加者のみが情報を見られるという点で同じように閉じられたメディアであったと言えるでしょう。

インターネットの地殻変動

2000年を過ぎることからインターネットに大きな変動がおきます。ブログが生まれ、さらにSNSが生まれてきました。これは限られた人だけが情報発信を担っていた制限を解き払い、市民が参加する可能性を大きく広げてくれたと言えます。

市民運動としてはこの地殻変動は大いに活用していくべきでしょう。次はどのように活用していくかを考えます。

(続く)

Galaxy S

Galaxy Sを購入した。なんか買い物が続くが、ここ5年間ほとんど何も買わずにいて、たぶん、これでしばらく数年何も買わない生活に戻るのだろう。

携帯電話についてはあれこれ迷った。

1. ケータイなしで過ごす
2. ガラパゴスケータイにする
3. スマートフォンを買う

子どものペースメーカーへの影響の問題もあり、電磁波が気になるので、なしで過ごせたらそれはそれでいいのだが、しばらくケータイなしで過ごし、結局、周囲の人に迷惑をかけるは、街には公衆電話はないはで、やはり1は継続不能と判断。

一方、スマートフォンを買うにもDoCoMoなどでの料金を考えると、高すぎる。また、スマートフォンが増えているとはいえ、まだ大多数はガラケー(従来の日本のケータイ)であり、所得の低い人の場合はスマートフォンは厳しい。そうした人たちに使えるサービスを開発することを考えればガラケー向けが欠かせないだろう。となれば、2がいいのではと考えた。

その一方で、今使っているiPod Touch(第2世代)だけでは無線LAN環境のない状態でお手上げ状態になることも。となるとガラケー+日本通信b-mobileSIM+ポータブルWiFiルーター+スマートフォン(実質的に無線LAN端末)という手もある。これなら月額費用的にも押さえられる。

しかし、いくら個々の機器が小さいといっても、3つの機器を持ち歩くのはあまりに厳しいし、資源の無駄に思える。こうした機器は現状では希少資源も使うだけに購入は最小限に、買ったら壊れるまで使いたい。さらにガラケーの機種は多すぎて、しかもその多様さに意味ある相違を見いだせず、機種選択する気がそがれてしまった。

ということで結局、b-mobileのtalkingSIMにSIMフリーのGalaxy Sにした。ガラパゴスケータイを切ってしまったのは正直、後悔するところがなくもなかったけれども、ガラケー対策はシミュレーターで対応するしかない。

スマートフォンの候補としてはiPhone、Android(Windows Phoneは検討外)、でも、古いとはいえiPod touchを持っている上にiPhoneではApple寄りすぎでここは没。それではAndroidということでGalaxy Sをオンラインショップで購入した。世界を圧倒している韓国Sumsungや台湾HTCのすごさを感じるとともに、日本企業の出遅れには驚くばかり。

触ってみた最初の感覚としては、相当手応えのある端末だ、ということ。SSHのアプリケーションを入れればすぐにサーバーにアクセスできてしまう。外付けキーボードが付けば、これだけでかなり作業ができる。ちょっとした旅行であればPCは持たずに十分だろう。しかも軽い。

しかし、小さなPCという以上にPCを超えたところがあるのに驚いた。

まず、ディスプレーがすばらしい。PCのモニターが古色蒼然としてくる。あまりに鮮やかでPCではそんなに見栄えのしないYouTubeビデオも見違えてしまう。

WebもPC版と異なって、HTML5がばりばり使えるし、PC版よりもむしろ手のこんだものが作れるだろう。しかも、モバイルな環境で使えるので、PCのサブセット版ではなく、PCでは不可能な、ケータイならではのメディアとして構築することが考えていけるだろう。

そんな可能性を感じさせてくれるケータイだと思う。

さらに簡単にテザリングが可能(ただし暗号方式は簡易なWPA)なので、KindleやiPod touchなどの無線LAN環境をどこでも作ることができる(であればKindleを3G付きで買う必要はなかったことになる)。

いくつか個別のアプリケーションの評価。

Google Voiceサーチ…日本語のロケールを選択すると、日本語を対象としたVoiceサーチが可能になる。試してみたが、かなり正確に拾うので驚いてしまう。ケータイの場合は入力がきついと思っていたが、今後、さまざまな入力でこの仕組みが使えれば入力の困難さはなくなる。

ただし、Galaxy Sのロケール(言語)設定を日本語のままでは外国語を吹き込んでも日本語としてしか判断してくれないようだ。Merdaと入れたら値札と言われた。確かに音は近いけれども…。ロケールを変えれば対応してくれる可能性高いが、いちいち変えないとサーチできないというのでは使いにくい。

Googleマップ…精度は10メートル以上ずれる時があるが、ケータイの向きはしっかりと把握している。常時GPSをオンにしていればプライバシー問題は出てくるが迷子になった時は便利だろう。

Googleナビ…これは自転車のナビゲーションに使えるかな、と一瞬思ったが、ちょっと難しい。まず動きにうまく追随してこない(これは改良が期待できるだろうが)。また、自動車前提のナビゲーションなので、自動車の一方通行の多くから自転車は除外されているのにそれが使えず遠回りになるし、自動車の少ない安全な道は選択されないことが多くなるだろう。歩行者のナビにも当然適さない。今時の車でカーナビのない車も少ないので、車専用のナビがどれだけ意味あるか、このへんはGoogle側に工夫が必要だと思う。というかGoogleマップに歩行者を指定した経路検索ができるので、それをナビにするのはそう難しいことではないようにも思える。

プッシュメール…iモードのような配信されるとすぐに通知がくるプッシュメール、K-9 Mail+GMailで実現できそうだけど、K-9 Mailが起動されていなければプッシュされないのが難か?

ブラウザー…プリインストールされたブラウザーは評判がよくないようで、定番そうなDolphin Browserという無料のアプリケーションを入れてみたが、Mobile Safariに比べ、基本的な動作でかなり劣る感じは否めない。Android向け最適化をめぐってviewportが効かない、という苦情を聞いていたけど、部分的に拡大したい時も、Mobile Safariはほぼ的確な大きさに拡大、縮小してくれるのに、それができないために通常のPC向けサイトをスムーズに読むことにはやや難がある。Mobile Safariよりも多機能ではあるようだが。
WordPress用のプラグイン WPtouch はAndroidにもほぼMobile Safariと同等の見栄えを提供してくれるが、最適化されていないPCサイトは読むのに骨が折れる。今後に期待したいが、かなり差があると感じた。逆にいえば、Android用にWebサイトを最適化することにはそれだけメリットがあるということが言えるかもしれない。

Skype…通話ができるまともなアプリケーションがない? Nimbuzzというアプリケーションを試したが、音は聞こえるものの、こちらの声がまともな音質にならない。せっかくのマルチタスクが…。

Twitterアプリケーション…どのようなアプリケーションがあるのか、まだまだ不案内だが、使えこめそうなTwitterアプリケーションは残念ながら見つかっていない。その点でもiPhone/iPod touchはまだまだAndroidに対してアドバンテージがあると言えるだろう。でも、今後どうなっていくか。

テザリングの速度…そもそも自分の生活空間で3Gになるところがほとんどない。またb-mobileはパケット定額はありがたいがそもそも速度は期待できない。SoftBankではつながりにくい地域に住んでいるのだけど、それでもつながるだけありがたい。連れ合いの実家で過ごす時もこれでインターネットにつながるということでかなり助かる。

電源はやはり1日に一度は充電が必要となるレベルだろう。となると外でハードに使う場合、AC電源やUSBから充電できるが、補助バッテリーや補助電源が必要になってしまうだろう。

通話…本来電話ならば一番重要なのだろうが、電話は大嫌いなので、最小限しか使いたくない(電話をするのもされるのも好きではない)。特にクリアであるとは思えなかったが、特に大きな支障はなさそう。

ということで、これでなんとか新しい生活がスタートできそうだ。

Kindle 2

PDFリーダーとして読もうとした時に現状のKindleは以下の欠点を持つと思う。

1. フォント組み込んだPDF以外の日本語のPDFは文字が何も表示されない。
2. 表示サイズが新書本サイズなので、大きな版のPDFを表示するには小さすぎる。

1の点はそのPDFが改変可能になっていれば、フォント組み込みに書き換えてやればいい。でもそれが禁止されたPDFファイルであれば、現状ではまったく読めないだろう。これは今後のファームウェアのアップデートで解決することを期待できるかどうか?

2の点はたとえばKindleを横位置にしてやることで多少大きな版のPDFファイルもそこそこ読める字の大きさにできなくはないが、その場合、1ページを3スクロールすることになるなど、なにせ表示される部分が小さいため、見通しが悪くなる。

これはものによってはひじょうにやりにくくなる。余白の大きなレイアウトなどされていると、120%くらいフォントを拡大したいところだけれども、現状のKindleには150%からとなっており、そうした微調整ができない。これは将来的には解決が期待できなくはないが。

やはり、よくあるA4版のPDFファイルを読むことを考えるとKindleサイズよりも、iPadサイズの方が適している。ただし、バックライトのあるiPadで長文のPDFを読むのはかなり目には負担になるとは思うが、机に向かって読まなくていい点はプラスではあるだろう。あるいはKindle Deluxeか。

かといって、そういくつも同じような端末持つわけにはいかないだろうが。

日本語処理の件などもあり、Kindleは即買いではなく、ちょっと待った方が賢いかもしれない。

こちらとしてはPDFファイルはどんなことをしても読むし、電子書籍の可能性を考えたいので、早めに買ったことは後悔はしていないが、展望としては結構大変だと思い始めている。